コラム

メドックワイン マスタークラス2022:⑤メドックワインのテイスティング(前編)

メドックワイン委員会は2022年11月2日、八芳園(東京都港区)にて、「メドックワイン マスタークラス2022」を開催した。

講師を務めたのは、日本ソムリエ協会理事で、同協会認定ソムリエ・エクセレンスの米野真理子氏。米野氏から、メドックの歴史やテロワール、格付け、環境保護への取り組みなどについて解説があった。

5回目となる今回の記事では、メドック地区の8アペラシオンの中から、地域名AOC(Appellation d’Origine Controlee、原産地呼称)のオー・メドック、メドックと、村名AOCのムーリス、リストラックのワインについて、米野氏のテイスティングコメントと併せて紹介する。

メドックワイン16本をテイスティング

テイスティングには、8つのアペラシオンごとに、同じ銘柄の2019年、2010年代のワインが1本ずつ選ばれた。

オー・メドック

オー・メドックのワインは、クリュ・ブルジョワ・シュペリウールに属する「Château DU MOULIN ROUGE(シャトー・デュ・ムーラン・ルージュ)」。ヴィンテージは2019年と2012年だ。

メルローを50%、カベルネ・ソーヴィニヨンを40%、カベルネ・フランとプティ・ヴェルドを5%ずつ使用している。

<テイスティングコメント>
●2019
深く濃く、香りが開いている。若干もやがかかった感じ。
赤い果実や甘草(カンゾウ)、カカオが感じられる。
軽やかで繊細な印象があり、タンニンは優しくしなやか。
爽やかで、きれいな酸が特徴。飲みやすいワイン。

パテやカモのハムのサラダ、レンズマメなどと共に食事の前半に。

●2012
タバコ、紅茶のニュアンスがある。
中心部にきれいな酸が残っている。タンニンは優しく緻密。
わずかに樽香が感じられる。

赤身の魚、カツオのたたきなどを大葉や香味野菜でサラダ仕立てにしたものが合いそう。

メドック

メドックからは、「Château TOUR HAUT-CAUSSAN(シャトー・トゥール・オー・コサン)」が提供された。2019年、2015年ヴィンテージとも、メルローとカベルネ・ソーヴィニヨンを50%ずつ使用している。

<テイスティングコメント>
●2019
ワインのふちに透明感があり、グラデーションが見られる。
ダークチェリーなど黒系果実やローズマリーの雰囲気がある。
ソフトなアタックで酸は柔らか。歯の裏にくるしっかりしたタンニン。
アーシーで素朴さがある。

カジュアルなトマト系のパスタや塩レモンで食べる焼き鳥などが好相性。

●2015
ぶどう使用比率は2019年と同じだが、こちらは色が濃い。
ブラックベリーやダークチェリー、木樽のロースト香。
また、若さと共になめし皮のような複雑な香りもある。
アタックは2019年より果物の濃さが感じられる。
酸はスムースで、アフターに細くきれいなタンニンが続く。

2015年は、しっかりと肉感のあるボロネーゼなどのパスタと合わせたい。

ムーリス

ムーリスのワインは、2019年、2016年の「Château LALAUDEY(シャトー・ラロデイ)」。シャトー・ラロデイは、クリュ・ブルジョワ・シュペリウールに属する。

どちらのヴィンテージも、カベルネ・ソーヴィニヨンを50%、メルローを45%、プティ・ヴェルドを5%使用している。

<テイスティングコメント>
●2019
紫色の中心部が黒みを帯びている。
黒豆やスミレ、ゴボウなど、土っぽさを感じる。
アタックはふくらみがあり、豊かな果実味。タンニンは緻密。
もう少し先に取っておきたい感じもある。

笹で巻いた豚肉や青いスパイスを使った料理に合いそう。

●2016
2016年は豊作だったが、ベト病が発生した年だった。
硬めのブラックチェリーやアニスシード、甘苦系、枯葉のような香りも。
2019年よりもアタックはソフトで、酸も溶けている。

バラ肉のポトフなどと合わせたい。
グラスによっては土っぽさを感じたり、ブレッドを感じたりするかもしれない。

リストラック

リストラックのワインは、「Château DACHER DE DELMONTE(シャトー・ダシェ・ドゥ・デルモント)」の2019年、2015年ヴィンテージ。生産者のシャトー・ダシェ・ドゥ・デルモントは、クリュ・アルティザンに属する。

どちらのヴィンテージも、メルロー60%、カベルネ・ソーヴィニヨンを40%使用している。

●2019
青みが残っているダークチェリーレッドで輝きがある。
花の香り。スワリングするとカシスの香りが立ってくる。
華やかではないが、軽くてエレガント。
黒豆や熟した果実の印象。
甘苦系と酸、タンニンが合わさっている。

赤身の肉をシンプルに食べるときや、しょうゆ、みりんを使って濃いめに味付けをした煮物などと合いそう。

●2015
色調は濃く、ふちが溶けて、かすみがかっている。
ほどけてくるのに時間がかかりそう。フィルターをあまりかけていない印象。
熟成の可能性が感じられる。
カシスやオレンジピール、枯葉、薫製、しょうゆの感じがある。
濃厚な果実味としっかりしたタンニン。

赤身肉やクセのあるウォッシュチーズがおすすめ。

次回の記事では、“4つの偉大な村”とされるマルゴー、サン・テステフ、ポイヤック、サン・ジュリアンのワインを、米野氏のテイスティングコメントと共に紹介する。

【メドックワイン マスタークラス2022】
①主要ワイン産地メドックの歴史と多様なテロワール
②主要ワイン産地メドック3つの公式格付け
③メドック8つのアペラシオンから地域名AOCと西側の村名AOCを紹介
④メドック8つのアペラシオンから“4つの偉大な村”を紹介

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