南アフリカの国内外で高い評価を受けるワイナリー、マリヌー(Mullineux)。2023年11月28日、創業者の1人であるクリス・マリヌー氏が来日し、輸入元のモトックス(Mottox)主催でテイスティングセミナーを開催した。
今回はマリヌーのワインの中から、フラッグシップワイン「シグネチャー(マリヌー)」シリーズについて紹介する。
「マリヌー」シリーズの3本
ワイナリーのフラッグシップワインとして、その名を冠するシリーズ。シュナン・ブランとシラー、甘口の3種がある。それぞれの品種や土壌の説明は、レポート②で解説しているので、併せて参考にしてほしい。
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マリヌー オールド・ヴァインズ ホワイト 2021
複数の品種をブレンドするホワイトブレンドは、スワートランドのクラシックなスタイルで、どのワイナリーも提供している。マリヌーでは、毎年シュナン・ブランを60~70%使用して、複雑さを出すブレンドをしている。南アフリカで古くから栽培され、一部がグリ化した、南アフリカの象徴的品種セミヨン・グリも使用する。
タイプ:白・辛口
品種:シュナン・ブラン62%、クレレット・ブランシュ10%、ヴィオニエ9%、グルナッシュ・ブラン7%、セミヨン・グリ6%、ヴェルデーリョ6%
土壌:シスト、鉄の混じった土壌
評価:南アフリカのワイン評価誌『プラッターズ・ワインガイド(Platter’s Wine Guide)』95点
希望小売価格:4250円(税別)
【クリス・マリヌー氏のコメント】
複雑さや何層にも重なる香りと味わいを生み出す、スワートランドの特徴的なブレンド。旧樽で発酵し、大きな樽の中で熟成させる。木樽の要素を付けないように醸造している。アルコールや果実味、酸など全ての要素のバランスが良く、いろいろなタイプの料理に合う。シーフードやポーク、煮たものでも焼いたものでも良い。
テクスチャーのバランスは、スワートランドのテロワールによるもの。暖かいところなので、細さや軽さのないリッチなワインが出来るが、そこにフィネスと繊細さを共存させている。
マリヌー シラー 2020
7つの畑、3つの土壌(シスト、風化した花崗岩、鉄の豊富な石を含む土壌)のシラーを使用。80%を全房で破砕後、天然酵母で4週間発酵させる。酸をまろやかにするマロラクティック発酵(MLF)をした後で、フレンチオーク樽の旧樽で11カ月、ステンレスタンクで11カ月熟成させている。
タイプ:赤・フルボディ
品種:シラー100%
土壌:シスト、風化した花崗岩、鉄の豊富な石を含む土壌
評価:『プラッターズ・ワインガイド』95点
希望小売価格:5150円(税別)
【クリス・マリヌー氏のコメント】
全く違う要素を持つ土壌のワインを混ぜることで、スワートランド全体を表現している。華やかな香りに加え、黒と赤い果実があるのもスワートランドの特徴。細やかでチャーキーというユニークなタンニンも、スワートランドの特徴だ。
マリヌー ストロー・ワイン 2022
乾燥しているので貴腐菌が付かず、暑すぎるためアイスワインもつくれないスワートランドでたどり着いたのが、陰干ししたぶどうを使用する甘口ワインだ。
白ワインと同じタイミングで収穫したシュナン・ブランを1カ月陰干して水分を蒸発させ、糖度と酸を凝縮する。糖分の濃度が倍になり、酸度も倍になる。強い糖度と酸度を同時に持つ甘口ワインだが、水分を飛ばすので、5hlしかつくれない。今回紹介されたワインの中では、日本での流通が非常に限定的なワインの1つだ。
タイプ:白・極甘口
品種:シュナン・ブラン100%
土壌:シスト、花崗岩土壌
希望小売価格:6550円(税別)/375ml
【クリス・マリヌー氏のコメント】
ワイナリー設立時からつくりたかった、甘口ワイン。南アフリカを代表するような甘口を目指して、たどり着いたワインだ。
陰干しの後、2日間かけて優しく果汁を搾る。9カ月かけて自然発酵する間に酸化しながら熟成するので、ドライフルーツやマーマレードのアロマ、複雑さが加わっていく。強いパワーと凝縮感のある、繊細なタイプの甘口ワイン。フルーツを使ったデザート、ナッツ、チーズによく合うが、チョコや甘すぎるデザートにはあまり合わない。
マリヌーの3つのシリーズの中から、今回はフラッグシップである「シグネチャー(マリヌー)」のワインを紹介した。次回は、トップキュヴェであり、流通が限定的な「シングルテロワール」のワインを紹介する。
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