コラム

国際ワインコンクールで日本初の金賞を受賞! 甲州の立役者・グレイスワイン ~ 解説:山梨県・勝沼エリアの名門ワイナリー

山梨県甲州市の勝沼エリアは、明治時代からぶどう栽培とワインづくりが盛んな日本のワイン銘醸地だ。このシリーズでは、勝沼エリアのワイナリーを紹介していく。

第5回目は、「中央葡萄酒(グレイスワイン)」。“勝沼御三家”の1つで、甲州種の立役者として紹介されることもあるつくり手だ。

世界で最も飲まれている日本のワインメーカー

グレイスワインの輸出先は、2019年現在で20カ国を数える。世界で最も飲まれている日本のワインメーカーだ。日本だけでなく、多くの国々で親しまれているフラグシップワインが「グレイス甲州」。EUでは、「Grace Koshu Private Reserve(グレイス甲州プライベート・リザーブ)」の名前で流通している。

2000(平成12)年には、イギリスの『フィナンシャル・タイムズ』で「日本のオリジナリティを持つワイン」として紹介され、『ワールド・アトラス・オブ・ワイン』(第5版)では、「日本を代表するワイン」として取り上げられた。

また2017年には、世界90カ国以上で販売されているイギリスのワイン雑誌『デキャンタ』の表紙を飾っている。

ワイナリーの歴史

国際ワインコンクールで日本初・アジア初の賞を受賞

グレイスワインの歴史は、1923(大正12)年に初代の三澤長太郎氏が山梨県勝沼町で創業し、「長太郎印葡萄酒」を販売したことに始まる。1953(昭和28)年に3代目の三澤一雄氏のもとで中央葡萄酒が設立され、「グレイス(GRACE)」ブランドが誕生した。1989(平成元)年からは、4代目となる三澤茂計氏が社長に就任している。

2002年には、日照時間日本一の明野町に自社畑「三澤農場」を開園。徹底した管理のもとで、日本で一般的な棚栽培ではなく、垣根式でぶどうを栽培している。

2006年には全日空(ANA)国際線のファーストクラスラウンジやビジネスクラスラウンジで、2009年には日本航空(JAL)国際線のファーストクラスで、グレイスワインのワインを採用。2008年には、漫画『神の雫』で「グレイス シャルドネ 2007」「グレイス シャルドネ 2008」が紹介された。

コンクールでは数多くの受賞歴を誇るが、2014年には「キュヴェ三澤 明野甲州 2013」が、世界的なワインコンクールのDecanter World Wine Awardsで日本ワイン初の金賞とアジア地域の最高賞であるリージョナルトロフィーを受賞した。

2015年にも、「グレイス甲州」のEU輸出ラベル「グレイス甲州プライベート・リザーブ2014」が同コンクールでリージョナルトロフィーを受賞。2016年には、「グレイス エクストラ・ブリュット・ブラン・ド・ブラン」が、スパークリングワインとしてアジア初のプラチナ賞を受賞している。

各国で研さんを積んだ女性醸造家が醸造を手掛ける

グレイスワインで栽培醸造部長を務めるのは、三澤彩奈氏だ。

4代目社長の長女である彩奈氏は、ボルドー大学ワイン醸造学部を卒業。南アフリカのステレンボッシュ大学大学院でぶどうの生理学コースを修了した後、ニュージーランドやオーストラリア、南米などのワイナリーで経験を積んできた人物だ。2007年よりジャパン・ワイン・チャレンジの審査に参加し、2010年には「マダム・ボランジェアワード」最優秀日本人審査員賞を受賞している。

個性を表現するナチュラルなワインづくり

「ワインの香りや味わいは、ぶどうが決定づける」という確信のもと、グレイスワインでは良質なぶどうを使った、できるだけナチュラルなワインづくりを行っている。

ワインを決める、良質なぶどうづくり

日照時間日本一を誇り、雨の少ない山梨県北杜市明野町に位置する三澤農場では、良質なぶどうづくりを追求している。湿度の高い日本では棚栽培が一般的だが、三澤農場では欧米で主流の垣根式で甲州種やヨーロッパ系品種を栽培している。日本の気候で垣根式栽培を成功させるために取り入れたのが、高畝(たかうね)式だ。高畝式とは、平地ではなく、盛り上げて造成した土の上で、ぶどうを栽培する方法だ。ぶどうの樹に水分ストレスを与えることで、ぶどうの糖度を上げる効果がある。

白ワイン用のぶどう品種では、水分ストレスをかける必要がないという考えが一般的だったが、ステレンボッシュ大学のコブス・ハンター教授が彩奈氏に推奨してくれた方法だという。

この方法で初めて「甲州種で糖度20度を超える」という目標を達成したのが、2012年のこと。さらに、翌2013年には22度を達成。そのぶどうを使用し、技巧に頼らずにつくられたのが、「キュヴェ三澤 明野甲州 2013」だ。このワインは高く評価され、Decanter World Wine Awardsで金賞を受賞することとなった。

ぶどうの個性を生かしたワインをつくる

醸造では科学的な視点を重視しながら、品種の個性や勝沼という土地の個性を表現するナチュラルなワインづくりに取り組む彩奈氏。そのこだわりが垣間見えるのは、“脱、シュール・リー製法”だ。グレイスワインでは、甲州種の個性を生かすために、シュール・リー製法を行わない醸造に転換した。

シュール・リー製法は、多くのワイナリーが甲州種に採用している方法だ。一般的な白ワインでは、発酵後に澱(おり)を取り除くが、シュール・リー製法では澱を残したままワインを熟成させる。ワインに澱の風味やうま味が加わり、味に厚みが出るためだ。もともとは、フランス・ロワール地方でミュスカデ種に行われていた製法となる。

おすすめワイン

グレイス甲州

グレイスワインを代表する1本。甲州種独特のうま味があり、和食との相性の良さや日本らしさが感じられる。

2001年と2006年ヴィンテージは、ジャパン・ワイン・チャレンジで最優秀日本ワイン賞を受賞している。近年は海外での受賞も多く、Decanter World Wine Awardsでは2014年ヴィンテージが金賞を受賞。2015年と2016年ヴィンテージはプラチナ賞を受賞した(いずれもEU輸出ラベル)。

価格:オープン価格

グレイス ロゼ

自社畑の三澤農場で栽培したぶどうを100%使ったロゼワイン。鮮やかなピンク色のワインは、和食ともよく合う辛口。

2018年ヴィンテージは、メルローを中心に、カベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フラン、プティ・ヴェルドなどをブレンドしている。その年のぶどうの出来を見て、ブレンドや醸造を調整しているこだわりの1本だ。

価格:2700円

グレイス メルロ

三澤農場で収穫したメルローを中心に使用したワイン。ぶどう本来の風味を大切にし、穏やかな抽出によって丁寧に醸造している。新樽の使用を控えており、ぶどうのおいしさの中にふわりと香る樽香が心地よい。

2006年ヴィンテージは、ジャパン・ワイン・チャレンジで最優秀日本ワイン賞を受賞している。

価格:オープン価格

ワイナリーを楽しむ

●中央葡萄酒(グレイスワイン)
電話:0553-44-1230
住所:山梨県甲州市勝沼町等々力173
営業時間:9:00~16:30
アクセス:JR中央本線勝沼ぶどう郷駅から車で約10分
※あさや葡萄酒(麻屋葡萄酒)が向いにあり、徒歩10分圏内には、シャトー・メルシャンや白百合醸造(ロリアンワイン)など多数のワイナリーがある。

ワイナリーでの試飲システム

歴史を感じさせる建物の2階には、グレイスワインのほぼ全てのワインがテイスティングできるショップ兼テイスティングカウンターがある。

レジで購入したカードをサーバーに差し込み、飲みたいワインを選ぶシステムになっている。ワインの種類によって料金は異なり、1杯当たり200~500円ほど。カード料金は2000円(カード代500円+チャージ代1500円)で、1000円単位で追加のチャージができる。カードは次回来店した際も利用できるので、なくさないようにしよう。

テイスティングカウンターにはソムリエやスタッフがおり、ワイン、農場、醸造などについて話を聞きながらテイスティングできる。展示物を眺めたり、椅子に腰掛けてゆっくりとワインを味わえるので、思い思いの過ごし方ができる。テイスティングをして気に入ったワインは、その場で購入が可能だ。カードにチャージしたお金は、ワイン購入時にも使用できる。

不定期開催のテイスティングセミナー

グレイスワインでは、2種類のテイスティングセミナーを不定期で開催している。

■テイスティングセミナー
日本固有の甲州種に焦点を当て、甲州種を含む6種類のワインをテイスティングしながら、甲州ワインやぶどう栽培、ワインづくりについて学べる。

開催日:不定期
開催時間:10:30~11:30
所要時間:60分
定員:2~10人(開催日の3営業日前までに要予約)
参加費:3000円

■厳選ワインテイスティングセミナー
自社畑の三澤農場で丹念に栽培したぶどうを使用した、厳選ワイン6種を飲み比べできる。うち1本は、限定醸造の「キュヴェ三澤」。通常はテイスティングカウンターでも扱っていないワインを試飲する貴重な機会だ。

開催日:不定期
開催時間:10:30~12:00
所要時間:90分
定員:2~10人(開催日の3営業日前までに要予約)
参加費:5000円

両セミナーとも、開催日の確認や申し込みはこちらのページから行える。

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