コラム

悔いのないワインづくりを目指し、垣根栽培を成功させたルバイヤート ~解説:山梨県・勝沼エリアの名門ワイナリー

山梨県甲州市の勝沼エリアは、明治時代からぶどう栽培とワインづくりが盛んな日本のワイン銘醸地だ。このシリーズでは、勝沼エリアのワイナリーを紹介していく。

第5回目は、“勝沼御三家”の1つに挙げられる、「丸藤葡萄酒工業(ルバイヤート)」。欧州系の品種に積極的に目を向け、国内外から高い評価を受けているワイナリーだ。

G7で提供されたルバイヤートの「プティヴェルド」

2016(平成28)年、日本で開催されたG7伊勢志摩サミットの夕食会で、「ルバイヤート プティヴェルド 2012」が提供された。

プティ・ヴェルドは、ワインのバランスを良くしてくれる、オールマイティなスパイスのように使われることが多い品種だ。ボルドーやカリフォルニアでは、ブレンドワインに少量加えられることが多く、プティ・ヴェルド主体でワインがつくられることは珍しい。

収穫時期がかなり遅く、日本では秋の台風の影響を受けるため、栽培が難しい品種とされる。しかし、山に囲まれた勝沼は台風の影響を受けにくく、栽培が成功している理由の1つになっている。

ルバイヤートでは、1996年の初リリース以降、「山梨の風土に合う」と信じて、プティ・ヴェルドの栽培を続けてきた。

同ヴィンテージを含め、「ルバイヤート プティヴェルド」は、2015年から3年連続で日本ワインコンクールの金賞を受賞している。

ワイナリーの歴史

ブランド名はペルシャの四行詩から

丸藤葡萄酒工業の創業は、1890(明治23)年。この年、創業者の大村治作氏が葡萄酒醸造免許を取得したことに始まる。ただし、大村家のワインづくりの歴史は、治作氏の父である大村忠兵衛氏までさかのぼる。忠兵衛氏は、民間初のワイン製造会社「大日本山梨葡萄酒会社」(メルシャンの前身)が1877年に設立された折に、出資者の1人に名を連ねている。

丸藤葡萄酒工業が「ルバイヤート」と名乗るようになったのは、1957(昭和32)年のこと。詩人であり、翻訳や評論などの活動もしていた日夏耿之介氏が、ペルシャの詩人たちが歌った四行詩を意味する“ルバイヤート”から命名したのだ。最も有名なルバイヤートの詩人は、11世紀に活動した科学者で詩人のオマル・ハイヤーム氏。19世紀にイギリスで高く評価され、世界中で読まれるようになった。その作品には、“紅の美酒”をうたったものが多いという。

垣根式で欧州系品種を栽培

1989(平成元)年になると、ヨーロッパで一般的な垣根式栽培でカベルネ・ソーヴィニヨンやシャルドネの栽培をスタート。現在では、垣根式栽培のぶどう畑は、面積・品種ともに増えている。

2005年には、国産ワインコンクール(現・日本ワインコンクール)で「ルバイヤート甲州シュール・リー 2004」が金賞とカテゴリー賞を受賞。以降、同コンクールで数多くのワインが賞を受賞している。

国内だけでなく、2012年からは「ルバイヤート甲州JW 2011」のロンドンへの輸出がスタート。また2016年のG7伊勢志摩サミットでは、「ルバイヤート プティヴェルド 2012」が夕食会で提供され、各国首脳をもてなした。

2019年現在、4代目の大村春夫氏のもと、長男がぶどう畑の経営、次男がワインづくり、三男が東京・神楽坂のワインレストラン「神楽坂ルバイヤート」を手掛けている。

世界に誇る日本のワインを目指して

ぶどう栽培から醸造まで、常に新しいことに挑戦しながら、精力的にワインづくりに取り組むルバイヤート。日本を代表する固有品種の甲州だけではなく、カベルネ・ソーヴィニヨンやシャルドネなどの欧州系品種も積極的に手掛け、“世界に誇る日本のワイン”を目指している。

例えば、ぶどう栽培では、欧米で一般的な垣根式栽培に30年ほど前からチャレンジしている。

垣根式栽培をしているぶどう畑「旧屋敷」

そのきっかけとなったのは、安くておいしい輸入ワインが日本に入ってくるようになったこと。日本のワイナリーの将来を考えた4代目の春夫氏は、1990年の創業100周年を目前に、ある決断をした。それまで小さなワイナリーではやっていなかった、垣根式栽培だ。もしつぶれることがあっても、悔いの残らないワインづくりをしたいという思いがあった。

そして、大手ワイナリー「マンズワイン」の手ほどきを受けて、垣根式栽培をスタートさせた。

1992年頃に栽培を開始したプティ・ヴェルドは、粒が小ぶりで隙間があり、光や風を通しやすい。山梨の風土に合う品種だと、手応えを感じたという。2012年のぶどうは糖度が26度まで上がり、2015年の日本ワインコンクールで「ルバイヤート プティヴェルド 2012」が金賞を受賞した。このワインは、G7伊勢志摩サミットで提供されるワインの1本に選出されたのだが、その頃には既に売り切れており、春夫氏の個人貯蔵から提供されることとなった。

垣根式栽培でプティ・ヴェルドなどの欧州系品種の栽培に成功した現在では、ぶどう畑「試験園」にて、棚式栽培による高品質なぶどうづくりに挑戦している。

プティ・ヴェルドの棚式栽培をしているぶどう畑「試験園」

なお、ルバイヤートでは、HP上(http://www.rubaiyat.jp/about_us/vineyard_info/)で、畑の地図と栽培している品種、土壌の説明などを公開している。その地図を見ながら、自由に畑を散策することも可能だ。

おすすめワイン

ルバイヤート甲州シュール・リー

辛口ではつらつとした酸味が感じられる1本。香味を引き立たせるために、ろ過は控えめにしている。寿司やカルパッチョ、焼き鳥の塩ダレなどを中心に、和食全般と相性がいい。

愛好家を引き付けるうま味がありながら、初心者にも飲みやすいワインだ。リーズナブルな価格帯もうれしい。

価格:1800円(税別)

ルバイヤートマスカットベーリーA樽貯蔵

山梨県産のマスカット・ベーリーAを使用し、樽熟成させた1本。果実味と樽の風味が楽しめるワインだ。ヴィンテージによっては、メルローやプティ・ヴェルドなどが数%ブレンドされている。

肉じゃがや照り焼きなど、甘辛い醤油味の料理とよく合う。

価格:2100円(税別)

ルバイヤート シャルドネ「旧屋敷収穫」

ルバイヤートの自社畑の1つ、旧屋敷で収穫したシャルドネを100%使用したワイン。新樽を約50%使用し、一部の発酵に野生酵母を使用。澱(おり)と一緒に熟成させるシュール・リー製法で11カ月熟成させている。

限られた数量しか生産されない限定醸造で、完売必至のワインだ。

価格:3600円(税別)

ドメーヌ ルバイヤート

自社畑で栽培したボルドー品種を使用した、ルバイヤートのフラグシップワイン。ヴィンテージによって、ブレンド比率が異なる。2019年8月時点で発売されている2013年ヴィンテージは、プティ・ヴェルド40%、カベルネ・ソーヴィニヨン40%、メルロー20%。新樽40%と古樽60%で13カ月熟成させている。

ヴィンテージと醸造のこだわりがうかがえる、数量限定ワインだ。

価格:5500円(税別)

ワイナリーを楽しむ

●丸藤葡萄酒工業(ルバイヤート)
電話:0553-44-0043
住所:山梨県甲州市勝沼町藤井780
営業時間:9:00~16:30
定休日:無休(年末年始を除く)
アクセス:JR中央本線勝沼ぶどう郷駅より車で約10分、同線塩山駅より車で約15分
中央高速バス(新宿駅バスターミナル発、新宿甲府線)の甲府南経由で釈迦堂バス停より徒歩15分
※徒歩10分圏内に、まるき葡萄酒などがある。

ワイナリー見学

ルバイヤートでは、1日に2回、案内付きのワイナリー見学を用意している。

緑色のシャツがルバイヤートの制服。写真は大村春夫社長

創業120年を超えるワイナリーだけあって、長い間ワインづくりを支えてきた建物からも歴史を垣間見ることができる。他のワイナリーとは一味違う見学内容となっており、ワイン初心者から上級者まで楽しめるだろう。

見学では、醸造用の設備や酒石酸が壁一面に付いた貯蔵庫、見学者用のギャラリーなどを見ることができる。

写真左:コンクリートタンクを回収した瓶貯蔵庫は、壁に付いた酒石酸がキラキラと輝いている。瓶貯蔵庫の出口を飾るステンドグラスを含め、ぜひ自分の目で確かめてみてほしい。
写真右:会議室や研修室として使用している部屋には、ワインの大樽をリメイクしたテーブルやグラスの棚がある

開始時間:10:30~、14:00~
所要時間:約15分
参加費:無料
開催日:無休(年末年始除く)

蔵コン -ルバイヤートワイナリーコンサート―

ワイナリー見学の他に、年に一度、周囲が桃色に染まる4月に、ワイナリーでのコンサート「蔵コン」を開催している。

前年に醸造したワインやヴィンテージワインを楽しめる第1部と、ジャズやポップス、クラシック、シャンソンなどの多彩な音楽を楽しめる第2部で構成。2019年度より、歴史ある母屋を改装したショップ兼ギャラリーホールで開催するサロンコンサートスタイルとなった。

詳細は3月上旬からHPやメールマガジンなどで発表される。

ワイナリーでの試飲システム

■基本コース
料金:500円
試飲できるワイン:5アイテム
開催日:毎日(年末年始除く)

ショップ兼テイスティングカウンターで試飲が可能。1杯20mlで、合計5アイテムを味わえる。

(試飲ワイン)
・ルバイヤート甲州シュール・リー
・ルバイヤート甲州樽貯蔵
・ルバイヤートマスカットベーリーA樽貯蔵
・ルバイヤートルージュ樽貯蔵
+下記いずれか1点
・ルバイヤートロゼ
・ルバイヤートデラウエア

テラス席では、ぶどう畑を見下ろしながら試飲ができる

■プレミアムワインのテイスティング
料金:ワインによって異なる
試飲できるワイン:1~2種類
開催日:不定期(土・日曜、ハイシーズン)

グラス1杯50mlで「ルバイヤート万力ルージュ」300円、「ルバイヤートメルロー」500円、「ドメーヌ ルバイヤート」500円などが試飲可能。

■イベントでのスペシャルテイスティング
料金:ワインによって異なる
試飲できるワイン:1~数種類のプレミアムワイン
開催日:不定期(土・日曜、ハイシーズン)
定員制

2019年5月25日には、「ワインツーリズムやまなし2019・初夏」の開催に合わせて、「ルバイヤート甲州シュール・リー」「ルバイヤート プティヴェルド」のプレミアムワインテイスティングが行われた。

それぞれのワインの5つのヴィンテージを垂直テイスティングするというもので、ヴィンテージによって味わいがどう変わるのかを、社長の解説を聞きながら楽しめるという内容だった。

レストラン情報

4代目当主の三男が手掛けるワインレストラン。2001年に東京・神楽坂にオープンした。ルバイヤートのワインだけでなく、さまざまな日本ワインや旬の海外ワインを山梨の食材とともに楽しめる。在日フランス人の多い飯田橋エリアで、「毎日食べられるやさしいフレンチ」をコンセプトとしている。

■レストラン「神楽坂ルバイヤート」
住所:東京都新宿区若宮町10-7
電話:03-5228-3903
営業時間:17:30(土曜は17:00)~23:30(L.O22:30)
定休日:日曜、祝日
https://rubaiyato2015.wixsite.com/rubaiyat/

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