コラム

特徴的なブレンドで独特のワインを産するシャトー・シュヴァル・ブラン~ 解説:フランス ボルドー地方サン・テミリオンの名門ワイナリー

フランス、ボルドー地方に位置するサン・テミリオン地区の名門ワイナリーを紹介するシリーズ。

今回は、サン・テミリオン地区でシャトー・オーゾンヌと双璧をなすと評され、最高位の「プルミエ・グラン・クリュ・クラッセA」に格付けされている「シャトー・シュヴァル・ブラン」について、ご紹介していこう。

シャトー・シュヴァル・ブランのエピソード


シャトー・シュヴァル・ブランは、メドック地区の最高位に格付けされた5大シャトーに、ボルドー各地区のトップシャトーを加えた「ボルドー9大シャトー」に名を連ねている。また、シャトー・シュヴァル・ブランは、シャトー・オーゾンヌと並んで、サン・テミリオン地区で最も優れたシャトーと評されている。

著名なワイン評論家のロバート・パーカー氏は、「シュヴァル・ブランは間違いなく、ボルドーで最も深遠なワインである」と、シャトー・シュヴァル・ブランのワインを高く評価している。

サン・テミリオン地区の土壌は2つに分けられる。1つは、粘土石灰質のコートと呼ばれる地域で、メルローの栽培に適している。シャトー・オーゾンヌをはじめ、第1特別級に属する多くのシャトーがコートに位置している。もう1つは、砂利質のグラーヴと呼ばれる地域で、ボルドー地方では補助品種とされているカベルネ・フランの栽培に適している。

グラーヴに位置するシャトー・シュヴァル・ブランでは、カベルネ・フランとメルローをほぼ同じ割合で使用してワインをつくっている。このように、ボルドー地方では補助品種とされているカベルネ・フランを多用しているのが、シャトー・シュヴァル・ブランの大きな特徴とされている。この特徴的なブレンドでつくられるシャトー・シュヴァル・ブランのワインは、豊かなコクと力強い味わいを持つ独特なワインに仕上がっている。

シャトー・シュヴァル・ブランの歴史


ボルドー地方では珍しく、シャトー・シュヴァル・ブランは、長年同じ家族が所有し続けてきたワイナリー。

シャトー・シュヴァル・ブランの歴史は、1832年にデュッカス家が16haの畑を購入し、小さなシャトーを建てたことに始まる。その後、15haを買い足し、1854年には、デュッカス家のアンリエット・デュッカス氏がジャン・フルコー・ローサック氏と結婚したことで、5haの畑が加わった。畑の拡張だけでなく、ワインづくりも順調で、1862年と1878年には、品質の良さが認められ、ロンドンとパリで金賞を獲得した。1893年のヴィンテージは、たぐいまれな品質の高さで、「伝説」となるほどのワインとなっている。

その後、1998年になると、シャトー・シュヴァル・ブランは、ベルギー人で実業家のアルベール・フレール氏と、LVMH(ルイ・ヴィトン・モエ・エ・ヘネシー)社長のベルナール・アルノー氏の手に渡った。

シャトー・シュヴァル・ブランのワインづくり

珍しいブレンド

先述したように、シャトー・シュヴァル・ブランでは、珍しい割合でブレンドしたワインを産出している。ボルドー地方では、通常、カベルネ・フランは補助品種として栽培されているため、ブレンドの割合が低くなる。シャトー・シュヴァル・ブランでは、メルローとカベルネ・フランをブレンドして使用しているが、その割合は同じか、時にはカベルネ・フランの方が多くなっている。そのため、同シャトーのワインは、豊かなコクと完熟感、強い粘性のある独特の味わいを持っている。さらに、カベルネ・フランは、熟成するほど深みを増すため、シャトー・シュヴァル・ブランのワインは、若いころはもちろん、20~30年熟成したものも素晴らしく、ボルドー9大シャトーの中で飲み頃の期間が最も長いと評されている。

厳しい収穫制限とシンプルな醸造

シャトー・シュヴァル・ブランのぶどう畑は、40haほど。そこで、カベルネ・フラン(55%)と、メルロー(45%)を栽培している。さほど広くない畑にもかかわらず、「1ha当たり約35hl」という非常に厳しい収穫制限をして、ワインの品質を高めている。


醸造方法は、シンプルかつクラシック。ぶどうは全て手摘みで収穫している。収穫したぶどうをカジェットに入れて醸造所まで運んだ後、除梗前と後の2回選果を行う。その後、コンクリートタンクとステンレスタンクで発酵させる。発酵後は100%新樽で15~20カ月間熟成。熟成中、3カ月に1度の澱引き、卵白でのコラージュを行い、瓶詰めする。

シャトー・シュヴァル・ブランのおすすめワイン

シャトー・シュヴァル・ブラン

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サン・テミリオン地区を代表するワイン。瓶詰め直後から長期熟成後まで、飲み頃が非常に長い。エキゾチックな香りのほか、熟した果実の香りを持つ。柔らかい口当たり、タンニンと完熟感のある味わいのバランスが非常に良い。

ル・プティ・シュヴァル

シャトー・シュヴァル・ブランのセカンドワイン。シャトー・シュヴァル・ブランは、カベルネ・フラン主体でつくられるが、ル・プティ・シュヴァルは、メルロー主体。豊かな果実味を持つ。

ル・プティ・シュヴァル・ブラン

サン・テミリオンでつくられる稀少な白ワイン。2009年から2013年まで試行錯誤を繰り返し、2014年にファーストヴィンテージをリリース。その数はわずか3000本だった。シャトー・シュヴァル・ブランに隣接した畑のソーヴィニヨン・ブランを使用している。レモンやアプリコットのような香りと、爽やかな酸を持つエレガントなワインに仕上がっている。

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