コラム

キャンティ・ワインをつくりあげたバローネ・リカーゾリ~ 解説:イタリア・キャンティ名門ワイナリー

   

イタリア、キャンティの名門ワイナリーを紹介するシリーズ。

キャンティ・ワインの産みの親、ベッティーノ・リカーゾリ男爵の一族であるリカーゾリ家。今回は、長い歴史を誇りながら新しいワインづくりにも情熱を燃やすワイナリー「バローネ・リカーゾリ」について、ご紹介していこう。

バローネ・リカーゾリのエピソード

Barone Ricasoli wines

長い歴史を誇るイタリアのワイナリー「バローネ・リカーゾリ」。家族経営企業の専門誌「ファミリー・ビジネス」によると、バローネ・リカーゾリは、世界で4番目に古い家族経営企業だという。ワイン醸造に限ると世界で2番目に古いとされている。

トスカーナ州のキャンティ地方で生産される赤ワイン「キャンティ」は、イタリアワインの代表格と言っても過言ではない。そして、イタリアワインの顔とも称され、世界中で人気を博しているキャンティを誕生させたのがバローネ・リカーゾリなのだ。

長い歴史の中で低迷期もあったが、現在では、キャンティだけでなく、モダンな味わいのワイン「スーパー・トスカン」の生産者としても名をはせている。

バローネ・リカーゾリの歴史

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バローネ・リカーゾリを設立したリカーゾリ家は、キャンティ・クラシコの伝統地区にあるブローリオ城を拠点とし1000年もの歴史を持つ家系。同家がワイン醸造業に関わるようになったのは1141年頃と言われている。

19世紀には「鉄の男爵」の異名を持ち、イタリア共和国の首相も務めたベッティーノ・リカーゾリ男爵によって、バローネ・リカーゾリの名は世界に知れわたるようになった。男爵は、1830年頃から、フランスワインに対抗できる国際競争力を持ったイタリアワインをつくろうと研究を始めた。そしておよそ30年にわたる研究の結果、「キャンティ」を誕生させた。

サンジョヴェーゼ種の特徴を最大限に引き出すために男爵が考案した、サンジョヴェーゼ種70%、カナイオーロ種20%、マルヴァジア種10%というブレンド比率は、「リカーゾリ男爵の公式」と言われている。

さらに男爵は、ヨーロッパに普及し始めた鉄道や道路網を使って、「キャンティ」をヨーロッパに積極的に輸出した。その結果、キャンティ誕生から数年後の1867年に開催されたパリ万博で、キャンティは金賞を受賞した。男爵の情熱と努力により、キャンティは国際的に広まり人気を得た。しかし、キャンティという名がつけば売れるという状況の中、安くて質の低いキャンティが多く出回るようにもなってしまう。そして、バローネ・リカーゾリも大手資本の傘下となり、低価格低品質のキャンティをつくるワイナリーとなってしまった。

1990年代になるとこうした状況に危機感を抱いた一部の生産者がキャンティ・クラシコの組合を結成し、品質の高いキャンティ・クラシコを生産するようになる。そして1996年にキャンティD.O.C.Gから独立してキャンティ・クラシコD.O.C.Gとして認められるようになった。

そうした流れの中、バローネ・リカーゾリでも、大きな動きがあった。1993年、現当主のフランチェスコ・リカーゾリ男爵が、ワイナリーを買い戻したのだ。男爵は「ぶどう本来の特徴とテロワールを大事にする」というコンセプトを掲げ、品質の向上に努めた。そして、テロワールに適したサンジョヴェーゼを使用した「キャンティ・クラシコ・カステッロ・ディ・ブローリオ」をリリース。これが世界中で高く評価され、バローネ・リカーゾリは復活を遂げた。

バローネ・リカーゾリのワインづくり

Castello di Brolio - Barone Ricasoli Vinery

ぶどう本来の特徴とテロワールを大事に

「ぶどう本来の特徴とテロワールを大事にする」というコンセプトを掲げて品質を向上してきたバローネ・リカーゾリ。そのために、ワイナリー単独ではなく、外部の専門機関からの協力を得ている。

バローネ・リカーゾリは、イタリアで権威のある地質学研究所と協力し、ぶどう畑の土壌や高度、気候、温度などテロワールの詳細なデータを収集。そのデータをもとに、科学的分野から、ぶどう畑の土壌と気候条件に最適なぶどう品種を選び、農業的に最良の措置が行えるようにしている。

また、現在だけでなく未来でも優れたぶどうを使用できるようにするため、フィレンツェ大学、アレッツォ醸造研究所の協力のもと、リカーゾリ家が所有するぶどう畑のサンジョヴェーゼ種は12種類に選別され、最良種を残す研究が続けられている。

スーパー・トスカンとしてのワインづくり

キャンティの産みの親を一族に持ち、キャンティをつくり続けてきたバローネ・リカーゾリだが、現当主のフランチェスコ・リカーゾリ男爵が推し進めてきた改革の中で、新しいワインづくりにも挑戦してきた。キャンティ・クラシコ地区ではなく、ボルゲリ地区でつくった「ボルゲリ・ロッソ」、キャンティ・クラシコ地区の畑を土壌の特性ごとに分類し、その土地に最適な品種を栽培してつくった「カステッロ・ディ・ブローリオ」、「カザルフェッロ」、「コッレディラ」などがその新しいワインだ。

今やバローネ・リカーゾリは、伝統あるキャンティの生産者としてだけでなく、スーパー・トスカンと呼ばれるモダンな味わいのワイン生産者としても名を広めつつある。

バローネ・リカーゾリのおすすめワイン

キャンティ・クラシコ・カステッロ・ディ・ブローリオ

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バローネ・リカーゾリのフラッグシップワイン。ガイオーレ・イン・キャンティ地区にある最適な畑で栽培されたサンジョヴェーゼを主体に、メルロー、カベルネソーヴィニョンをブレンドしてつくられる。ステンレスタンクで発酵後、大樽と小樽で9カ月間熟成させる。瓶詰め後は、さらに6カ月間の瓶内熟成をしてからリリースされる。しっかりとした骨格と複雑味を兼ね備えていて、キャンティ・クラシコのお手本とも評される味わいを持つ。

キャンティ



「ワインは芸術品ではなく、飲むもの」というポリシーの下、リカーゾリのワインをもっと楽しんでもらいたいと、画期的とも評されるほどコストパフォーマンスに優れたキャンティをつくり上げた。

ボルゲリ・ロッソ

バローネ・リカーゾリがキャンティ・クラシコ地区以外でつくった初めてのワイン。カベルネソーヴィニョン、メルロー、プティヴェルド、カベルネフランの4品種をブレンドしてつくられている。小樽で12~14カ月熟成した後、瓶詰めされる。さらに6カ月間の瓶内熟成をした後、リリースされる。

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