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今回から、イタリア・キャンティの名門ワイナリーを紹介するシリーズを始めていきたい。第1回目は、キャンティ・クラシコの品質の高さを世に知らしめ、キャンティ・クラシコの地位を高めた、イタリアを代表するワイナリー「カステッロ・ディ・アマ」について、ご紹介していこう。
カステッロ・ディ・アマのエピソード
キャンティ・クラシコの品質向上に努め、その素晴らしさを世に証明したカステッロ・ディ・アマ。カステッロ・ディ・アマのオーナー兼醸造家であるマルコ・パランティ氏は、2006年から2012年の間、キャンティ・クラシコ協会の会長を務めるなどイタリアを代表する偉大な生産者と評されている。
1996年にキャンティD.O.C.Gから独立し、新たなD.O.C.Gとして認められたキャンティ・クラシコ。しかし、独立前の1980~1990年代、キャンティD.O.C.Gの一部であったキャンティ・クラシコのイメージは、良いものではなかった。大量に出回っている質の低いキャンティ同様に「早く飲める安ワイン」というイメージがついて回ったのだ。そこで、マルコ氏は「5年経っても美味しく飲める=熟成するキャンティ・クラシコをつくる」ことを目標に、フランスのブルゴーニュ地方のようなクリュごとに収穫し醸造する方法を導入。さらに、収量を通常のおよそ半分に制限した。その結果、ワインの品質が劇的に向上。リリースしたキャンティ・クラシコ「ベッラヴィスタ」と「カズッチャ」は世界的に高い評価を獲得し、カステッロ・ディ・アマは、キャンティ・クラシコの地位を高め、イタリアが誇る生産者となった。
マルコ氏は2003年にイタリアで最も権威のある「ガンベロ・ロッソ」誌のワインメーカー・オブ・ザイヤーを受賞している。
カステッロ・ディ・アマの歴史
カステッロ・ディ・アマが所有する土地は、昔から良いワインができる場所として名をはせていた。1700年代にトスカーナ大公レオポルド2世が「アマという畑は、キャンティエリアで最も素晴らしいワインが出来る場所」とした記述も残っている。
1974~1975年頃、その土地に住んでいた4家族がワインづくりを始めたのが、カステッロ・ディ・アマの前身となっている。現在は、その4家族の2代目であるロレンツァ・セバスティ女史と結婚したマルコ・パランティ氏がオーナーとなりカステッロ・ディ・アマを率いている。
前述した通り、カステッロ・ディ・アマは、イタリアが誇るキャンティ・クラシコのつくり手だが、メルローでも高い評価を受けている。1985年にメルロー100%でつくった「ラッパリータ」を発表すると、すぐに「ワインスペクテーター」誌や「ワインアドヴォケイト」誌で高得点を獲得。メルローワインが集まるブラインドテイスティングでは、世界最高峰のメルローと評される「ペトリュス」より高い評価を受けた。その結果スーパー・トスカンとしても名を広めた。
カステッロ・ディ・アマのワインづくり
テロワールを大切にしたワインづくり
古くから良いぶどうができる土地として知られたアマ。そこでぶどうを栽培しワインを醸造できることをカステッロ・ディ・アマは誇りにしている。そのため、アマが持つテロワールを表現したワインづくりを大切にしている。ワインづくりには「ワインをつくる技術は良く知らなければならないが、良いワインをつくる為には技術が勝ってはいけない」という言葉があるという。この言葉と、オーナーであるマルコ氏の「ワインの後ろに自分がいて、テロワール、ぶどう、気候を表現していきたい」という思いを体現するように、カステッロ・ディ・アマでは、ぶどう畑の区画を見直し、その区画に適した品種を栽培するなどして、テロワールを反映した品質の高いぶどうをつくる努力をしている。
「カステッロ・ディ・アマのキャンティ・クラシコ」をつくる
キャンティ・クラシコの地位を向上させたカステッロ・ディ・アマだが、キャンティ・クラシコの名に甘えることなく、カステッロ・ディ・アマというブランドを確立することが大事だと考えている。そのため、「キャンティ・クラシコ」のワインをつくるのではなく、「カステッロ・ディ・アマ」のワインをつくるのだと、オーナーのマルコ氏は語っている。
ただ、キャンティ・クラシコへの思いは非常に強い。メルロー100%でつくった「ラッパリータ」が高評価を受けた時、メルローのつくり手ではなくキャンティ・クラシコのつくり手という自負があったため、嬉しさと同時に「これは少し困ったことになった」と思った。
彼は「カステッロ・ディ・アマのキャンティ・クラシコ」をつくることを第一に考えており、キャンティ・クラシコの生産者として、キャンティ・クラシコをラッパリータが受けたレベルまで上げなければならないと考えたという。
カステッロ・ディ・アマのおすすめワイン
カステッロ・ディ・アマ・キャンティ・クラシコ・リゼルヴァ
ワイナリーの名を冠したフラッグシップ・ワイン。より良いキャンティ・クラシコをつくり出すことに情熱を注ぐカステッロ・ディ・アマのこだわりと理想が詰め込まれていると評される。
ラッパリータ
標高490mにある畑で栽培されているメルローだけを使用してつくられる。栽培地は僅か3.84ha程。キャンティ・クラシコ地区を表現したメルローと評され、しっかりとした酸があり、非常に上品で唯一無二の味わいを持つ。
キャンティ・クラシコ ヴィニェート・ベラヴィスタ
世界的に優れた畑である「ベラヴィスタ」で栽培されたぶどうだけを使用してつくる単一畑シリーズ。カステッロ・ディ・アマが所有する畑の中で、特に歴史が古い区画にあるベラヴィスタ。そこで栽培されているサンジョヴェーゼ種とマルヴァジア・ネラ種をブレンドしてつくられる。各ヴィンテージ5000~7000本しかつくられない、希少ワイン。
キャンティ・クラシコ・グラン・セレツィオーネ・ヴィニェート・ラ・カズッチャ
アマ キャンティ・クラシコ
フラッグシップ・ワインであるリゼルヴァと同じ畑で栽培されている樹齢の若い樹から収穫したぶどうを使用している。サンジョヴェーゼ種を主体にメルローも使用。マロラクティック発酵した後、10カ月の樽熟成を経てリリースされる。