コラム

ボデガ・セロ・チャペウ|“ナチュール”ではなく“サステナブル”にこだわったワイン ~モトックスを魅了したウルグアイのワインメーカー③

   

モトックスは2024年1月末から、同社としては24カ国目となるウルグアイワインの取り扱いを開始した。同年2月8日には、メディア向けにセミナーを開催。ウルグアイワインの解説と共に、4生産者11アイテムの中から6アイテムの試飲も行われた。

講師は、元ワインメーカーという経歴を持ち、現在はモトックスで南半球と日本のバイヤーを務めている内藤大氏だ。

講師を務めたバイヤーの内藤大氏

セミナーでは、なかなか日本では巡り合うことのない、南米の隠れた銘醸地ウルグアイのワインについて語られた。今回は、新たに取り扱いを開始した、ボデガ・セロ・チャペウ(Bodega Cerro Chapeu)についてご紹介する。

ボデガ・セロ・チャペウとは

ボデガ・セロ・チャペウの歴史は、18世紀にスペインのカタルーニャで始めたワインづくりにさかのぼる。1930年にウルグアイへ拠点を移し、現在はブラジルとの国境線沿いに広がる産地リベラでワインづくりを行っている。

9代目となるフランシスコ・カラウ氏は、人的介入を抑えた自然なワインづくりをウルグアイでいち早く開始した人物だ。ナチュール系ワインの枠に当てはまらない、サステナブルなワインを手がけている。

例えば、ナチュール系ワインでは、酸化防止剤として亜硫酸塩が使われることが多い。しかし、亜硫酸塩を使用するには、酒石を安定させるために冷却する必要があり、多くの電力が必要となる。ボデガ・セロ・チャペウでは、ワイナリーにソーラーパネルを設置したり、日中は自然光を利用するなど、できるだけ電力を使わないサステナブルなワインづくりを行っている。そのため亜硫酸塩は使用せず、赤ワインにはアカシア、白ワインにはCMC(カルボキシメチルセルロースナトリウム)を使用する。その使用量も、ヨーロッパ基準の3分の1と低い。

他にも、敷地内の水を利用したり、電力ではなく重力を使用して果実や果汁を移動させるグラヴィティ・フロー・システムを採用するなど、サステナブルなワインづくりに取り組んでいる。

ボデガ・セロ・チャペウのワイン

今回、日本で発売されることになったのは、民謡を意味する「フロクローレ」というシリーズだ。ラベルに描かれている印象的な絵は、ボデガ・セロ・チャペウのぶどう畑に現れる動物たちだという。売り上げの一部は、ウルグアイの自然環境団体に寄付されている。

フロクローレ ナランハ 2023

タイプ:オレンジ・辛口
産地:リベラ県
ぶどう品種:トレッビアーノ90%、プティ・マンサン10%
参考小売価格:2700円(税別)
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セミナーで紹介されたオレンジワイン。特徴的なのは、そのワインのつくり方だ。トレッビアーノに、ファーストプレス後のプティ・マンサンの皮を入れて90日間醸した(マセラシオン)後、酸を和らげるマロラクティック発酵(MLF)を経て、ステンレスタンクで3カ月間熟成させている。

プレスした後の皮を、他の品種の醸しに使うという珍しい方法をとっており、プティ・マンサンの華やかさが引き出されている。

ラベルに描かれているのは、ネコではなく、小さいネコ科のマーゲイとのこと。畑に現れる動物の中でも、レアな存在だという。

フロクローレ ブランコ 2023

セミナーでは紹介されなかったが、「フロクローレ」には他に3種類のワインがある。

タイプ:白・辛口
産地:リベラ県
ぶどう品種:トレッビアーノ70%、マルヴァジーア30%
参考小売価格:2500円(税別)
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早摘みした果実をステンレスタンクで発酵し、6カ月熟成させている。「酸とうま味のバランスが良いワイン」とのこと。

フロクローレ ペット・ナット 2022

タイプ:白弱発泡・辛口
産地:リベラ県
ぶどう品種:トレッビアーノ80%、マルヴァジーア20%
参考小売価格:2950円(税別)
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「ペット・ナット」とは、もともとはアンセストラル方式(田舎方式)と呼ばれていたスパークリングワインのつくり方のこと。果汁の1次発酵の途中で瓶詰めして、完成させる。シャンパーニュ方式のように2次発酵させるものとは異なり、1次発酵後に糖と酵母を加えず、アルコール発酵で生じる澱も取り除かないため、ナチュラルなスパークリングワインになる。アルコール度数は低めの場合が多いが、こちらは13%としっかりめだ。

このワインは、ステンレスタンクでの1次発酵の途中で瓶詰めし、4カ月間瓶内で熟成させている。「澱由来のぶどうのうま味を感じる」という。

フロクローレ ティント 2023

タイプ:赤・ミディアムボディ
産地:リベラ県
品種:タナ80%、プティ・マンサン20%
参考小売価格:2500円(税別)
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黒ぶどう品種のタナに、白ぶどう品種のプティ・マンサンをブレンド。「フロクローレ ナランハ」のように、ファーストプレスした後のプティ・マンサンの皮をタナと一緒に入れて、10日間醸している。酸を和らげるマロラクティック発酵を経て、ステンレスタンクで3カ月間熟成させている。「柔らかなタナ。新感覚の赤ワイン」とのこと。

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About the author /  鵜沢 シズカ
鵜沢 シズカ

J.S.A.ワインエキスパート。米フロリダ州で日本酒の販売に携わっている間に、浮気心で手を出したワインに魅了される。英語や販売・営業経験を活かしながら、ワインの魅力を伝えられたら幸せ