コラム

バビッチ・ワインズ|3つの産地から魅力あるワインを生み出す家族経営のワイナリー ~今知っておきたいニュージーランドのワイナリー

ワインの新興国の中でも、特に新しい産地であるニュージーランド。栽培や醸造に先進的な技術を取り入れたワインづくりで、ワインファンからの信頼や人気を集めている。

今回はそんなニュージーランドを代表するワイナリーの中から、バビッチ・ワインズ(Babich Wines)を紹介する。

バビッチ・ワインズとは

2016年で記念すべき創立100周年を迎えたバビッチ・ワインズは、ニュージーランドのワイン産業を初期からリードしてきた、同国で最も有名な家族経営ワイナリーの1つだ。

バビッチ・ワインズの特徴

1916年、クロアチア系移民のジョシップ・バビッチ氏が、北島のオークランドに設立したバビッチ・ワインズ。オークランド近郊は、クロアチアからの移民によって20世紀初めにワインづくりが始まった地域だ。他にも、クロアチア系移民によるワイナリーには、ノビロ(Nobilo)、ヴィラ・マリア(Villa Maria)、モンタナ(Montana、現ペルノ・リカール)、クメウ・リヴァー(Kumeu River)などがある。

現在、ワイナリーを支えているのは、創業者のジョシップ氏の息子であるピーター氏とジョー氏だ。2人がエグゼクティブ・ディレクターを務めており、チーフ・エグゼクティブ・ディレクターをジョシップ氏の孫にあたるデヴィッド・バビッチ氏が、プリンシパルをもう1人の孫であるアンドレ・バビッチ氏が務めている。なお、ピーター氏は1989年に、ワイン産業に残した功績により大英帝国勲章(MBE)のメンバーに。ジョー氏も、2015年にニュージーランド・メリット勲章のオフィサー(ONZM)を受章している。

3世代にわたって革新や経験を積み重ね、現在ではニュージーランド内の3つのワイン産地にぶどう畑を展開。それぞれの土地の魅力が感じられるワインづくりで、ワインファンからの信頼を得ている。

100年の歴史

創業の1916年は、最初のワインをリリースした年だ。実はその前から、バビッチ・ワインズの歴史は始まっている。

創業の地となる西オークランドのヘンダーソン・バレーに、ジョシップ氏が兄弟とともに土地を購入したのは1911年のこと。1912年には、カイキノ・スワンプのゴム畑に最初のぶどうの樹を植えている。1919年になるとジョシップ氏は、兄弟とともにヘンダーソン・バレーの新たな区画に移り住んだ。そこは今でもバビッチ・ワインズの拠点となっている。西オークランドのヴィンヤードは、1950年代初頭に大きく拡張し、60年代初頭にはワイナリーを拡大してテーブルワインを中心に生産していた。

そして1980年、バビッチ・ワインズのワインが国際市場にデビューを果たした。最初の輸出先となったのは、ヨーロッパだ。1981ヴィンテージの「ピノ・ノワール」が、ニュージーランドの国際コンクール「シドニー・ロイヤル・イースターショー(Sydney Royal Easter Show)」で金賞を受賞。バビッチのワインは、輸出開始直後から高い評価を受けることとなったのである。

息子たちとここまでワイナリーを大きくしたジョシップ氏は、1983年にこの世を去ったが、バビッチ・ワインズの勢いは衰えなかった。1984年には、同じく北島のワイン産地であるホークス・ベイのギムレット・グラヴェルズでのワインづくりに着手。1991年には、初めてマールボロの「ソーヴィニヨン・ブラン」をリリースした。以降、マールボロでのワインづくりを拡大し、2013年にはマールボロに新しいワイナリーを建設した。

2000年になると、輸出ワインの売り上げが国内の売り上げを超えるまでに。2012年には、『ドリンクス・インターナショナル(Drinks International)』の「世界で最も賞賛されるブランドトップ50」に選出。2013年に「チャイナワイン&スピリッツアワードベストバリュー(China Wine & Spirits Awards)」において「ニュージーランドワインプロデューサー・オブ・ザ・イヤー」、2018年に「ベルリン・インターナショナル・ワイン・コンペティション(Berlin International Wine Competition)」にて「ニュージーランド・ワイナリー・オブ・ザ・イヤー」を受賞している。

バビッチ・ワインズのヴィンヤード

バビッチ・ワインズでは、マールボロ、ホークス・ベイ、西オークランドという、ニュージーランドの3つのワイン産地に自社畑を所有している。

マールボロ

マールボロは南島の最北端に位置しており、ソーヴィニヨン・ブランで有名なニュージーランド最大のワイン産地だ。冷涼な気候と長い日照時間、少ない降水量、水はけの良い土壌など、ワイン用ぶどうの栽培に適する条件に恵まれている。

バビッチ・ワインズが保有する自社畑の中では最も規模が大きく、自社畑は7つ、合計で480.9haにもなる。ソーヴィニヨン・ブランの他に、ピノ・ノワールやピノ・グリ、リースリングなどを栽培。マールボロで収穫したぶどうは全て、6000tのキャパシティがあるワイナリーで醸造している。

ホークス・ベイ

マールボロに次ぐワイン産地であり、北島最大のワイン産地。冷涼な気候だが日差しに恵まれており、ぶどうは時間をかけて成熟していく。

バビッチ・ワインズは、ホークス・ベイのギムレット・グラヴェルズ地区で1984年からワインづくりをスタートさせており、現在では5つの自社畑(合計79.0ha)がある。シャルドネやソーヴィニヨン・ブラン、メルロー、シラーズ、ヴィオニエ、ゲヴュルツトラミネールなどを栽培している。

1996年に創業80周年を記念してリリースした「The Patriarch」は、ホークス・ベイ産の赤ワイン用品種を使用。ボルドースタイルのブレンドワインで、バビッチ・ワインズのフラッグシップワインだ。また、1985年から続く「Irongate Chardonnay」は、「ニュージーランド産シャルドネの頂点」とも呼ばれている。

西オークランド

バビッチの創業の地であり、今でも基盤とする場所。小さいが自社畑もあり、主にアルバリーニョを栽培。セラードアでは、平日に限り訪問者を受け入れている。

バビッチ・ワインズのサステナブルへの取り組み

バビッチ・ワインズは、使用している全てのぶどうが、サステナブル・ワイングローイング・ニュージーランド(SWNZ)の認証を受けており、サステナブルに力を入れているワイナリーだ。その主な取り組みを見ていこう。

水の使用を削減

地下の管から水を上昇させて、必要な分だけ給水する地下灌漑(かんがい)、ぶどうの樹のモニタリング、雨水の使用、スマートテクノロジーなどを導入。ぶどう畑やワイナリーで使用する水の量は、ワイン業界の基準を大幅に下回っている。

オーガニック畑の拡大

マールボロにあるヘッドウォーターズ・ヴィンヤードは、2009年にBioGro(バイオグロ)というニュージーランドで最も知られているオーガニック認証を取得。ニュージーランド最大のオーガニック認証を受けたぶどう畑だ。BioGroは、3年連続で査察に合格しないと取得できない。さらには、査察を毎年受けることが義務付けられている、厳しいものだ。

バビッチ・ワインズでは、今後もオーガニック畑の拡大を進めていくという。

ゴミの削減

バビッチ・ワインズでは、ゴミの削減にも取り組んでいる。例えば、ぶどうを搾った後の皮を100%堆肥として使用してリサイクルや再利用に取り組む、消耗品は大容量パックを購入してパッケージを削減するといったことだ。

バビッチ・ワインズのワイン

バビッチ・ワインズのワインは、日本では明治屋が輸入を手掛けている。

バビッチ ブラック・ラベル ソーヴィニヨン・ブラン

2005年にファーストリリース。「料理にマッチするワイン」というコンセプトのもと、レストランやバー向けに開発された。ステンレスタンクで発酵し、一部にのみ酸を和らげるマロラクティック発酵を行っている。

2018年には、ジェームス・サックリングが91点と高く評価。2019年には、「インターナショナル・ワイン・アンド・スピリッツ・コンペティション(International Wine & Spirit Competition:IWSC)」「チャイナ ワイン&スピリッツ アワード」で金賞を受賞している。

ソーヴィニヨン・ブランの特性である辛さと爽やかさ、そして複雑性を出来る限り表現するために、マールボロ内に所有する自社畑から収穫されたブドウから造られたワインをブレンドし、ベストバランスの味わいに仕上げました。

ブラックカラントやつげの木を想わせるような芳醇な香りのなかに、ほのかにライムやスモーキーなハーブも感じます。パッションフルーツのようなフレッシュで果実の甘みを感じ、複雑なハーブやシトラスを想わせる味わいです。ミネラル感があり程よい広がりと余韻があります。
(明治屋紹介資料より)

BLACK LABEL MARLBOROUGH SAUVIGNON BLANC
産地:マールボロ
ぶどう品種:ソーヴィニヨン・ブラン100%
味わい:辛口・白
参考小売価格:3300円(税込)

バビッチ マールボロ ピノ・ノワール

オープンバットで最小限のプランジング(棒でタンクの果汁やワインを混ぜる作業)を行って発酵させ、オーク樽にてマロラクティック発酵後に6カ月間熟成させている。1981ヴィンテージは、ニュージーランド初の国際コンクール(シドニー・ロイヤル・イースターショー)で金賞を受賞したピノ・ノワールとなった。「コリア・ワイン・チャレンジ2018」で、「ベストニュージーランドレッド」を受賞した実績もある。

プラムとラズベリーのアロマ、タイム、マッシュルーム、アニスのほのかな香りが広がります。プラムやチェリーのような甘い果実味わいにブラックベリーリーフのほのかな味わいもあり厚みとボリュームを感じます。果実味、酸、タンニンのバランスがとれた仕上がりです。ビーフやラムのステーキとよく合います。
(明治屋紹介資料より)

BABICH MARLBOROUGH PINOT GRIS
ぶどう品種:ピノ・ノワール主体
味わい:ミディアムボディ・赤
参考小売価格:3080円(税込)

バビッチ ソーヴィニヨン・ブラン マールボロ

飛行機のビジネスクラスで提供されていたこともあるワイン。マールボロにある複数の畑で収穫したぶどうを使用しており、収穫したぶどうは手早く破砕、圧搾。ステンレスタンクで発酵、数カ月熟成させている。初めてバビッチのソーヴィニヨン・ブランを手に取るという人にもおすすめしたい1本だ。

2019年には、「チャイナワイン&スピリッツ・アワード」にて金賞、「デキャンター・ワールド・ワイン・アワード(Decanter World Wine Awards:DWWA))」で90ポイントを獲得している。

清涼感溢れるフレッシュな酸味と豊かなトロピカルフルーツのフレーバーやグーズベリーやツゲ、ミント、ハーブなどの香りが特徴の厚みのある辛口ワイン。

シーフードサラダや生ガキなどと良く合う味わいで、食前酒としても好適なワインです。
(明治屋紹介資料より)

BABICH MARLBOROUGH SAUVIGNON BLANC
産地:マールボロ
ぶどう品種:ソーヴィニヨン・ブラン100%
味わい:辛口・白
参考価格2750円(税込)

バビッチ マールボロ ピノ・グリ

複数の畑から収穫したぶどうを使用。ステンレスタンクの発酵に加えて、一部はオーク樽で発酵。複雑さを引き出した、リッチなピノ・グリだ。一部は、清澄の前に48時間かけて澱を撹拌(かくはん)することで、口当たりを良くしている。

洋ナシやジンジャーのアロマに続いてオレンジの花やアプリコットの香りが広がります。みかんや香ばしいビスケット、桃など複雑さのある味わいが広がり、まろやかで厚みを感じる仕上がりです。鯛のフィレやフライしたお料理、またグリルしたハムなどによく合います。
(明治屋紹介資料より)

BABICH MARLBOROUGH PINOT GRIS
産地:マールボロ
ぶどう品種:ピノ・グリ主体
味わい:辛口・白
参考価格:2640円(税込)

ヴィーガン・ワイン

バビッチ・ワインズでは、ヴィーガン・ワインもつくっている。ぶどう畑では動物性の肥料やスプレーの使用を避け、醸造過程では清澄時に植物性のプロテインを使う。ぶどう栽培や醸造まで、一貫して動物性原料を使用せずにつくられているのが特徴だ。

日本で見つけることは難しいが、気になる人は海外で探してみてはいかがだろうか。

ヴィーガン・ワイン
●Family Estates Organic Marlborough Sauvignon Blanc
●Family Estates Organic Marlborough Chardonnay
●Family Estates Organic Marlborough Pinot Gris
●Family Estates Organic Marlborough Albarino
●Family Estates Organic Marlborough Rose
●Select Blocks Organic Marlborough Sauvignon Blanc

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About the author /  鵜沢 シズカ
鵜沢 シズカ

J.S.A.ワインエキスパート。米フロリダ州で日本酒の販売に携わっている間に、浮気心で手を出したワインに魅了される。英語や販売・営業経験を活かしながら、ワインの魅力を伝えられたら幸せ