コラム

シャトー・カントメルル|メドック格付け第3級クラスの実力を持つ、隠れた名シャトー ~知っておきたいボルドーのつくり手

ワインの銘醸地として知られるフランスのボルドー地方には、伝統的なシャトーが数多くある。中でもシャトー・カントメルル(Chateau Cantemerle)は、さまざまな困難を乗り越えてきた、歴史あるシャトーだ。

苦境にも負けず、ぶどう畑や醸造設備の整備を進めつつ、伝統を守った丁寧で地道なワインづくりを続けた結果、第5級という格付け以上のワインを産出するワイナリーとして、評論家から高く評価されている。

シャトー・カントメルルの歴史

シャトー・カントメルルは、格付けで有名なボルドーメドック地区のAOC(Appellation d’Origine Controlee、原産地呼称)オー・メドックに位置する。ワインをつくっているとは思えない、優雅な建物と広大な庭園を擁するのが特徴だ。庭園には多種多様な自然植物と動物が生息し、さまざまな小鳥の声が聞こえてくる。「さえずるクロツグミ」を意味するシャトー名にふさわしい環境だと言えよう。

シャトーの歴史は中世までさかのぼる。当時、シャトー・カントメルルは要塞の1つであり、現在の場所からおよそ1km離れた川岸にあった。そして、カントメルル領主が10分の1の税金をワイン1樽で支払っていた記録が残っており、1354年頃には既に一帯でワインがつくられていたと推測されている。

その後、シャトー・カントメルルの所有者は次々と入れ替わるが、1579年にヴィルヌーブ・デュルフォール家が購入。1643年には、現在の場所がヴィルヌーブ・デュルフォール家の手に渡った。現在、シャトー・カントメルルがある地域(ソーヴ)を、当時の当主兄弟が治めたことが始まりとされている。その頃から、ぶどう栽培とワインづくりに本格的に参入し始めたのである。

以後、シャトー・カントメルルは、1892年まで同家が所有し続けることとなる。

“格付け対象外”から一転、ボルドーを代表するワインの1つに

シャトー・カントメルルのワインがフランスで確固たる地位を築いたのは、1867年のことだ。フランスの力を世に知らしめるため、ナポレオン3世が開いたパリ万博がきっかけだった。

当時のボルドーでは、万博開催に合わせ、ボルドー商工会議所を中心にワインの格付けを行うこととなった。そのためボルドー商工会議所は、ボルドーのワイン仲買人組合にワインの選出を依頼。赤ワイン68本を5階級で、白ワイン21本を3階級で分類したリストを作成した。

しかし、このリストにシャトー・カントメルルのワインは1本も入っていなかった。なぜなら、この分類は当時のワインの販売価格を参考にしていたが、仲買人を介さずに直接、フランス国内やオランダでワインの取引を行っていたシャトー・カントメルルの販売価格は、組合に把握されていなかったためだ。

しかし、オランダでの評価の高さや、販売価格が第5級に選出されたワインより高いことなどを理由に異議を申し立て、パリ万博中にメドック格付け第5級に追加認定された。この追加認定によって、シャトー・カントメルルは、品質が保証されたボルドーワインとして認知されることとなる。そしてパリ万博では、銀メダルも獲得している。

ボルドーのワイン格付けに変更が加えられたのは、制定当初から今日まで、このシャトー・カントメルルの追加認定と、1973年のシャトー・ムートン・ロートシルトの第1級への格上げ認定の2つしかない。

苦難を経て優良シャトーに返り咲く

しかしその後、シャトー・カントメルルには試練が続く。フィロキセラやベト病といった疫病に見舞われ、ワインの生産量が激減。ついには、1892年にデュボス家に売却されることとなった。

以降、1981年まではデュボス家が所有し、ワインの生産を続けた。しかし1930年から始まった戦争や経済危機により、ぶどうの樹が激減。ぶどう畑は20haにまで落ち込んでいた。そして1981年、保険会社のSMAグループに買収された。

SMAグループはシャトーを買収後、設備の改修とぶどう栽培地の植え替えを実施。そして、丁寧なワインづくりを実行する努力を続けた結果、現在では、格付け以上の“第3級シャトーに匹敵する実力”と評価されるほど、品質の高いワインを安定して生産するシャトーへと成長した。

シャトー・カントメルルのワインづくり

1981年にシャトー・カントメルルを買収したSMAグループは、低迷していたワインづくりを再生すべく、さまざまな取り組みを開始する。

ぶどう栽培地と醸造設備を整備

まず、栽培地を整備し、長年休閑地となっていた33haの畑にぶどうの樹を植樹。売却前に20haまで落ち込んでいたぶどう畑は、1990年代には67haまで増加した。

現在、シャトー・カントメルルのぶどう畑は90haほどあり、メドックの中でも最良の栽培地と言われている。メドックの入り口付近一帯に広がる畑は、栄養分の少ないシリカ砂利土壌だ。そのため、ぶどうの樹は土壌深くに根をはり、高濃度の果実を生み出す。また、このシリカ砂利土壌は、昼間は太陽光を反射し、夜間は昼間に吸収した熱を保持するため、ぶどうの成熟が進みやすい。

さらに、シャトー・カントメルルでは、1haあたり8300本と高い植樹密度で栽培している。樹同士の生存競争により、ぶどうの生存能力を高めているのだ。作付けの割合は、カベルネ・ソーヴィ二ヨンが68%、メルローが22%、カベルネ・フランが5%、プティ・ヴェルドが5%となっている。

醸造設備も1990年代に改装している。栽培地の整備によって今後増加するぶどうの収穫量に対応でき、またクリーンで雑味のないワインをつくるため、醸造設備を刷新。セラーの新設に加え、最新設備を完備したテイスティングルームも新設した。

栽培地の整備と醸造所の改修を行ったシャトー・カントメルルのぶどうとワインは、今後さらに品質が向上すると期待されている。

ぶどう栽培地と醸造設備を整備

シャトー・カントメルルは、伝統を大切にした丁寧なワインづくりに取り組んでいる。まず、ぶどうは全て手摘みで収穫。そのまま畑で移動式の選果台に乗せ、1回目の選果を行う。

選果後、醸造所でぶどうを除梗機にかけて選果台に移動させ、再び選果する。果実の味わいを邪魔する茎片や緑色の果実、葉などを手作業で取り除くことで、クリーンな味わいになり、ワインの品質が高まるという。

選果したぶどうを破砕機にかけ、タンクへと搬入する。約12℃で低温マセレーションをした後、酵母を添加して24~30℃でおよそ6~8日間、アルコール発酵させる。それから、マロラクティック発酵、熟成を行う。

シャトー・カントメルルの樽熟成の期間は、他のシャトーより短いと言われている。その理由は、ワインを樽に長く入れておくと、乾燥したような仕上がりになってしまうからだという。樽熟成はやや短めにして、残りはステンレスタンクで熟成するのが、シャトー・カントメルル流だ。

このように、ぶどうの選別から樽熟成期間に至るまで、地道で丁寧な作業を行ってワインは完成している。同レベルの品質を誇る他のシャトーに比べて華やかさや知名度に欠けるものの、格付け以上の品質のワインを産するとして、ワイン評論家からは高い評価を得ている。

おすすめワイン3選

格付けこそ第5級だが、今や第3級に匹敵する実力を持つと評される、シャトー・カントメルル。確かなワインづくりで、いつでも高品質の味わいを楽しめる。

シャトー・カントメルル 2019

シャトーの名前を冠した、ファーストラベルワイン。チェリーやオークの香りを持ち、滑らかなタンニンと果実味のバランスが良い。

ぶどう品種:カベルネ・ソーヴィニヨン68%、メルロー23%、カベルネ・フラン5%、プティ・ヴェルド4%
味わい:赤・フルボディ
参考小売価格:6930円(税込)

レ・ザレ・ド・カントメルル 2016

シャトー・カントメルルのセカンドラベルワイン。ブラックベリーやカシスといった黒い果実の香りが豊かに感じられる。軽やかなタンニンの若くフレッシュな味わいは、スイーツとの相性も良い。

ぶどう品種:カベルネ・ソーヴィニヨン78%、メルロー14%、カベルネ・フラン8%
味わい:赤・フルボディ
参考小売価格:3960円(税込)

オランジェリー・ド・カントメルル 2017

「レ・ザレ・ド・カントメルル」としてつくられるセカンドワインの2017年ヴィンテージ限定でつくった1本。赤い果実の香り、繊細なタンニンを感じられる、まろやかな味わいが楽しめる。

ぶどう品種:カベルネ・ソーヴィニヨン77%、メルロー12%、カベルネ・フラン11%
味わい:赤・ミディアムボディ
参考小売価格:3300円(税込)

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