メドックワイン委員会は2023年9月26日、ホテル日航大阪(大阪市中央区)で、メドックの比類なきテロワールと多様性を改めて発見するマスタークラスを開催した。
今回は、AOCマルゴーの解説とシャトー・プジェ(Château Pouget)の2020・2003ヴィンテージをテイスティングしたパートを紹介する。
講師を務めたのは、ホテルニューオータニ大阪のフランス料理店「SAKURA」でソムリエとして活躍する田中叡歩(あきほ)氏だ。
AOCマルゴーとは
AOCマルゴーとは、メドックの東側、ジロンド川につながるガロンヌ川の川沿いに広がる4つのAOCのうち、最も上流(南)にある村名AOC(Appellation d’Origine Controlee、原産地管理呼称)だ。5つのコミューンから成り、それぞれ異なるテロワールがある。
ボルドーで最も多い、21のグラン・クリュ・クラッセ(1855年の格付け)シャトーがある。フルボディで、豊かなアロマと素晴らしいフィネスを備えたワインが特徴だ。
シャトー・プジェのワイン
今回のマスタークラスでは、シャトー・プジェの2020年と2003年の2つのヴィンテージをテイスティングした。
シャトー・プジェとは
シャトー・プジェは、格付けシャトーの中で最も規模が小さいシャトーだ。所有する畑は約10haで、ぶどうの樹の平均樹齢は45年。化学肥料は一切使用していない。
マルゴーの土壌は、痩せた砂利質で水はけが良いため、ぶどうの樹は根を地中深くまで伸ばすことができる。この地中深くに伸びた根が、ワインの品質の要となっている。
ヴィンテージ解説
オーナーのリュシアン・ギルメ氏は、各ヴィンテージを次のように解説している。
2020年は、ボルドーの良いヴィンテージの1つ。ぶどうの樹の生育サイクルを通して、気候条件に恵まれていた。暑い夏には、土壌が徐々に乾燥し、長い期間をかけて熟成したことで、ぶどうの実の構成(酸や糖など)もよくなった。
2003年は、異例の天候条件だった。夏はとても暑く、8月の気温が40℃を超えることもあり、乾燥していた。2022年は比較される年となったが、大きな違いは、2003年は夜も気温が下がらなかったことだ。若いワインではないが、爽やかさがあり、はるか先まで楽しめるとなっている。
また、田中氏によると、2003年は1月と2月は寒くて乾燥していたが、3月と4月は暑くて乾燥し、降雨量が70%減少。8月前半は40℃を超える酷暑に見舞われたという。「個性のあるヴィンテージで、暑さを表現するシャトーもあれば、早摘みや熟成期間の調整で暑さが出ないようにするシャトーもあった」と解説している。
シャトー・プジェ2020/2016
品種構成は、2020年がカベルネ・ソーヴィニヨン51%、メルロー41%、カベルネ・フラン4%、プティ・ヴェルド4%。2003年がカベルネ・ソーヴィニヨン68%、メルロー31%、カベルネ・フラン11%。
フレンチオーク樽で17カ月間(新樽率:2020年は70%、2003年は60%)熟成させている。
テイスティングコメントは、田中氏によるもの。
●2020ヴィンテージのテイスティングコメント
色が濃くて若々しさがある。フレッシュさがあり、緻密さのある複雑さが香りに出ている。フルーツの香りが主体だが、スパイスと若干の熟成香があり、複雑で上品、繊細な印象。タンニンは荒々しさもありつつ、密度の高い絹のようなタッチが出てきている。質が良くて量の多いタンニンがあり、収れん性を感じる。AOCマルゴーのスタイルが感じられるワインだ。
●2003ヴィンテージのテイスティングコメント
深紅の見た目は、まだ活気があって若々しい。ダーク系の香りが中心核にあるが、周りにドライフラワーやしおれたバラ、しっとりとした紅茶葉、シナモン、リコリスなどの第3アロマ(熟成によって現れる香り)が出ている。タンニンはまだまだ緻密で、今後も熟成の可能性が感じられる。香りは発展しているが、味わいは元気なワイン。
今回は、ガロンヌ川の川沿いに広がる4つの村名AOCの中で、最も上流にあるAOCマルゴーを紹介した。次回は、マルゴーの下流にあるAOCサン・ジュリアンのパートをご紹介する。
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