コラム

7haの畑からサン・テミリオン最高峰のワインをつくり出すシャトー・オーゾンヌ ~ サン・テミリオン名門ワイナリー

   

フランス・ボルドー地方に位置するサン・テミリオン地区の名門ワイナリーを紹介していこう。

今回は、「シャトー・オーゾンヌ」を取り上げる。シャトー・オーゾンヌは、サン・テミリオン格付けで最高位の「プルミエ・グラン・クリュ・クラッセA」に格付けされている4つのシャトーのうちの1つ。同じく最高位格付けのシャトー・シュヴァル・ブランと並び、サン・テミリオンのトップシャトーと評される

シャトー・オーゾンヌのエピソード

Saint-Émilion Vineyard
シャトー・オーゾンヌは「ボルドー9大シャトー」に名を連ねている。9大シャトーはメドック地区の最高位に格付けされた5大シャトーに、シャトー・ペトリュス、シャトー・シュヴァル・ブラン、シャトー・オーゾンヌ、シャトー・ディケムを加えたものだ。

シャトー・オーゾンヌのワインは、年間でおよそ2万本しか生産されない。9大シャトーに数えられ、人気であることもあってか、入手が困難なレア・ワインの1つとなっている。

また、シャトー・オーゾンヌのワインは、生産量が少ないだけでなく、ボルドーワインの中でも非常に個性的なワインとして知られている。その大きな特徴は、非常に長い時間をかける(熟成)ことで、ワインの良さが引き出されること。そのため、若いうちは厳しい評価をされたり、分かりにくいワインと評されたりすることもある。しかし、100年以上の熟成にも耐えるポテンシャルを持っている。

有名なワイン評論家のロバート・パーカー氏は、1995年ヴィンテージのオーゾンヌワインに対して次のようにコメントしている。「瓶で並外れた成長をする要素を感じさせ、氷河のようにゆっくりしたペースで30年から40年熟成するはずで、予想される飲みごろは、2010年から2045年」。

シャトー・オーゾンヌの歴史

シャトー・オーゾンヌという名前は、ローマの詩人であるデシュミス・マニュス・アウソニウスの名前をフランス語読みした「オーゾンヌ」にちなんで名付けられたとされている。デシュミスは紀元後320年から395年まで、この地で生涯を送ったと言われている。正確な場所は分かっていないが、現在のオーゾンヌ周辺にぶどうを植えたとされる。

Saint Emilion
シャトー・オーゾンヌのぶどう畑に関する最古の記録は、14世紀半ばにぶどう畑を所有していたレスコート家の文書の中に存在する。オーゾンヌという呼び方が定着したのは、1592年頃のこととされている。長い歴史を持つほかのシャトーと同様、シャトー・オーゾンヌも時代とともにオーナーが変わり、彼らは少しずつぶどう畑を買い集めた。そして1810~1820年頃、ジャン・カントナ氏が単独のオーナーとなり、現在のオーゾンヌの基礎を作り上げた。その頃から、オーゾンヌのワインは人気を博し、シュヴァル・ブランと並んでサン・テミリオンの2大シャトーと評されるようになった。

その後、不振に陥ったが、現オーナーのアラン・ヴォーティエ氏や醸造家パスカル・デルベック氏の懸命な努力によって以前の品質を取り戻し、見事に復活を遂げた。1995年以降、コンサルタントのミシェル・ロラン氏のアドバイスのもと、アラン・ヴォーティエ氏自身が指揮を執り、シャトーの大改革を実施。1996年に、パスカル・デルベック氏がほかのシャトーに移った後は、ヴォーティエ氏が醸造も含めて、全てを管理するようになった。

シャトー・オーゾンヌのワインづくり

厳しい収穫制限

シャトー・オーゾンヌは、世界遺産にも指定されているサン・テミリオンの丘に7haのぶどう畑を所有している。シャトー・オーゾンヌの畑は、丘の南東斜面にあり、非常に日当たりが良く風の影響を受けにくい。土壌は、石灰を含んだ粘土質でぶどうの栽培に適している。

栽培品種はカベルネ・フランとメルローで、比率はカベルネ・フランが約55%、メルローが45%ほど。平均樹齢は50年を誇る。

最高の畑と最高の古樹に加え、シャトー・オーゾンヌでは厳しい収穫制限を行い、ぶどう果実の品質を高めている。ぶどうが完熟するまで待ってから収穫し、「1ha当たり約35hl」という低収量を維持している。

Ausone from the Gate

贅沢な生産方法

シャトー・オーゾンヌのワイン生産は、贅沢な生産方法として有名だ。

平均樹齢が50年を超える古樹から採れるぶどう果実は、すべて手で収穫される。収穫したぶどうは、まず畑で選果され、醸造所に運んで除梗した後に2度目の選果を行う。

その後、フレンチオーク製のタンクで低温マセレーション(約12~15℃)をし、アルコール発酵へと進む。この際、シャトー・オーゾンヌでは、培養酵母を使用せず、野生の酵母だけでアルコール発酵させている。

アルコール発酵が終わると、ワインを新樽に移しマロラクティック発酵を行う。最低でも19カ月の樽熟成をさせて、その後瓶詰め、出荷となる。熟成中、清澄はするが、ろ過は一切しないという。

シャトー・オーゾンヌは、良いワインをつくるためには、手間と投資を惜しまない。そのため、品質の高いワインを安定して産することができ、常に高い評価を得ている。

シャトー・オーゾンヌのおすすめワイン

シャトー・オーゾンヌ


メルローとカベルネ・フランがバランス良くブレンドされたワイン。ぶどう栽培に最適の畑で栽培したぶどうを使用し、手間をかけてつくられたワインは、エレガントさとともに力強い完熟感を併せ持つ個性的なワインに仕上がっている。

アルコール度数はやや高め。当たり年のワインであれば、100年以上の熟成にも耐えるポテンシャルを持っている。100年以上熟成されたオーゾンヌを飲んだ評論家は、その馥郁たる甘美な香り、奥行きのある豊かなコク、飲む人を恍惚とさせる甘いフィニッシュを絶賛したという。

シャペル・ド・オーゾンヌ


シャトー・オーゾンヌのセカンドワイン。深い色合いが美しく、優雅な後味とブルーベリーやブラックラズベリーの果実香が楽しめる。セカンドワインながら市場価格は2~4万円ほどで、年間生産量は5000本と少ない。10年ほど熟成するのが良いとされている。

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