コラム

[マナー講座]レストランでワイン、値段の目安は? グラスのどこに手を添える? ついでもらう or 自分で注ぐ?

スーパーやワインショップでワインを買って、自宅で気軽に飲むのは慣れている。でも、おしゃれなレストランに行って、ワインを頼むのはドキドキする。なぜなら、料理と合うワインが分からない。テイスティングの仕方も分からない。自分でボトルから注いでいいのか分からない……。

食事のマナーはともかく、レストランでワインを頼むときのマナーについて、自信を持って答えられる人は、そう多くはないと思う。おしゃれなレストランでも気後れせずにワインを頼めるよう、いくつかポイントとなるマナーをご紹介しよう。

料理の予算とワインの値段、どのくらいが目安?

レストランを予約するとき、料理の値段は事前にチェックしておく人が多いだろう。だが、そのときにワインなどの飲み物の値段を気にする人は、どのくらいいるだろうか?

ドリンクメニューやワインリストには値段が表記されているものの、値段を確認してから銀行へお金を引き出しに行くわけにはいかない。「コースを通してワイン1杯をちびちび飲んだ」「ワインではなくビールしか頼めなかった」といったことが起こらないように、だいたいの値段を知っておきたい。

料理が1万円程度になるレストランでワイン3杯程度を飲みたい場合、ワインの予算として料理の値段の半分程度を目安にしておきたい。

料理の値段がもっと安い場合は、会計に占めるのワイン代の割合は上がる。料理がもっと高い場合、ワイン代の割合は下がるのが一般的だ。もちろん、高いワインを注文する場合などはこの限りではない。

食前酒は前菜に合わせて。迷ったら泡に

レストランで席に着くと、まずは食前酒をどうするかと聞かれることが多い。シャンパンなどのスパークリングワインが定番だが、その1杯をより楽しみたい場合は、前菜の内容に合うものを聞くのがいいだろう。

ちなみにスパークリングワインを頼んでおけば、どんな料理にも比較的合いやすい万能選手であるばかりか、胃の働きを活発にしてくれる効果も狙える。食前酒について迷ったら、泡を選んでおこう。

ワインは料理の引き立て役と心得よう

料理が決まったら、次は食中酒を選ぼう。しっかりしたレストランであればあるほど、料理に合わせたお酒を飲むのもマナーの1つになる。なぜなら、料理とワインが間違った組み合わせでは、せっかくの料理の味を台無しにしてしまうことがあるからだ。

とはいえ、初めてのレストランでは料理の味は分からないだろう。その店の味とワインを熟知しているソムリエに、お任せしてしまうのがベストだ。その際、恥ずかしがらずに希望の予算を伝えるのも大事なポイントだ。

ワインを注文はボトル? グラス? もしくはデカンタ?

さて、ワインを頼むときにもう1つ気をつけなければいけないことがある。それは、同席者がどの程度の量を飲めるのか、もしくは飲むつもりなのかを先に把握しておくことだ。

相手のことをよく知らない場合、仮に初めてのデートなどでは「あなたと一緒でいいです」と相手が合わせてくれることもあるだろう。しかし、ソムリエが前菜に合わせて選んでくれたフルボトルの白ワインを、相手がもし1杯しか飲めなかったら? あなたは、すっきりした白ワインをメイン料理の赤肉とも合わせなければいけないことになるかもしれない。

ボトルワインの量はグラス何杯分?

ボトルワインは750ml、グラスワインはだいたい110mlといった量になる。つまり、ボトルはグラス7杯分だ。デカンタについてはお店により異なるが、ボトルの半量のことが多い。

一方、料理のコースはさっぱりした味からしっかりした味へと組み立てることが多い。できればワインも同じように組み立てていきたい。同席者とよく相談しながら、ワインの頼む量を決めていこう。

テイスティングの順序とマナー

グラスやデカンタでワインを注文した場合、ソムリエが状態を確認してから出してくれるので問題はない。しかし、ボトルでワインを頼んだ場合にはホストが味見をしなければならないことが多い。慣れないと緊張してしまうシーンだが、難しく考えなくても大丈夫だ。

では、どのようにテイスティングをしていけばいいのか、流れに沿って見ていこう。

テイスティングをするのは誰?

ワインというのはホストが頼むもの。そのホストがテイスティングの担当だ。自分の頼んだワインが提供されているか、そして劣化していないかを確かめよう。

テイスティングの簡単な方法

グラスにワインが注がれたら、まず色を見よう。白いクロスの上で見ると分かりやすい。よほどの劣化ワインでなければ、この時点で違いは分からない。あまり気にしなくていいだろう。

次に香りをかぐのだが、「ああ、いい香り」と思えば大丈夫だ。少しグラスをまわして片鼻でかぐと、より香りを感じやすい。
最後に口に含んで味をチェック。もしカビ臭かったり、必要以上に渋かったり、変な味がした場合は、ソムリエにも飲んでもらって確認してもらおう。

特にそういったことがなければ、ソムリエに「こちらで大丈夫です」と伝えればOKだ。

食事中にはこんなことに気をつけよう! ワインマナーFAQ

ここからはワインのマナーに関する「よくある質問」にお答えしていこう。

ワイングラスはどこを持ったらいいの?

ワイングラスを持つときは、グラスの下側にある一番細い「ステム」と呼ばれる部分を持つのが基本だ。

そもそも、このステムという脚は、手の体温でワインが温かくなるのを防ぐために付けられた。しかし、赤ワインが冷えすぎて香りが立たない場合などは、ブランデーグラスのように手で包んで温めることもある。

ワインで乾杯するとき、グラスを合わせてよい?

おめでたい席などでは、音を立ててグラスを合わせたいこともある。もちろんカジュアルな席では、ワイングラスでも「カチン」と合わせて全く問題がない。

しかし、高級店では事情は違ってくる。基本的に正しい乾杯のマナーとしては、グラスをすっと上げ、アイコンタクトするだけにとどめるのがベストだ。ゲストがグラスを合わせてきた場合には、グラスの膨らみの部分を軽く当てる程度にしておこう。

ワインを飲むときに音を立ててもよいの?

乾杯に限らず、洋食のテーブルでは音を出すのは基本的にご法度だ。だが、唯一音を立てて良いのはテイスティングなど、ワインを最初に味わうときだ。

ワインを口に含み、唾を吸うときのように息を吸うと、液体と空気が混じり合い、そのワインの本来の味を引き出すことができる。

ワインを自分で注ぎ足しても大丈夫?

高級店では、テーブルにデカンタやボトルがあってもソムリエが注ぎ足してくれるところが多い。また、お店によってはボトルを別の場所に置いている場合もある。

しかし、ソムリエはいくつかのテーブルを同時にサービスしていることが多いため、思ったタイミングで来てくれないこともあるだろう。

そんなときには、ワインを自分で注ぎ足しても問題ない。そのためにボトルをテーブルに置いてもらうよう依頼しても大丈夫だ。

ただし、基本的には「ホストがゲストに注ぐ」「男性が女性に注ぐ」「手酌はしない」といった最低限のマナーは守っておきたい。

ワインを注ぐとき、注がれるときに気をつけることは?

ワインを注いでもらうとき、避けたいのが「グラスを持ち上げる」ことだ。

ソムリエはグラスを置いた状態に慣れているため、突然グラスを持ち上げると非常に注ぎにくくなる。また、角度的に注ぎにくい場合には、サービスしやすいよう、ソムリエがグラスを移動することもあるからだ。

逆にホスト役としてワインを注ぐ際に気をつけたいのは、じゃぼじゃぼと勢いよく注いだり、テーブルにこぼしたりすることだ。できれば「トーション」と呼ばれるナプキンを片手に持ち、注ぐたびにボトルの口を軽く拭おう。

また、注ぎ終わったあとは、ラベルを皆の正面に向けることを忘れずに。

ワイングラスを回してみたい、うまく回すコツは?

ワインは空気に触れさせるとより香りが立つため、味わう前にグラスを回すことがある。しかし、初心者がやってみると意外とスムーズに回せず、かっこ悪くなってしまうことも多いだろう。

そこで、間違いなく上手に回す方法をお教えしたい。

まず、グラスをテーブルクロスの上に置き、足を上から手で押さえる。その際、人差し指と中指の間(Vになった部分)にステムを挟もう。そのまま、手とグラスの脚をクロスに押し付けたまま、外回しでも内回しでも、回しやすい方向にゆっくりと回しはじめる。

そうすると、テーブルクロスでグラスがスムーズに滑り、きれいに回すことができる。回し終わったら手を離し、ステムを持って口に運ぼう。

ワイングラスに口紅がついてしまったらどうする?

ワイングラスにべっとりとついた口紅は、同席者も見ていてあまり気持ちの良いものではないだろう。しかし、レストランに行く際は口紅くらい塗りたい。どのようにすれば、まわりに不快感を与えずおいしくワインが楽しめるだろうか。

特に濃い色合いの口紅をしてきたときは、食事の前に軽く唇をティッシュで押さえておこう。それだけでも、グラスに付着する量はだいぶ減るだろう。また、こうすることで食事中に歯に口紅がついてしまったり、レストランのナプキンを口紅で汚してしまったりすることも少なくなる。

ちなみに、グラスについた口紅を指やナプキンで拭く仕草を見ることもあるだろうが、これはマナー違反だ。万が一だが、グラスが割れてしまうこともあるからだ。

ボトルワインが余ったら、持ち帰ってもいいの?

レストランでは基本的に、グラスよりもボトルでワインを頼んだ方がリーズナブルになる。しかし、飲み切れなかった場合は、余ったワインを置いて帰らなければならないのだろうか。

実は、欧米では飲み残したワインボトルに栓をして、持ち帰りをするのは非常に一般的だ。日本でも、持ち帰り用にワインバッグまで用意している店も少なくない。

そのため、ワインボトルを飲み切れなかったときは、「持ち帰りたい」と申し出てみよう。

しかし、高額なワインを少しだけ残してしまった場合には、置いて帰るのがスマートだ。なぜなら、その店のサービス担当者やソムリエが、普段は飲めないワインをテイスティングできるチャンスとなるから。

そういったことが分かっているゲストは、どの店でも非常にありがたがられる。「少ししかないけど、テイスティングにどうぞ」と一声かけて店を出よう。

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About the author /  Yayoi Ozawa
Yayoi Ozawa

フランス料理店経営ののち、ワインとグルメ、音楽を専門とするライターへ転身