コラム

シャトー・ラトゥールの特徴は? 50年も熟成可能でバツグンの安定感 ~ 解説:ボルドー5大シャトー

ワイン好きなら、ボルドーの「5大シャトー」の名前を聞いたことがあるはずだ。ラトゥール、マルゴー、オー・ブリオン、ラフィット・ロートシルト、ムートン・ロートシルト。これら5大シャトーについて詳しく語れるようになるため、ワインバザールではこれから連載形式で各シャトーのことを取り上げていく。

本コラムではまず「シャトー・ラトゥール」のことを紹介していこう。

ラベルに描かれた「塔」=ラトゥール

メドック地区の第一級に格付けされた5大シャトーの中でも、名門中の名門がシャトー・ラトゥールだ。「ラトゥール」にはフランス語で「塔」という意味があり、ラベルにも塔が描かれている。

ラトゥールの名前は1331年の文書には登場したが、17世紀までは畑の一部でぶどうを栽培する程度だった。18世紀に入りワインづくりに本格的に取り組むことになり、1714年にはボルドーの一般的なワインの4~5倍、1767年には20倍の価格で取引されるようになった。

このシャトー・ラトゥールの特徴として、次のような点が挙げられる。

Château Latour

50年もの長期熟成が可能

黒い外観、豊富なタンニン、濃厚な凝縮感から「男性的」「力強い」「晩熟」と評されることが多く、リリースから20~30年経たないとその真価は味わえないと言われている。秀逸なヴィンテージのものは50年もの長期熟成が可能ともいう。

バツグンに安定したクオリティ

シャトー・ラトゥールの特徴として、クオリティが抜群に安定している点が挙げられる。ラトゥールに安定感をもたらしている要因として、後述するぶどう畑「ランクロ」の恵まれた環境に加えて、最新の醸造設備と細心の温度管理も挙げられる。

ラトゥールは醸造においては、あくまでも自然の重みでの圧搾を重視。フリーランジュース(圧搾されていないもの)とプレスジュース(圧搾されたもの)は別々の発酵工程をたどり、その後に慎重にブレンドされる。ステンレスタンクの温度変化への弱さを解決するため、コンピューターによって室温管理を徹底している。

Chateau Latour Fermentation Vats

シャトー・ラトゥールを支えるぶどう畑「ランクロ」

シャトー・ラトゥールの屋台骨となっているのは、「ランクロ」と呼ばれる特別なぶどう畑の区画だ。

この区画はポイヤック地区の最も南からサン・ジュリアンへ向かう斜面に広がる。ジロンド川に近いことから、川の影響を強く受けている。他の畑が強烈な霜害を受けるような気候でも、ジロンド川周辺の湿った温暖な空気が畑を守ってくれて被害を軽減してくれるのだ。

この「ランクロ」ではカベルネ・ソーヴィニヨンが多く植えられている。植え替えの行われた若樹には青いテープが巻かれ、収穫時に間違ってしまわないよう徹底した管理がされている。

Grand Vin de Chateau Latour, Premier Grand Cru Classé, Pauillac, 1995

リュット・リゾネや有機栽培を導入

シャトー・ラトゥールの畑では、リュット・リゾネ(減農薬農法)と有機栽培の導入が進められ、肥料もオーガニック肥料が使用されている。加えて「ランクロ」の一部ではビオディナミ農法が試験的に導入され、今後、ビオディナミ農法を拡大していく予定だ。

エコに対する考え方は耕作作業にも影響しており、CO2の排出を削減し、土壌のコンディションを整えるため、2008年より馬を使った耕作を復活させた。

惜しみない技術への投資と、土壌への徹底したこだわりは、今後数十年のラトゥールの出来をより楽しみに感じさせてくれる。

Chateau Latour I

ラトゥールのおすすめワイン銘柄

シャトー・ラトゥールがつくり出す主なワインは次のとおりだ。

シャトー・ラトゥール

シャトー・ラトゥールのファーストラベル。ワイン評論家のロバート・パーカー氏は「年月が経つにつれて良くなっていく」と評価。凝縮感やタンニンをこれ以上ないほどに感じられるフルボディの赤ワイン。

レ・フォール・ド・ラトゥール

ランクロの周辺で栽培されたぶどうを使ったセカンドワイン。「もう1つのラトゥール」とも呼ばれている。

Les Forts de Latour 1983

ポイヤック・ド・ラトゥール

ラトゥールのサードワイン。樹齢の若いぶどう樹から採れたぶどうを主に使用するが、生産量はファーストラベルの10分の1程度と非常に入手しづらいワインだ。

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About the author /  鵜沢 シズカ
鵜沢 シズカ

J.S.A.ワインエキスパート。米フロリダ州で日本酒の販売に携わっている間に、浮気心で手を出したワインに魅了される。英語や販売・営業経験を活かしながら、ワインの魅力を伝えられたら幸せ