コラム

カリフォルニアの白ワイン、その魅力を伝えるために知っておきたい主要ぶどう品種&ワイン5選 ~ 特別講義「カリフォルニアワインの今を知る」1回目

   

カリフォルニアワイン協会(California Wine Institute。以下、CWI)日本事務所は、カリフォルニアワインの魅力を分かりやすく伝える「カリフォルニアワインの今を知る 特別講座」(全4回)を2019年2月から開催している。

本記事では、2月に開催された同講座第1回目で語られた内容をご紹介していきたい。

第1回目のテーマは「白ワイン・代表品種の魅力を知る」。講師を務めたJSA認定シニアソムリエの松木リエさんは「カリフォルニアの最新の風を皆さんにお伝えしたい」「誰かに伝えるときに、いかにワインを分かりやすく伝えるかが分かってもらえれば」と語り、主要な白ワイン品種の特徴や、カリフォルニアワインの現状について説明してくれた。


データでみるアメリカワイン

アメリカのワイン生産量は「フランス」「イタリア」「スペイン」に続く世界第4位だ。

さらに、アメリカは世界最大のワイン消費国。アメリカワインは、国内でも愛飲されている。ワイン消費の成熟した国と言えるだろう。

日本のワイン市場においても、アメリカワインの存在感は小さくはない。

輸入数量でみると、1位は価格の安さなどが魅力の「チリ」ワイン。伝統的なワイン生産国である「フランス」「イタリア」「スペイン」が続いている。そして5位のオーストラリアに続き、6位に入るのが「アメリカ」だ。



日本には2017年、約2130万Lのアメリカワインが輸入された。輸入金額で見ると137億円を超え、スペインとオーストラリアを抜いて4位となる。“輸入数量”のランキングよりも、“輸入金額”のランキングの方が高い。ということは日本では、より中級~高級な価格帯のアメリカワインが飲まれているということになる。



“量より質”で日本に受け入れられているアメリカワイン。その8~9割が生産されているのがカリフォルニア州だ。

カリフォルニア州では現在、58郡中49郡でぶどうが生産されており、5100軒を超えるワイナリーがある。

フランスのワイン界には伝統的な原産地呼称制度としてAOC(Appellation d’Origine Controlee)がある。同様にアメリカにはAVA(American Viticultural Areas)制度があり、州によって異なるところもあるが、公認のワイン指定栽培地域で栽培されたぶどうを85%以上使用するとその地域名を名乗ることができるようになる。カリフォルニア州にあるAVAは、2019年2月時点で139。その数はどんどん増えている。

ぶどうの多様性を生むカリフォルニアの気候

ワイン用ぶどう栽培に適した気候とは

ワイン用のぶどうづくりには、欠かせない要素が5つある。

・二酸化炭素
・日照
・水分
・適度な暖かさ
・栄養分

この条件がそろいやすいのが、北緯/南緯30~50°、平均気温10~16℃の地域だ。この条件に当てはまる地域は「ワインベルト」と呼ばれている。



さらに、「土壌・気候・海流・標高などの自然条件」「人の手」などの要因からも影響を受けて、ぶどうの優劣が決まってくる。

カリフォルニア州の気候

温暖なイメージのあるカリフォルニア州には、ワイン用ぶどう栽培に適した気候条件がそろっている。

例えばカリフォルニア州には、太平洋に面した1300kmにわたる海岸線がある。ワイン生産地に影響を与える海岸線としては世界最長だという。


従って、カリフォルニアワインは海からの影響を受けやすい。一般的には、ぶどうの成長期が伸びて、より深い色合いや風味、最適な成熟を可能にする手助けになるそうだ。

温暖な気候のカリフォルニア州だが、海の沖合にはアラスカから冷たい寒流、カリフォルニア海流も流れ込んでくる。一方で、カリフォルニア州の内陸には乾燥した砂漠もあり、熱い風が吹いている。

カリフォルニア州の沿岸部に目を向けると、コースト山脈と呼ばれる山々が長く連なっている。標高は1000~1600mとそれほど高くなく、海岸沿いで発生した霧は、内陸に入ると温かい谷間に引き込まれる。

海の霧が幅広い気象条件をつくり出すため、栽培されているワイン用ぶどう品種も幅広くなる。同じ品種でも、栽培される場所によってキャラクターが変わる。カリフォルニア州では、ぶどう品種と産地の掛け合わせで、非常に多様なぶどうのキャラクターを見つけることができるという。

さらに昼に暖かくて夜は寒いという1日の寒暖差が、ぶどうを成熟させながら酸味を与える環境を生んでいる。

サステナブルなワインづくり

最近では、サステナブルなワインづくりを重視するつくり手が増えてきた。「サステナブルなワインづくり」とは、3~5世代先まで持続可能なワインづくりのことだ。

カリフォルニアでも、サステナビリティが重視されるようになってきた。カリフォルニア州はアメリカで最も人口が多く、経済も成長している。それに伴って起こるのが、限られた天然資源をめぐる争いだ。カリフォルニアのワイン産業では、そういった争いを無くし、限られた資源を使って健康的で持続可能な事業形態(=サステナブルなワインづくり)を目指している。

サステナブルなワインづくりに重要なのは、次の3つのポイントを備えていることだという。

・環境への優しさ
・経済的に実現可能であること
・社会的に公正であること



いずれかひとつに偏ってしまっては、サステナブルなワインづくりは難しくなる。例えばビオディナミ農法は環境に優しいが、実践するには相応の費用がかかってしまう。環境への配慮にこだわりすぎた結果、ワイナリーの収益性が悪化して継続が困難になるようであれば、「サステナブルなワインづくり」とは言えない。

[関連記事]オーガニックの先へ――カリフォルニア州で急速に広まる「サステナブルなワインづくり」とは

カリフォルニア州では現在、1000を超えるワイナリーがサステナブル認証を受け、サステナブルなワインづくりに取り組んでいる。ワインボトルの数で考えると、全体の約4分の3に当たるワインがサステナブル認証を受けたワイナリーでつくられたものだ。サステナブル認証を受けていないそれ以外のワイナリーでも、サステナブルなワインづくりに向けて、何らかの取り組みを始めているところは数多い。

カリフォルニア州で実践されている取り組みの例としては、「カバークロップ」が挙げられる。ぶどう樹とぶどう樹の間にわざと花や植物(=カバークロップ)を植えることで、ぶどうに足りない栄養素を補い、根の水分保持、虫を呼び寄せる、逆にハーブで虫を遠ざけるなどの効果が見込める手法だ。

伸び過ぎたカバークロップは、羊などを放牧して食べさせる。ガチョウに余分な雑草を食べさせたり、ハヤブサやフクロウを飼ってぶどうを食べてしまう害虫や鳥を遠ざけたり――といった取り組みも広まっている。

カリフォルニア州でサステナブルなワインづくりに取り組んでいるつくり手と話すと、「100年後」や「5世代後」というキーワードがよく出てくるという。カリフォルニアのワインメーカーは自分が死んだ後のことも考えて、畑に手を入れ、醸造所などを建てていくそうだ。

こうしたサステナブルなワインづくりを実践しているワイナリーには、「Certified California Sustainable Winegrowing」(CCSW)などの認定マークが付与されている。カリフォルニアワインを飲む際、こうした認定マークを意識してみるのもいいだろう。

カリフォルニアを代表する白ワイン用ぶどう品種

ぶどう品種の個性を知ることで、テイスティング能力を高めるだけではなく、好みのワインを探したり、誰かのためのワインを検討したり、料理やシチュエーションに合わせたワインを選んだり――といったとき、大いに役立つことになるだろう。

カリフォルニア州内ではどのような白ワイン用ぶどう品種が栽培されているのだろうか。面積で見た2017年の主要品種のランキングは次のとおりだ。

1位:シャルドネ /3万6844ha
2位:フレンチ・コロンバール/7630ha
3位:ピノ・グリ/5907ha
4位:ソーヴィニヨン・ブラン/5666ha
5位:シュナン・ブラン/1917ha
6位:マスカット・オブ・アレキサンドリア/1869ha
7位:ホワイト・リースリング/1554ha
8位:マスカット・ブラン/1213ha
9位:ヴィオニエ/1091ha

圧倒的に多いのがシャルドネだ。1990年代後半には、ワイン愛好家の間で、「Anything But Chardonnay(ABC)」というフレーズが流行した。これは「世間で飲まれている白ワインがシャルドネばかり」という不満を表す言葉で、「シャルドネ以外ならなんでもいい(=シャルドネにはうんざり)」という意味だ。現在ではそう考える愛好家は少なくなり、再びワイン愛好家にもシャルドネからつくられたワインが好んで飲まれるようになってきている。

シャルドネ

本講座では、ワインのテイスティングを含めて、カリフォルニア州で人気や勢いのある5つのぶどう品種について解説された。

「ニュートラルな品種」「いろんな化粧を施すとうまくなじんでくれる」など、いろいろな表現で説明されるシャルドネ。冷涼・温暖・高温の環境下でも栽培が可能なこともあり、さまざまな土壌や気候に対応できる優秀なぶどう品種として、世界で2番目に多く栽培されている。

シャルドネは、気候や土壌などの栽培条件に合わせて、ワインのスタイルが変わってくる。ブラインドテイスティングが難しい品種だ。

それぞれの気候によるシャルドネのキャラクターの変化は次のとおりだ。

冷涼な地域でつくられたシャルドネの特徴

シャルドネは「酸味が低い」と思われがちだが、高い酸味も保てる。冷涼な地域でつくられたシャルドネを口にするとよく分かるだろう。

酸味が高く引き締まった味になり、レモンやリンゴのような風味がある。キュウリなどの青い野菜の香りや、ヨーロッパの甘くなくて水っぽいメロンの香りがする。

温暖な地域でつくられたシャルドネの特徴

風味も上がり、リッチな味わいになる。白桃、洋ナシのようなフルーツや成熟したグレープフルーツのような柑橘類の風味が出てくる

高温な地域でつくられたシャルドネの特徴

シャルドネは高温でも栽培できる。酸が落ちて、バナナやパイナップルなどのトロピカルフルーツの風味が出てくる。

ウェンテ ヴィンヤード・セレクション リヴァ・ランチ シャルドネ 2016

本講座でシャルドネのテイスティング用に用意されたのは、「ウェンテ ヴィンヤード・セレクション リヴァ・ランチ シャルドネ 2016」だ。


ウェンテ ヴィンヤード・セレクション リヴァ・ランチ シャルドネ 2016
AVA:アロヨ・セコ、モントレー
参考価格:3600円(税抜)
輸入元:明治屋
アルコール分:13.5%

このワインがつくられたリヴァモア・ヴァレーは、海からの風を引き込むようなすり鉢状の地形。ゴルフ場やレストランなどもあり、年間32万人が訪れる観光地としても知られている。

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ゴールドラッシュを夢見て、カリフォルニア州にやってきたドイツ系移民のカール・ウェンテ氏。夢が破れた後は、ナパ・ヴァレーで働き始めた。1883年にウェンテワイナリーを設立し、この地にぶどう樹を植えて以降、5世代にわたって途切れることなく続いているカリフォルニア最古の家族経営ワイナリーだ。禁酒法時代も教会用のワインとして生産を許可されていたという。

カリフォルニア州で栽培されているシャルドネの8割が、このワイナリーから派生した「ウェンテ・クローン」だと言われている。

現在は、フランス由来のぶどうを使ったカリフォルニアスタイルのワインを目指しているという。パッションフルーツ系のリッチさから、温暖なカリフォルニアの気候を感じられる。樽の使い方にフランスらしさが漂うこのワインも、現在のウェンテワイナリーを感じられる1本だ。

ピノ・グリ

ピノ・グリは、イタリア語風に「ピノ・グリージョ」と呼ばれることもある。どちらで呼ばれるかは、そのワインのスタイルによって決まっている。つまり、どんなイメージでワインを手に取ってほしいかによって、つくり手は表記を決めているそうだ。

「ピノ・グリ」と呼ぶときは、よりボディのある白ワイン。アルコールが高い傾向があり、少し蜜っぽさが感じられるものに表記されている。

「ピノ・グリージョ」と呼ぶときは、ライトボディで辛口な白ワイン。アルコールが低くて、さわやかなものに表記される。こうした違いは、知っておきたいポイントだろう。

クライン ソノマ・コースト ピノ・グリ 2017

ピノ・グリのテイスティング用に用意されていたのは、「クライン ソノマ・コースト ピノ・グリ 2017」だった。



クライン ソノマ・コースト ピノ・グリ 2017
AVA:ソノマ・コースト
価格:2200円(税抜)
輸入元:布袋ワインズ
アルコール分:13.5%

このワインがつくられたソノマ・コーストは、海岸線に近く、コースト山脈とマヤカマス山脈に挟まれた霧の影響を受けやすい冷涼な地域だ。

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フレッド・クライン氏が立ち上げたワイナリーで、ジンファンデルやマイナー品種の古樹から収穫されたぶどうでつくるワインが評判だ。ちなみにクライン氏は、ジャグジー風呂を開発したヴァレリアーノ・ジャクジー氏を祖父に持つことでも知られている。

ほんのりピンクグレーがかった色調になるのが、ピノ・グリの特徴。辛口だけれども、果物をもぎ取ってかじったようなフレッシュな酸味が感じられる。アルコールからくる厚さよりも、ジューシーさを感じる1本だ。

ソーヴィニヨン・ブラン

ソーヴィニヨン・ブランは、冷涼な気候でも温暖な気候でも栽培される品種だ。ワインには舌でしっかり感じられる高い酸味が残る。

アロマティックなぶどう品種だが、畑で摘んだ時点のソーヴィニヨン・ブランを食べても、アロマを感じないそうだ。アロマが出てくるのは、発酵を通して。皮にある香りの前駆体がワインにアロマを与えていく。

清涼感があり、高い酸味やさわやかな風味があるソーヴィニヨン・ブランは、若いうちに飲むことを前提にして、スクリューキャップで出荷するつくり手も多い。

一方で、ソーヴィニヨン・ブランを樽で熟成させることでオークの香りをつけ、リッチで複雑な風味を与えるつくり手が多い地域もある。それが、フランスのボルドー地区とカリフォルニア州だ。

ソーヴィニヨン・ブランとブレンドされることの多いぶどう品種がセミヨンだ。セミヨンは蜜っぽくて酸味が穏やかなので、ブレンドすることで香りや味のバランスが良くなる。

成熟の度合いによって、幅の広い風味を持つ品種でもある。未熟なときには、青ピーマンやアスパラなどの青野菜や草木などの風味がする。それが熟すにつれて花(エルダーフラワー)、レモンやライムなどの柑橘類が前面に出てくるようになる。さらに熟すとモモなどの核果実やトロピカルフルーツの香りへと徐々に変わってくる。

自分はどの成熟度の香りが好きなのかを知っておくと、さらにソーヴィニヨン・ブランを楽しめるようになるだろう。

ロバート・モンダヴィ・ワイナリー フュメ・ブラン 2016

ソーヴィニョン・ブランでテイスティングしたのは、「ロバート・モンダヴィ・ワイナリー フュメ・ブラン 2016」だった。



ロバート・モンダヴィ・ワイナリー フュメ・ブラン 2016
AVA:ナパ・ヴァレー
参考価格:4680円(税抜)
品種:ソーヴィニヨン・ブラン92%、セミヨン8%
輸入元:メルシャン
アルコール分:14.5%

このワインがつくられたのは、ヴァカ山脈とマヤカマス山脈の谷間にあるナパ・ヴァレー。幅5km、南北に50kmほどの有名なワイン産地だが、生産量はカリフォルニア全体の4%と非常に少ない。

内陸に入り組んだサンフランシスコ湾にほぼ面しており、冷たい空気が南から北に入り込むため、南の方が寒くて北の方が暖かい。夏の気温は、南側が15~26℃、北側は10~32℃。また、平均降雨量は南側の方が少ないという特徴もある。

大規模な山火事の影響を受けたワイン産地だが、設備を貸し合うなど、ワイナリー同士で協力して乗り越えたそうだ。

[関連記事]ナパ・ヴァレーワインの特徴とは

そのナパ・ヴァレーを代表するつくり手が、ロバート・モンダヴィ氏だ。この人無くしてカリフォルニアワインは語れないほどの人物。彼のヴィンヤードには、1945年に植樹された北米で最も古いソーヴィニヨン・ブランの樹がある。1966年の創業当初は、アメリカでのソーヴィニヨン・ブランはソーテルヌのように甘かったそうだ。

「フュメ・ブラン」とは、樽で発酵させてシュールリー(澱)とともに熟成した上で、4カ月間フレンチオークで熟成させたボルドースタイルに近いワインのこと。

辛口だが、よく熟したパッションフルーツやエルダーフラワー、バニラ、ナツメグの香りが溶け込んでいる。アルコール度数と酸が高いワインだ。

リースリング(ホワイト・リースリング)

アロマティックで酸が高いリースリング。特徴だけ聞くと、ソーヴィニヨン・ブランを思い浮かべる人も多いかもしれない。冷涼な気候で栽培されたリースリングには、ジャスミンやスイカズラのような花の香りがある。温暖な気候で栽培されると、香りは白桃のみずみずしいものに変わる。

また、辛口だけではなく、遅摘みや貴腐ワインなどの甘口もつくられていることも、ソーヴィニヨン・ブランとリースリングが大きく異なるポイントだ。

リースリングでつくるワインは熟成されることが多い。熟成された香りは「石油」を感じさせる。もちろん魅力的な表現ではないので、レストランでは「菩提樹」や「乾燥カモミールの香り」と言い換えられているそうだ。

石油の香りは、瓶内熟成や熟成香から生じるもの。また、水分ストレスがかかっている状態で栽培されていると、若いうちから石油のような香りがするそうだ。

灌漑がされていないドイツやフランスでは、それなりに雨が降るので若いうちから石油の香りがすることはあまりない。ニューワールドで水の少ない地域で栽培されると、若いうちから石油の香りがすることがある。ミネラル香として捉えることもできるが、否定的な人もいるのが現状だ。

トレフェッセン・エステート ナパ・ヴァレー ドライ・リースリング 2017

リースリングでテイスティングしたのは、「トレフェッセン・エステート ナパ・ヴァレー ドライ・リースリング 2017」だ。



トレフェッセン・エステート ナパ・ヴァレー ドライ・リースリング 2017
AVA:ナパ・ヴァレー
価格:4100円(税抜)
輸入元:布袋ワインズ
アルコール分:12.5%

トレフェッセンは、自社畑100%のワイナリーだ。そこで育てたリースリングは、強さのある華やかな香りがある。冷涼な気候で育てられたので、青りんごや白い桃のような香りも感じられる。

辛口で酸もしっかりして引き締まっており、「スッキリした」という言葉では言い表せられない繊細なワインだ。ソーヴィニヨン・ブランと比べると、口の中にトロっとした華やかさが残る。

ヴィオニエ

カリフォルニア州でのヴィオニエの生産量は、白ぶどう品種としては9位だが、最近注目を集めている魅力的な品種として紹介された。

ヴィオニエは、ぶどうが熟しやすいのが特徴で、糖分が高くなる。酸は低い傾向があり、アルコール分が高くなりやすい。

上手くコントロールすると、フルボディで滑らかなワインになる。アロマティックさもあり、すみれやタイム、ローズマリーのようなハーブの華やかさがあるぶどう品種だ。

白ワインを熟成させるには、「酸味の高さ」「アルコール度数の高さ」「風味の強さ」「残糖」が必要だ。ヴィオニエの酸は控えめだが、風味やアルコールの高さがそれを補うので、熟成に適している品種だ。

ボーグル・ヴィンヤーズ ヴィオニエ 2016

ヴィオニエを理解するためにテイスティングしたのは、「ボーグル・ヴィンヤーズ ヴィオニエ 2016」だった。



ボーグル・ヴィンヤーズ ヴィオニエ 2016
AVA:クラークスバーグ
価格:2480円(税抜)
輸入元:オルカ・インターナショナル
アルコール分:14.5%

8つのカリフォルニアの地区やイスラエルで採用されているサステナブルなワイン生産プログラム「ローダイ・ルール」に則ってつくられたワイン。ローダイはゴールドラッシュのときにぶどうが植えられた地域で、ジンファンデルの名産地として知られている。

サンフランシスコ湾とシエラネバダ山脈の間にあるセントラル・バレーに属し、現在急成長中だ。

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ボーグルは、1800年代から6代続く農家が営むワイナリーだ。ぶどうの栽培を手掛けるようになったのは、4代目になってから。年間200万ケースほど生産している大きなワイナリーだが、アットホームな雰囲気を保ち続けている。300人程度しか住んでいない小さな地域のクラークスバーグがAVAを取得できたのは、ボーグルの功績が大きいと言えるだろう。

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ボーグル・ヴィンヤーズ ヴィオニエは、オレンジの花のようなニュアンスがあるフラワリーでアロマティックなワインだ。辛口だが酸味が控えめなため、まろやかでボリューミーな力強い味わいがある。

14.5%のアルコール度数が、しっかりとしたボディを支えている。スパイシーな食事など、お料理に合わせたい1本。

醸造技術による影響も

ワインの香りや風味は、ぶどう品種だけではなく、醸造技術による影響を受けていることもある。

例えば、発酵と熟成の間に行われることがある「マロラクティック発酵」(後発酵)をすると、きつい酸味が和らいでバターやクリームのような風味がつく。

酵母細胞の死がいである澱(オリ)と長く触れさせれば、クリーミーな口当たりになる。パンのような香味がついて、味の深みが生まれる。

また、オーク樽で熟成させると、トーストやバニラ、ナッツなどの風味がワインに溶け込む。カリフォルニア州では、アメリカンオークだけではなく、フレンチオークも多く使われているそうだ。講師の松木さんは、カリフォルニア州での樽の使い分けを「絶妙」と表現していた。

テイスティング力を伸ばしたい人だけではなく、自分の好きなタイプのワインを知るのにも、ぶどう品種を知るのが近道の1つだと感じられた講座だった。

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About the author /  鵜沢 シズカ
鵜沢 シズカ

J.S.A.ワインエキスパート。米フロリダ州で日本酒の販売に携わっている間に、浮気心で手を出したワインに魅了される。英語や販売・営業経験を活かしながら、ワインの魅力を伝えられたら幸せ