コラム

2つの名門ワイナリーがタッグを組んだ、ボデガス・ベンジャミン・ド・ロスチャイルド&ベガ・シシリア ~解説:スペインのワイナリー

フランスやイタリアと並び、世界的なワイン産地として知られるスペイン。良質なワインが数多く生み出されるスペインで、さらなる高みを目指して誕生したのが、ボデガス・ベンジャミン・ド・ロスチャイルド&ベガ・シシリア(Bodegas Benjamin de Rothschild & Vega Sicilia)だ。世界的に名高い「ウニコ」を手掛けるベガ・シシリアが、ロスチャイルド家とともに設立したジョイントベンチャーとなる。

今回は、生産地の特徴を生かした独自の製法により、唯一無二の味わいを表現する赤ワイン「マカン」を生み出す、ボデガス・ベンジャミン・ド・ロスチャイルド&ベガ・シシリアの特色や魅力などについて紹介する。

ボデガス・ベンジャミン・ド・ロスチャイルド&ベガ・シシリアとは?

スペインのカスティーリャ・イ・レオン州リベラ・デル・ドゥエロに位置するベガ・シシリアは、「ウニコ」の生産によりその名を世界に知られるワイナリーだ。

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そんなベガ・シシリアが、フランスのメドック格付け第1級のシャトー・ラフィット・ロスチャイルドのオーナーであるベンジャミン・ド・ロスチャイルド氏と共同で設立したのが、ボデガス・ベンジャミン・ド・ロスチャイルド&ベガ・シシリアである。

同ワイナリーは、“1950~60年代のクラシックなリオハワイン”づくりを目指し、2006年から試験を開始。2009年にはファーストヴィンテージを醸造し、そのワインが『ワイン・アドヴォケイト(Wine Advocate)』で93点という高評価を受けたことで一躍注目を浴びた。以後、毎回リリースのたびに高評価を得ている名門だ。

「マカン」の生産地、リオハの概要

リオハは、ラ・リオハ州を中心としてバスク州アラバ県とナバーラ州にまたがるワイン産地だ。スペイン最高峰のワイン産地の1つで、高品質なワインを生み出すことで知られる。

リオハとワインの歴史

リオハのワイン生産における歴史は非常に古く、古代よりぶどうの栽培が行われており、古代ローマ時代に使用された ワインの発酵に用いる容器なども出土している。

19世紀後半にフランスでフィロキセラやうどんこ病などの病害が流行った際、当時のボルドー地方の生産者やワイン商がリオハに移り住んだことにより、リオハのワインの質が向上。つくり手や貴族の尽力もあり、高級ワインの生産地として名を馳せるまでに成長した。この頃に設立したワイナリーで、現在に至るまで活動しているものも多数ある。1991年にはそうした実績が認められ、スペインのワイン法改正により誕生した「原産地呼称(DO)」よりも上位の認定となる「特選原産地呼称(DOCa)」第1号に認定された。

地域の特色

リオハはカンタブリア山脈の南側にあるエブロ川沿岸の盆地にあり、主にエブロ川沿岸、丘陵、山の斜面などにぶどう畑が点在している。地域の大半が高地にあるが、山脈が強風を防いでくれるため、全体的に穏やかな気候が続く。

リオハは気候、土壌などの観点や行政区分から3つの地域に分かれており、それぞれリオハ・アルタ、リオハ・アラベサ、リオハ・バハと呼称される。気候と土壌の違いから、採れるぶどうの品質、味わい、収穫量も異なり、それが各ワイナリーの生産するワインの個性に生きているのだ。

ボデガス・ベンジャミン・ド・ロスチャイルド&ベガ・シシリアのぶどう畑は、エブロ川北部のカンタブリア山脈の山麓、大西洋気候と地中海性気候の影響を受ける穏やかな地域にある。土壌は粘土石灰質の痩せた土壌だ。2017年には、そのすぐ近くに1万Lのステンレスタンクと木桶を45基備え、ソーラーパネルによる太陽光発電も可能なワイナリーが設立された。

生産されるぶどう品種

リオハでは、地域ごとに多種多様なぶどうが栽培されている。伝統的に赤ワインの生産が盛んなため、ぶどうも栽培面積のうち約9割が赤ワインに用いる黒ぶどうだ。主な品種は以下の通り。

■黒ぶどう
テンプラニーリョ、ガルナッチャ、マスエロ、グラシアーノ、マトゥラナ・ティンタ、モナストレル
■白ぶどう
ビウラ、マルバシア・リオハナ、ガルナッチャ・ブランカ、シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブラン、ベルデホ、マトゥラナ・ブランカ、テンプラニーリョ・ブランコ、トゥルンテス

ボデガス・ベンジャミン・ド・ロスチャイルド&ベガ・シシリアの「マカン」は、ワイナリー所有のぶどう畑で生産されたテンプラニーリョ種のみを使用してつくられている。

「マカン」の製法

2022年現在、ボデガス・ベンジャミン・ド・ロスチャイルド&ベガ・シシリアが生産するワインは、「マカン クラシコ」「マカン」の2種類のみだ。これらの製法は途中までは同じで、違いは熟成の期間にある。

まず、ぶどうをアルコール発酵させ、オーク樽30%、ステンレスタンク70%の配分でマロラクティック発酵を行う。この時点で選別を行い、フレンチオークの新樽と1年使用樽で、「マカン クラシコ」なら12~14カ月、「マカン」なら16~18カ月熟成させる。

樽での熟成後は瓶詰めを行い、「マカン クラシコ」は最低18カ月、「マカン」は36カ月熟成させてリリースとなる。この熟成期間の違いにより、それぞれのワインが異なる魅力を持つようになるのだ。

ボデガス・ベンジャミン・ド・ロスチャイルド&ベガ・シシリアのワイン

ボデガス・ベンジャミン・ド・ロスチャイルド&ベガ・シシリアの技術、本懐、モットーなどが存分に凝縮された「マカン クラシコ」と「マカン」。ここでは、この2本の味わいについても紹介したい。

マカン クラシコ

「マカン」のセカンドラベルとして生産されているのが、「マカン クラシコ」だ。「マカン」よりも熟成期間が短いため、香りや味わいにフレッシュさと親しみやすさがある。

香りは、プラムやダークチェリーなどの果実を基調にしつつ、ダークチョコレートやタバコ、スミレなども感じられる。味わいは、果実系のフレッシュさとフルボディならではの濃厚さが絶妙なバランスで内在し、その優しさと滑らかさは感動すら覚えるほどだ。そして余韻には、オーク樽のほのかに甘い香りが残る。

品種:テンプラニーリョ 100%
アルコール度数:14.5%
味わい:赤・フルボディ
参考小売価格:8800円(税込)
おすすめのペアリング:ビーフシチュー、ヒレステーキなどの肉料理、食後の熟成チーズやドライフルーツ

マカン

ボデガス・ベンジャミン・ド・ロスチャイルド&ベガ・シシリアのトップキュヴェである「マカン」は、まさしく双方の理念と矜持が詰まった最上級の1本だ。

カシス、ブラックベリーなどの黒果実系をメインに、シナモンやナツメグなどのスパイス系が芳醇に香り、後からバルサムやエスプレッソなどのアロマが漂う。口に含むと、ベルベットのようにしなやかなタンニンと、凝縮された濃密な黒果実系の味わい、確かな酸味とスパイシーな後味が長くしっかりと続く。

「マカン クラシコ」と比べて渋みと飲み応えがあり、購入後の長期熟成にも適している。第1級シャトーの威厳と権威を感じられるワインと言えるだろう。

品種:テンプラニーリョ 100%
アルコール度数:14.5%
味わい:赤・フルボディ
参考小売価格:1万2980円(税込)
おすすめのペアリン:タンシチュー、サーロインステーキなどの肉料理、食後の熟成チーズやナッツにもおすすめ

【解説:スペインのワイナリー】
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世界一の熟成を誇るスペイン産ワイン「ウニコ」のつくり手、ベガ・シシリア

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関西大学卒 専業ライターを夢見て日々執筆する複業ライター。酒と肉と旅行と昼寝が好き。