コラム

赤ワインと白ワインでつくり方はどう違う? 収穫から発酵、出荷までの工程をチェック

   

赤ワインに白ワイン、さらにロゼワインにオレンジワインなど、ワインには多くの種類がある。ぶどう畑で収穫されたぶどうは、つくり方の違いに応じてさまざまなワインへと姿を変える。大切に育てられたぶどうが、どのようにワインに変わるのだろうか。その一般的な工程をまとめた。

Step1:ワイン用ぶどうを収穫する

北半球の場合、気温が10℃くらいになる3月ごろにワイン用ぶどうが発芽。夏の間に糖分を蓄え、9~10月に収穫期を迎える。8月に収穫された早摘みのぶどうは酸味が強く、収穫するタイミングが遅くなるほどに成熟が進んで甘みが凝縮されたぶどうになる。

どのタイミングで収穫するかによって、ぶどうの凝縮感が異なるため、収穫するタイミングの見極めは、ワインの仕上がりに大きな影響を与える。

収穫には機械を使うところが多いが、手摘みにこだわっているヴィンヤード(ぶどう園)もある。収穫したぶどうを暑さから守るために、夜や早朝に収穫するヴィンヤードもある。

収穫したぶどうは、成熟度や健全度などで選果。その後、果梗(実を支える柄)が取り除かれて、破砕される。今やほとんど機械で行うが、昔は足で踏みつぶしていた。

Step2:アルコール発酵と圧搾

赤ワインと白ワインでつくり方に差が出るのがこの工程だ。

赤ワイン・ロゼワイン

赤ワインでは黒ぶどうを破砕した後、「醸し(マセラシオン)」と呼ばれる工程へ移る。この工程では酵母を添加した果汁を、果皮や種と一緒にタンクや桶で4〜10日くらい発酵させる。2〜3週間、時にはそれ以上の時間をかけることもある。酵母を添加せず、ぶどうに元々付いている野生(自然)酵母のみで発酵させる場合もある。

マセラシオンによって、ぶどうの果皮の色素が溶け出すため、ワインは赤く色づき、香りも豊かになる。種子からはタンニンなどが溶け出し、赤ワインらしい渋みがつく。ぶどうの糖分はアルコールへと変化する。

ロゼワインは黒ぶどうのみを使ってつくる場合、程良く液体が色付いたところで果皮と種子を取り出し果汁のみを発酵させる「セニエ法」というマセラシオンを行う。白ワインをつくるときのような方法でつくる直接圧搾法、白ぶどうと黒ぶどうを混ぜる混醸法などの手法もある。

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出来たての赤ワインには、ぶどう果実の持つリンゴ酸の影響でシャープな酸味がある。そのため、赤ワインでは多くの場合、マロラクティック発酵という後発酵を行う。この工程では、乳酸菌の働きでリンゴ酸を乳酸に変化させ、酸味の和らいだまろやかで深みのある味わいを出す。

白ワイン・オレンジワイン

白ワインでは、赤ワインと異なりマセラシオンは行わない。白ワインをつくるとき主に白ぶどうが使用されるが、黒ぶどうでつくる場合もある。その際でも、果皮と一緒に漬け込まず果汁のみを発酵させれば、赤くない透明のワイン、つまり白ワインが出来上がる。

逆に白ぶどうにマセラシオンを施してつくったワインも存在する。それがオレンジワインだ。オレンジワインは白ぶどうの果汁をその皮と一緒に漬け込み発酵させることでつくられる。

白ワインでは、果汁を絞り出した後に酵母を加え、タンクや樽に入れて低温で発酵させる。赤ワインの発酵温度は25~35℃だが、白ワインの発酵温度は13~23℃だ。酵母は添加せず、野生酵母のみで発酵させる場合もある。赤ワインのように後発酵を行い、酸味を和らげることもある。

Step3:熟成

発酵直後のワインは、酵母の死骸である澱(おり)が浮遊しているため、澱引きという作業を行う。その後、熟成させる場合は木樽やステンレスタンクなどで貯蔵する。熟成期間が長くなればなるほど、再び樽やタンクに澱が溜まるので、熟成中に何度か澱引きを行う。

樽で熟成させると、木の香りやタンニンがワインに移る。ステンレスタンクのみで熟成させると、フレッシュなワインに仕上がる。また、樽にも新品と使い古しのもの、アメリカンオークとフレンチオーク、あぶり具合の異なるものなど、選択肢がたくさんあり、使った樽の個性がワインにも残る。

熟成期間はワインによって異なる。赤ワインはボジョレー・ヌーボーのように短い熟成期間でフレッシュな飲み口を楽しむものもあるが、5〜50年ほど長期にわたり熟成させた濃厚な味わいのものもある。一方、白ワインは長期間熟成する場合でも、赤ワインより短い3〜20年ほどで飲みごろを迎える。ロゼワインは長期間熟成しないのが一般的である。

Step4:濾過

熟成期間が終わると、濾過することで不純物を取り除きワインを清澄化する。フランスのシャトーの中には、赤ワインの清澄化に卵白を使用するところもある。この手法はコラージュ(collage)という。特にメドック地方で行われている。

また、濾過をあえてせずにうま味を残す無濾過(ノンフィルター)という手法もある。

Step5:瓶詰め

瓶に詰められ栓をされたワインは、瓶の中でさらに熟成された上で出荷される。

ブレンドするタイミング

複数の品種を組み合わせたブレンドワインは、どのタイミングでブレンドされるのだろうか。

実はつくり手によって、ブレンドのタイミングは異なる。

樽熟成を行う前にブレンドするところもあれば、樽熟成に入った数カ月後にブレンドするところもある。さらには、樽熟成が終わって瓶詰をする前にブレンドするところなどもある。


ここまで、ワインの一般的なつくり方をまとめた。ワインは「いつ収穫するか」「酵母を添加するか」「熟成は樽かステンレスタンクか」「どれくらい熟成させるか」「いつブレンドするか」など、つくり方に応じてそれぞれの個性が出ることがよく分かる。

今度ワインを飲むとき、そんなワインの工程に思いをはせてみてはいかがだろうか。

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About the author /  鵜沢 シズカ
鵜沢 シズカ

J.S.A.ワインエキスパート。米フロリダ州で日本酒の販売に携わっている間に、浮気心で手を出したワインに魅了される。英語や販売・営業経験を活かしながら、ワインの魅力を伝えられたら幸せ