コラム

若い世代のワインユーザーを増やすには? ――3つのキーワードで需要創造 ~事業方針から見えたサントリーの思い

サントリーワインインターナショナルは、2020年1月21日に「2020年事業方針説明会」を開催した。

国内市場でのワイン消費が停滞する中、販売数量ベースで対前年度102%という結果を出したサントリーだが、“若い世代にいかにしてワインを飲んでもらうか”を今後の課題として捉えているという。

20~40代のワイン購入者数が減少

インテージ「SRI(全国小売店パネル調査)」の調べによると、年代別ワイン購入者数は2016年に比べて20代~40代が著しく減少している。

1人当たりの購入量については、2016年と比べると、全体では102%と増加しているが、20代~40代では減少する結果となった。

20代~30代のワイン購入量が減っている理由について、サントリーワインインターナショナルの宮下敏代表取締役社長は「アルコールを飲む機会の減少もそうだが、気楽に飲める缶チューハイやハイボールなどのウイスキーに流れていることも大きい」とし、「50代以降の元気な方々に、よりワインを楽しんでもらうと同時に、若い世代のワインとの接点を増やすことで、将来のワインユーザーを増やしていくことが課題だ」と説明した。

若い世代のワイン需要をつくるキーワード

事業方針説明会では、若い世代のワイン需要をつくるキーワードとして、「泡」「飲み方提案」「容器容量」の3つが挙げられた。

キーワード1:「泡」

グループインタビューで年代別に「初めて飲んだワイン」を聞くと、30~40代では、初めて飲んだワインとして、スパークリングを挙げる人が目立った。

また、スパークリングワインの輸入通関推移は、直近8年間で1.5倍に増加している。炭酸飲料に対する好感度も若者は高く、スパークリング(泡)が若い世代とワインをつなぐキーになるのではないかと期待をしているという。

サントリーで取り扱う輸入スパークリングワインは、5カ国14ブランド。各ブランドの魅力を伝えていくつもりだ。

加えて、若者がワインに触れるきっかけとなる商品の開発も目指す。例として挙げられるのが、和かんきつを一搾りした和テイストのスパークリングワイン「雫音(しずね)」だ。2020年6月30日から夏季限定での販売が予定されている。

雫音は、珍しさから1度だけ手に取られる商品ではなく、新しいワインユーザーを取り込むための高品質な商品を目指している。質の良いかんきつにこだわっており、原料調達と合わせ、販売目標を策定中だという。

キーワード2:「飲み方提案」

酸化防止剤無添加シリーズの「氷と楽しむおいしいワイン。」では、夏に向けてワインに氷を入れる飲み方の提案をしている。普段はチューハイを飲んでいる若者たちにアピールすることと、夏場に落ちる傾向があるワイン需要を活性化し、ワインへの接点となる入り口を広げていくことが目的だ。

また、新規需要獲得を目指し、好調に推移している商品に「赤玉パンチ」がある。

世に出て今年で113年となる「赤玉」。その「赤玉」に炭酸とレモンを加えて飲みやすくしたのが、現在の「赤玉パンチ」だ。居酒屋メニューと相性の良いワインの飲み方として業務用で出したところ、若い人を中心に受け入れられた。2018年にはコンビニ限定で350ml缶を発売。2019年には、家で好きな濃さで飲める500ml紙パックタイプを発売している。2020年3月からは、スーパーなど幅広い店舗でも350ml缶を購入できるようになる。

キーワード3:「容器容量」

サントリーは、ボトル缶入りのスパークリングワイン「カルロ ロッシICE」シリーズや、250ml紙パックのイタリア産オーガニックワイン「タヴェルネッロ BIO ピッコロ」シリーズ(2020年3月3日発売)など、ワイン=750ml瓶という今までのイメージに捉われない商品を開発している。

国産カジュアルワインの拡大も

サントリーには、この10年間、常に前年の売上高を上回ってきた商品がある。「酸化防止剤無添加のおいしいワイン。」や「デリカメゾン」を主力ブランドとする国産カジュアルワインだ。

2019年度の販売量は400万ケースを超える規模となり、2009年度の販売量(約150万ケース)と比べて2.7倍となっている。また、インテージSRI調べによると、主力ブランドの「酸化防止剤無添加のおいしいワイン。」は、国産ワインの中で容量ベース売り上げNo.1を獲得した。

酸化防止剤無添加シリーズは、高ポリフェノールやカロリーオフといった健康志向を売りにした商品のほか、ストロングタイプや氷と楽しむワインなどがある。デリカメゾンについては、アルコール度数7%の低アルコール商品があり、2020年3月31日にフルーツ果汁入り「フルーティデリカメゾン」を新発売する。また、同年2月18日には、輸入ワインファンにもアピールする新商品「5(ファイブ)セレクトレゼルブ」を発売するなど、国産カジュアルワインのラインアップは幅広い。

ユーザーのニーズに合わせた自由な商品開発ができる国産カジュアルワインは、あらゆる層にアプローチでき、若い人に試してみたいと思ってもらえる商品もあるのではないかと期待しているそうだ。

「若い世代にワインに目を向けてもらうことは可能」

2019年4月1日には、若い世代を中心とした幅広い世代に向けてワインの魅力を発信する存在として、ソムリエの岩田渉氏(当時29歳)をサントリーワイン・ブランドアンバサダーに起用している。

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岩田渉氏

「ワインのおいしさや楽しさ、多様性を伝えることで、若い世代にワインに目を向けてもらうことは可能だ」と、宮下代表取締役社長は語る。

筆者自身もワイン購入量が減少しているとされる世代の1人だ。10年以上前には、海外でエンドユーザーに日本酒を販売する仕事をしていた。その際に、勉強の一環としてワインに触れるようになったが、私を含めてその時の同僚の多くは今でもワインを常飲している。若い世代にとってワインは敷居が高いと感じられ、その敷居を乗り越える機会が少ないのかもしれないが、一度触れてしまえば飽きることなくずっと楽しめるのがワインだといえるだろう。

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About the author /  鵜沢 シズカ
鵜沢 シズカ

J.S.A.ワインエキスパート。米フロリダ州で日本酒の販売に携わっている間に、浮気心で手を出したワインに魅了される。英語や販売・営業経験を活かしながら、ワインの魅力を伝えられたら幸せ