メドックワイン委員会は2023年9月26日、ホテル日航大阪(大阪市中央区)で、メドックの比類なきテロワールと多様性を改めて発見するマスタークラスを開催した。
今回は、AOCサン・ジュリアンの解説とシャトー・ベイシュヴェル(Château Beychevelle)のセカンドラベルであるアミラル・ド・べイシュヴェル(Amiral de Beychevelle)の2020・2014ヴィンテージをテイスティングしたパートを紹介する。
講師を務めたのは、ホテルニューオータニ大阪のフランス料理店「SAKURA」でソムリエとして活躍する田中叡歩(あきほ)氏だ。
AOCサン・ジュリアンとは
AOCサン・ジュリアンは、メドックの東側、ジロンド川につながるガロンヌ川の川沿いに広がる4つの村名AOC(Appellation d’Origine Controlee、原産地管理呼称)の1つだ。11のグラン・クリュ・クラッセ(1855年の格付け)シャトーが、生産量の90%を占めている。
ガロンヌ川の砂利に覆われた均質のテロワールで、カベルネ・ソーヴィニヨンが栽培面積の61%を占める。ボディがあり、味わい深く、繊細な香りを持つ、とても豊かなワインが生み出される。
シャトー・ベイシュヴェルのワイン
今回のマスタークラスでは、シャトー・ベイシュヴェルのセカンドラベルである、アミラル・ド・べイシュヴェルの2020年と2003年の2つのヴィンテージをテイスティングした。
シャトー・ベイシュヴェルとは
シャトー・ベイシュヴェルは、1989年から日本のサントリーが経営に参画しているシャトーだ。2011年からは、ボルドーのピエール・カステル一族とサントリーが設立した合弁会社のグラン・ミレジム・ド・フランスが所有している。
セカンドワインは、カベルネ・ソーヴィニヨンとメルローをベースにしたワインで、4~5年で楽しめる。
アミラル・ド・べイシュヴェル2020/2014
アミラル・ド・べイシュヴェルは、格付け第4級シャトーのシャトー・ベイシュヴェルが手掛けるセカンドワイン。ファーストワインの選別に落ちた樽のワインを使っているのではなく、平均樹齢が35年のセカンドワイン用の畑で栽培されたぶどうを使用してつくられている。
品種構成は、2020年がカベルネ・ソーヴィニヨン54%、メルロー42%、プティ・ヴェルド3%、カベルネ・フラン1%。2014年がカベルネ・ソーヴィニヨン57%、メルロー43%だ。
醸造長のゴーチェ・ポワント氏は、「2020年はとてもよい品質。わずかに熟成した2014年は丸みがあり、豊かなヴィンテージ」とコメントした。
2014ヴィンテージについて田中氏は、「どちらかというと暑いヴィンテージ。最終的に熟成向きのワインになることが多かった。晩夏だったので熟成期間が長くなり、高品質なぶどうを収穫できたシャトーが多かった」と説明している。
テイスティングコメントは、田中氏によるもの。
●2020ヴィンテージのテイスティングコメント
黒と紫の強い色調が若さを感じる。黒系のスミレの香りがあり、フルーティーかつフローラルで華やかな印象。突出しているタンニンは、ウルトラシルキーと呼べる、核に力強さを感じる。アルコールのバランスが良く、若くてしっかりした印象がありながらも、荒々しさがない。シャトー・ベイシュヴェルの華やかさを手軽に楽しめるワイン。
●2014ヴィンテージのテイスティングコメント
紫のトーンがありつつ、落ち着いた色合い。これから5年は飲みごろが続きそうだ。気品ある花の香りが残りつつ、そのボリュームが下がって砕いたようなスパイスの香りが強くなり、アクセントに変化している。全体的に突出した香りがあるわけではないが、花の香りが主体だった2020年と比べてスパイスが主体になっている。ファーストワインに比べると複雑性はそれほどないが、酒質が強すぎないので、いろいろな料理に合わせやすい。
今回は、ガロンヌ川の川沿いに広がる4つの村名AOCの1つ、AOCサン・ジュリアンを紹介した。次回は、サン・ジュリアンの北にあるAOCポイヤックのパートをご紹介する。
【関連記事】「メドックワインマスタークラス 2023」レポート
①メドックの比類なきテロワールを田中叡歩ソムリエが解説! AOC・3つの格付け・段丘・土壌・品種を知ろう
②AOCメドックとは? シャトー・カステラの2つのヴィンテージと共に解説
③AOCオー・メドックとは? シャトー・ミカレの2つのヴィンテージと共に解説
④AOCムーリスとは? シャトー・モーカイヨーの2つのヴィンテージと共に解説
⑤AOCリストラックとは? シャトー・カプデの2つのヴィンテージと共に解説
⑥AOCマルゴーとは? シャトー・プジェの2つのヴィンテージと共に解説