コラム

BIVB広報委員会会長ミシェル・バロー氏が語る、日本とブルゴーニュの今とこれから ~BIVBミニ記者会見①

ブルゴーニュワイン委員会(BIVB)は2022年7月13日、ブルゴーニュワイン試飲会の開催にあたり、BIVB広報委員会会長ミシェル・バロー氏による「未来を見据えて 動き出すブルゴーニュ」と題するミニ記者会見を開催した。

今回はその内容から、ブルゴーニュワインと日本との関係、そしてバロー氏が語った、今後注目したいブルゴーニュワインなどについて紹介する。

【ミシェル・バロー氏のプロフィール】

BIVB広報委員会会長のミシェル・バロー氏

ミシェル・バロー氏は、ブルゴーニュ南部にあるマコネ地区出身のワイン生産者だ。バロー家は長い歴史を持つワイン生産者の家系で、バロー氏自身も1989年から両親と共にワインづくりをスタート。2001年にはマコネ地区で圧倒的なシェアを誇るカーヴ・デ・ヴィニュロン・デ・テール・セクレット協同組合の取締役となり、2007年からは代表を務めている。2022年にはBIVB広報委員会会長に就任した。

簡単におさらい! ブルゴーニュとは

ブルゴーニュとは、ボルドーと共に長い歴史を持つフランスのワイン産地だ。ブレンドワインが多いボルドーとは異なり、基本的に1つのぶどう品種からワインがつくられている。そのため、畑による個性の違いがワインに反映されやすいという点も魅力の1つだ。ブルゴーニュのクリマは、2015年7月に「ブルゴーニュのブドウ畑のクリマ」として世界文化遺産に認定されている。クリマとは、ヴィンヤードのテロワールのこと。土壌や気候だけにとどまらず、文化や歴史も含まれている。

北はシャブリ地区とグラン・オーセロワ地区から、南はマコネ地区まで、南北250kmに延びている。ブルゴーニュワインの栽培面積は3万1000ha(フランス全土の4%)。AOC(Appellation d’Origine Controlee、原産地呼称)は格付けにより88に分かれており、長い歴史が生んだ多様性に富んだ地域だ。

フランスでは、“白ワインと言えばブルゴーニュ”という存在だ。フランス国内で消費される白ワインの45.6%をブルゴーニュワインが占めている。生産量でも、ブルゴーニュワインの60%を白ワインが占める。赤ワインは28%、クレマン(スパークリングワイン)が12%となっている。

ブルゴーニュワインについて、バロー氏は「非常にバラエティが豊かでクオリティが高い。この多様性により、ワイン初心者を含めた消費者の方々に幅広く喜んでもらえると思っている」と強調している。

日本とブルゴーニュの関係

2021年のブルゴーニュワインの販売量は、全体で2億1400万本。売上金額は前年比+28%の約23億2500万ユーロ(約3212億6850万円)となり、過去最高を記録した。

バロー氏は、クオリティが高まったこと、そして世界各国のあらゆる料理にマッチするワインであることが好調の理由だと説明している。

好調なブルゴーニュワインだが、実は売上金額の62%を輸出が占めている。それでは、日本とブルゴーニュワインの関係を見ていこう。

日本は売上第3位

ブルゴーニュワインの輸出先として、日本は輸出量で世界第5位、売上金額ではアメリカとイギリスに続く第3位であり、いずれもアジアトップだ。ブルゴーニュにとって日本は、大きなマーケットと言えるだろう。

日本に輸出されているブルゴーニュワイン

それでは日本には、どのようなブルゴーニュワインが輸出されているのだろうか。

日本に輸出されているのは、白ワインが55%、赤ワイン、ロゼが41%、残り4%がクレマン(スパークリングワイン)だ。日本のワイン消費量は赤ワインの方が白ワインよりも多いのだが、ブルゴーニュについては白ワインの方が好まれている。

そんなブルゴーニュの白ワインをけん引しているのが、シャブリワインだ。日本に輸出されるブルゴーニュ産の白ワインのうち、シャブリとプティ・シャブリが全体の45%、シャブリ・グランクリュとシャブリ・プレミエ・クリュが9%となっており、合わせて54%を占めている。

赤ワインは輸出量の41%だが、売上高の54%を占めている。そのうちの73%を占めているのが、地域名アペラシオン(地域名+ブルゴーニュ)だ。

今後注目したいブルゴーニュワイン

続いて、今回の記者会見でバロー氏が触れた、今後注目したいブルゴーニュワインを紹介する。

クレマンに注目!

「日本での伸びしろがあるのではないかと考えている」としたのが、クレマン(スパークリングワイン)だ。日本のワイン市場は、ビールや焼酎と比べるとまだまだ小さい。スパークリングワインは、ワインの裾野を広げる存在としても注目されている。

クレマンに使われている品種は、主にピノ・ノワールとシャルドネ。場合によっては、アリゴテやガメイも使われている。

未経験者はぜひ地域名アペラシオンのワインから

ブルゴーニュに存在する88のAOCは、三段階に格付けされている。トップはグラン・クリュ(1%)、続いて村名(コミュナル)アペラシオン(47%)、最後に地域名(レジョナル)アペラシオン(52%)だ。

バロー氏は、ブルゴーニュワイン未経験の人には、ぜひエントリーレベルのワインを試してほしいと説明する。

理由は2つある。1つは、エントリーレベルに位置付けられる地域名アペラシオンは、品質と価格のバランスに優れたワインであること。もう1つは、1人の栽培家が、グラン・クリュから地域名アペラシオンまで手掛けていることがあり、生産者やネゴシアンは、どのクラスのワインでも同じぐらい手をかけてワインをつくっているからだ。名の知れた生産者のこだわりを手軽な価格で味わえるのが、地域名アペラシオンのワインの魅力と言える。

「まずは、お手頃なブルゴーニュワインを手に取っていただき、人生を重ねるにつれて上のクラスにも挑戦してもらいたい」と、バロー氏は語っていた。

ブルゴーニュワインの価格は今後も上がるのか

2022年に入り、さまざまなものの価格が高騰している。もともと安価なイメージのないブルゴーニュワインも同様だ。生産者としても、乾きものと呼ばれるボトルやコルクなど全ての原材料が、10~20%上昇しているのを感じるという。その理由としてバロー氏は、新型コロナウイルス感染症の影響で原材料が不足しているところに起こったロシアによるウクライナ侵攻、そして社会的な要請や環境保護への取り組みによる生産コストの上昇、生産量の抑制を挙げた。

今後について、ブルゴーニュの生産者たちは、消費者の手の届かないワインにならないように、価格の安定を目指しているとの説明があった。なお、今シーズンについては、ぶどうの生育も順調であり、十分な収穫量が見込まれるとのことで、価格の安定が期待できそうだ。

この他に今回の記者会見では、ブルゴーニュの土地に深く根付いたワイン生産者としての目線でバロー氏が語る、これからの栽培技術や環境問題、社会の変化に適応したワインづくりについても詳しく話を伺うことができた。次回の記事で紹介する予定だ。

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About the author /  鵜沢 シズカ
鵜沢 シズカ

J.S.A.ワインエキスパート。米フロリダ州で日本酒の販売に携わっている間に、浮気心で手を出したワインに魅了される。英語や販売・営業経験を活かしながら、ワインの魅力を伝えられたら幸せ