コラム

メドックワイン マスタークラス2022:⑥メドックワインのテイスティング(後編)

メドックワイン委員会は2022年11月2日、八芳園(東京都港区)にて、「メドックワイン マスタークラス2022」を開催した。

講師を務めたのは、日本ソムリエ協会理事で、同協会認定ソムリエ・エクセレンスの米野真理子氏。米野氏から、メドックの歴史やテロワール、格付け、環境保護への取り組みなどについて解説があった。

最終回となる本記事では、村名AOC(Appellation d’Origine Controlee、原産地呼称)で、“4つの偉大な村”と呼ばれるマルゴー、サン・テステフ、ポイヤック、サン・ジュリアンのワインを、米野氏のテイスティングコメントと共に紹介する。

同銘柄の2つのヴィンテージを飲み比べ

今回紹介する8本も、メドックの各アペラシオンが選んだ、同じ銘柄の2019年、2010年代のワインだ。

マルゴー

マルゴーのワインは、クリュ・ブルジョワ・シュペリウールに属する「Château DEYREM VALENTIN(シャトー・デラム・ヴァランタン)」だ。

2019年はカベルネ・ソーヴィニヨンを55%、メルローを43%、プティ・ヴェルドを2%、2016年はカベルネ・ソーヴィニヨンを50%、メルローを49%、プティ・ヴェルドを1%使用している。

<テイスティングコメント>
●2019
もやがかかっていて、開くのに時間がかかりそう。
若いキイチゴ、アニス、杉、コーヒー豆の香り。
アタックは熟度のある果実が訴えかけてくる。
タンニンと酸はしなやかでデリケート。
ラストまでスムースに続く、優しいテクスチャのワイン。

キノコのバターソテーや白焼きしたうなぎにさんしょうをかけて。
このワインは肉々しい料理でなくても良さそう。

●2016
赤紫色で、熟成の可能性がある。
ブラックカラントなど黒系果実、甘いリキュール、チェリー、スイートペッパーを感じる。
2019年ヴィンテージよりも甘みがある。

同じうなぎでも、さんしょうをかけたタレのうなぎに合う。

サン・テステフ

サン・テステフからは、「Château HAUT-COTEAU(シャトー・オー・コトー)」が提供された。ヴィンテージは2019年、2017年。シャトー・オー・コトーは、家族経営のワイナリーだ。

2019年ヴィンテージは、カベルネ・ソーヴィニヨンを50%、メルローを40%、カベルネ・フラン8%、プティ・ヴェルドを2%使用している。2017年はカベルネ・ソーヴィニヨン50%で、メルロー40%、カベルネ・フラン10%となっている。

<テイスティングコメント>
●2019
溶け込んでいないピンク色に紫のニュアンスがあり、まだ開いていない感じ。
スワリングするとレッドカラントやブラックペッパー、鉱物など硬い印象を受ける。
アタックは力強い。タンニンがまとわり付くのはカベルネ・フランの影響か。
飲み頃はもう少し延ばしたい。

血のイメージがあるので、赤身肉が合う。シカのハム、カルパッチョなど。

●2017
霜の害がひどかった年。残ったぶどうは、量は少ないが良質だった。
杉やミントなど、硬さが感じられる。陰にカシス、青野菜のイメージも。
はっきりした口当たりと果実味。しっかりした酸、骨格もある。緊張感のあるワイン。

2019年ヴィンテージ同様、ジビエが合いそう。こちらはシカのハムではなく、ローストが良い。

ポイヤック

ポイヤックのワインは、協同組合(Cave Cooperative)がつくる「LA ROSE PAUILLAC(ラ・ローズ・ポイヤック)」だ。ヴィンテージは2019年と2014年。2014年はカベルネ・ソーヴィニヨンを50%、メルローを40%、プティ・ヴェルドを10%使用している。

<テイスティングコメント>
●2019
全体的に濃い紫で、凝縮している。
カシス、アニス、丁子(チョウジ)の香り。
肉っぽい動物的な印象とともに醤油蔵、薫製のような複雑さがある。
アタックは思ったより果実味があってスムース。
酸、タンニンの後で力強さがやってくる。
今飲んでも良いが、もう少し後で飲むのも良さそう。別の表情が出てくるかも。

カモのスモークやカモ肉にカシスのソースをかけた料理と合わせたい。

●2014
注いだワインのふちに透け感あり。飲み頃を迎えている。
黒系果実のほか、黒こしょう、ナツメグなどスパイスを感じる。
2019年ヴィンテージより酸は感じない。タンニンが豊富で、かみ応えがある感じ。

このワインを飲むときは、ブラックペッパーとソルトで味付けした赤身ステーキ肉をかみしめるようにして食べたい。

サン・ジュリアン

サン・ジュリアンのテイスティングワインは、グラン・クリュ(1855年の格付け)第4級シャトーの1つとなる「Château BRANAIRE DUCRU(シャトー・ブラネール・デュクリュ)」の2019年、2012年ヴィンテージだ。2019年はカベルネ・ソーヴィニヨンを56%、メルローを35%、カベルネ・フランを5%、プティ・ヴェルドを4%使用している。

<テイスティングコメント>
●2019
全体が黒紫で、まだ若い印象。
黒く、熟していない硬いベリーや炒った豆、八角に鉄分、肉系のイメージがある。
飲んでみると厚みのある果実味が表れる。

濃く煮詰めたキノコや赤ワインを使った肉料理と合わせたい。

●2012
透明感あるガーネット系の色で、グラデーションが出ている。
まだ中心部に濃さが残っている。
花、クローブ(チョウジ)、漢方薬、なめし皮、土、タバコの香りも。
アタックはブラックチェリーの果実感。

このワイン単体で飲みたい感じ。もし開けたてで飲むなら、鉄分感に合わせてローストビーフなどが良さそう。

生産者たちからのメッセージ

テイスティングの際は、会場にメドックの生産者たちから届いたビデオメッセージが流れた。多くの生産者は、ぶどうの収穫を終えて数日経ったタイミングだったようで、充実した表情で「今年も良いぶどうが採れた」と話してくれた。

【メドックワイン マスタークラス2022】
①主要ワイン産地メドックの歴史と多様なテロワール
②主要ワイン産地メドック3つの公式格付け
③メドック8つのアペラシオンから地域名AOCと西側の村名AOCを紹介
④メドック8つのアペラシオンから“4つの偉大な村”を紹介
⑤メドックワインのテイスティング(前編)

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