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オーガニックやビオディナミなど、ナチュラルなワインづくりが広がるフランス。その中でも、厳しい検査項目で知られる「エコセール(ECOCERT)」の認定を、3年という短期間で取得したのが、ブルゴーニュのオリヴィエ・ジュアン(Olivier Jouan)だ。
モレ・サン・ドニの地で真摯にビオロジック栽培に取り組むドメーヌで、エコセールの認証を取得した優良な畑が生み出す至高のビオワインは、ピュアで個性的な味わいも含めて高い評価を得ている。
オリヴィエ・ジュアンとは
オリヴィエ・ジュアンは、モレ・サン・ドニで長くぶどう栽培を続けてきたジュアン家をルーツとする。ジュアン家の4代目にあたるオリヴィエ・ジュアン氏が、ドメーヌを継承後に自社での瓶詰めを本格的に開始した。
最短3年でエコセール認証を取得
オーナーのオリヴィエ氏は、1999年にドメーヌを継承してすぐに、独学でビオロジック栽培を開始。最短の3年で、世界最大クラスの国際有機認定機関エコセールの認証を取得した。
農学者の団体によって1991年にフランスで設立されたエコセールは、オーガニック認証団体の世界基準ともいわれるほどの認知度がある。農薬や肥料、土壌検査、保管場所、遺伝子組み換え原料の不使用など、かなり厳しい検査を実施していることで知られる。
そんな厳しい認証を、最短期間で勝ち取ったオリヴィエ氏は、ドメーヌを引き継いだ当初から、“新世代のつくり手”として注目されている。
オリヴィエ・ジュアンの畑があるモレ・サン・ドニ
オリヴィエ・ジュアンの畑は、ワインの2大名産地の1つであるブルゴーニュ地方のモレ・サン・ドニ村にある。
モレ・サン・ドニは、最も多くのグラン・クリュ(特級畑)を擁するジュブレ・シャンベルタンと、ブルゴーニュの中でも優雅な産地と称されるシャンポール・ミュジニーに隣接する。総面積が150ha前後の小さな栽培地区ながら、現在、5つのグラン・クリュと20のプルミエ・クリュ(一級畑)が総面積の57%を占める銘醸地だ。
ジュブレ・シャンベルタンとシャンポール・ミュジニーという2つの有名地域に挟まれているが故に、モレ・サン・ドニは両者の影に隠れ、かつては不遇な境遇にあった。実際に1960年頃までは、モレ・サン・ドニのワインのほとんどはネゴシアンによって買い上げられ、ジュブレ・シャンベルタンかシャンポール・ミュジニーのものとして販売されていた。
しかし近年では、ワインの水準が高くバランスが良いことが世界的にも評価され、1995年以降はスター醸造家も出現。現在では、実力のある生産者が揃う銘醸地として注目されている。オリヴィエ氏も、まさにその1人なのだ。
ビオロジックでぶどうを栽培
厳しいエコセールの認証を取得しているオリヴィエ・ジュアンのぶどうは、ビオロジックという農法で栽培されている。
ビオロジックとは有機農法のことで、鶏や羊のフンなどの有機肥料を使用することが前提とされている。また、EU(欧州連合)圏内では、EUで認証された有機肥料以外を使用することはできない。さらに、EUのオーガニックワインに関する新規定では、亜硫酸塩の使用量にも厳しい規定が設けられている。
ブルゴーニュ地方は、「少しまとまった雨が降ると翌日の畑を見るのが怖いほど、ビオ栽培が難しい」ともいわれる。にもかかわらず、オリヴィエ・ジュアンの畑では、ビオロジックが高いレベルで実現できている。これは、いつも畑にいて、問題が起こりそうになると最速で対処するという、オリヴィエ氏の真摯な仕事があってこそだろう。
もう1つのこだわり、マサル・セレクション
オリヴィエ・ジュアンのぶどう栽培で、もう1つ特筆すべきは、マサル・セレクションという手法を用いていることだ。
ぶどうの樹では、親木から取った枝を挿し木することで、親木と同じ遺伝子を持つクローンをつくる。マサル・セレクションとは、1つの区画に複数種のクローンを存在させる選抜方法のことだ。複数のクローンが一区画に存在することで、それぞれの育成具合やぶどうの収穫時期に差が生じる可能性が高く、より厳しい畑の管理が必要となる。
4世代にわたってマサル・セレクションを受け継いできたオリヴィエ・ジュアンの畑には、この土地に適応する優秀なぶどう樹が複数種あり、生み出すワインの個性を際立たせている。
さらに、ワインづくりへのこだわりは、醸造シーンにも存在する。醸造所とカーヴは、畑より気温の低いオート・コート・ド・ニュイのアルスナン村にある。発酵は天然酵母のみで行い、2013年ヴィンテージ以降はレモン社製の樽のみを使用。瓶詰め前に1回だけ澱引きをし、SO2の使用も最小限にとどめている。
おすすめワイン5選
ここでは、オリヴィエ・ジュアンのおすすめワインを厳選して紹介する。
ブルゴーニュ オート・コート・ド・ニュイ ヴィエイユ・ヴィーニュ ルージュ
アルスナン村近郊の優良区画レ・フルナッシユの、樹齢約45年のぶどうを使用。完熟したベリーのニュアンスと、しっかりとしたタンニンを感じられるバランスの良い1本。ブルゴーニュのピノ・ノワールの中でも、果実味やボディが厚めなのも特徴的。
ぶどう品種:ピノ・ノワール100%
味わい:赤・フルボディ
参考小売価格:4752円(税込)
ブルゴーニュ オート・コート・ド・ニュイ ブラン
アルスナン村のレ・フルナッシュと、ショー村のレ・ヴィーニュ・バスの平均樹齢40~45年のぶどうを使用。爽やかなミネラル感と芳醇な果実味がバランス良く表現されている。
ぶどう品種:シャルドネ100%
味わい:白・辛口
参考小売価格:5500円(税込)
ブルゴーニュ ルージュ
ルスナン村のオート・コート・ド・ニュイ区画の樹齢55~60年のぶどうを80%、モレ・サン・ドニ レ・クレ・ジロンの樹齢約55年のぶどうを10%、モレ・サン・ドニ レ・シャン・ド・ラ・ヴィーニュと地続きのACブルゴーニュ区画のぶどう10%をブレンド。ブルゴーニュワインのエレガントな味わいが楽しめる1本。
ぶどう品種:ピノ・ノワール100%
味わい:赤・ミディアムボディ
参考小売価格:4400円(税込)
モレ・サン・ドニ クロ・ソロン
モレ・サン・ドニ村中央部にある、優良区画クロ・ソロンの平均樹齢25年のぶどうを使用している。新樽比率30%で熟成した、オリヴィエ・ジュアンの看板ワイン的存在。
ぶどう品種:ピノ・ノワール100%
味わい:赤・ミディアム~フルボディ
参考小売価格:1万890円(税込)
シャルム・シャンベルタン グラン・クリュ
オリヴィエ・ジュアンは、特級畑シャンベルタンに隣接するシャルム・シャンベルタンのマゾワイエール側に0.35haの区画を持つ。その区画の平均樹齢60年のぶどうを使用し、新樽比率30%で熟成したこのワインは、美しさと気品を兼ね備えた、オリヴィエ・ジュアンの最高キュヴエだ。
ぶどう品種:ピノ・ノワール100%
味わい:赤・ミディアムボディ
参考小売価格:2万4376円(税込)
【知っておきたいブルゴーニュのつくり手】
ドメーヌ・ニュダン|20以上のアペラシオンを有する老舗ドメーヌ
フィリップ・ルクレール|エネルギッシュな長期熟成ワインで世界を魅了