コラム

キーワードは「生物多様性」! ぶどう畑を守る意外な生物たち ~ボルドーの持続可能なワイン造りを知る

   

ボルドーワイン委員会(CIVB)は2019年10月24日、ボルドーのサステナブルなワインづくりについて、その取り組みなどを紹介する「ボルドーの持続可能なワイン造りを知る #Sustainabordeaux プレスイベント」を開催した。

イベントには、ボルドーワイン委員会技術部門ディレクターのマリーカトリーヌ・デュフール氏が登壇。ボルドーでは現在、持続可能なワインづくりのため、どんな取り組みを行っているかを語った。

今回はその中から、ボルドーのサステナブルなワインづくりを支える「生物多様性」についてまとめる。

10gの体でぶどう畑を守るコウモリ

ぶどう畑を取り巻く生態系は、ボルドーのワインづくりには欠かせないものだ。しかし、全てがありがたいものではない。例えば、ぶどうの樹にとって大敵となるのが、ハマキガだ。このガは、ぶどうの果実を灰色カビ病(ボトリティス菌)という病気にしてしまう。防虫剤を使わず、ぶどうをどうやってハマキガから守るかが課題となっていた。

そこで、ボルドーワイン委員会が注目したのが、昆虫食のコウモリだ。

ボルドーには22種類のコウモリが生息

フランスには30種類のコウモリが生息しているが、そのうちの22種類がボルドー地域に生息している。

コウモリと聞くと、薄気味悪い姿を想像するかもしれないが、ボルドーに生息しているコウモリは、翼を広げても20cmほどしかない小さなもの。重さも10gほどしかない。

こんな小さなコウモリだが、一晩で2000匹もの虫を食べる大食漢だ。コウモリのふんからはハマキガのDNAが見つかっており、ハマキガを食べてくれることも分かっている。

保護された野鳥という壁

コウモリがハマキガを食べてくれることは分かったが、コウモリは野鳥として保護されているため、人の手で勝手にコウモリを連れて行くわけにはいかない。

まずはコウモリにとって快適に子育てできる環境をつくり、自発的に移り住んでもらう必要がある。そのためにも、コウモリにとって安全なすみかと豊富な食糧を用意しなくてはならない。

そこで目を付けたのが、ぶどう畑に放置されていた、かつて生産者たちが農具を収納していた小屋だ。ボルドーワイン委員会は生産者たちに対し、コウモリが定着しやすくなるような改修を促している。

キーワードは「生物多様性」

コウモリを定着させるには、ハマキガの季節以外にもエサとなる昆虫が豊富でなければならない。集まる昆虫の数を増やすには、さまざまな草花を増やす必要がある。コウモリも区画に草花が育つことによって、活動性が高まることが研究で明らかになった。つまり、生物多様性が高まるほど、ぶどう畑を守ってくれるコウモリにとって良い環境になる。

生物多様性を促進するための手段の1つが、カバークロップだ。かつてはぶどう畑に余分な草花はない方がいいとされていたが、現在はボルドーのぶどう畑の85%がカバークロップを植えている。

カバークロップはおよそ1000種類。カバークロップの導入当初は同一のカバークロップを生やしていたが、現在では季節によって入れ替わるようにさまざまな種類を混ぜたほうが、ぶどうの樹とうまく共存できると考えられている。春にはできるだけ草刈りをせず、冬にはヒツジやニワトリを放して不要なカバークロップを取り除いているという。

カバークロップのメリットとデメリット

カバークロップの利点は、花粉を運ぶ昆虫などを呼び込むだけではない。トラクターがスムーズに通れるようになり、枯れたカバークロップが肥料になって土壌を豊かにしていく。また、カバークロップの根が土に深く伸びることで、土の中に空気が入るなどのメリットがある。

しかし、カバークロップがぶどうに必要な水分を奪ってしまうというデメリットもある。例えば、2019年の夏に2週間も雨が降らないことがあった。土壌の深いところまで根を張っている環境であれば問題ないが、そうでないところではカバークロップを生やさずにぶどうの樹に水分が行くようにするなど、状況に応じた対応が求められた。

ぶどう畑周辺での取り組み

ぶどう畑に生物多様性を生み出すには、その周囲の環境も整える必要がある。例えば、ぶどう畑の近くの木々を保護したり、休耕地をつくって草花を植えたり、ミツバチの巣箱を設置したりしている。

手をかけて守るだけではない。周囲の木々で枯れたものはあえて放置することで、虫や鳥の避難場所をつくることができる。

また、ぶどう畑の周りに生垣をつくることをボルドーワイン委員会では推進している。生垣は昆虫たちが集まる環境、そして小鳥が隠れる環境をつくり出す。また、夏には涼しさをつくり出し、冬には霜を撃退する役割もある。

2014年時点では1.5km未満しかなかった生垣は、2018年段階で26kmにまで増えている。

主体はあくまで生産者

ボルドーは、AOCを取得する規定に、環境に配慮した農業施策を取り入れた、フランス国内で最初の地域だ。ボルドーのぶどう畑の60%は環境に配慮した取り組みを採用している。

こうした取り組みを生産者たちが行うには資金が必要だ。ぶどうの収穫が減ってしまうリスクもある。ボルドーワイン委員会では、環境戦略を提示して生産者に役立つ対策を提供しているが、資金援助はしていない。農家は自主的にサステナブルなワインづくりに取り組んでいる。

ボルドーに浸透するサステナブル

ボルドーは、世界有数のワイン産地だ。多くの住民がワイン生産に関わっている。「ボルドーでは持続可能な社会にするというのが、既に人々に浸透している」と語るのは、イベントに登壇したモデルのマリエさんだ。

同年11月8日には、持続可能なぶどう畑を目指す生産者たちの姿を追った『サスティナブル ワイン ~フランス ボルドーワインの新時代へ~』(BSフジ)が放送された。番組に出演したマリエさんは、「ボルドーでは、みんなでサステナブルを目指すというのが当たり前になっている。ワインづくりにも反映されているというのがワクワクして、ワインを飲むのが楽しくなるなと感じました」とコメントしている。

なお、同番組の映像はボルドーワイン委員会のYouTubeチャンネルで視聴できる。

環境に配慮してつくられた10本のワイン

プレスイベントでは、10種類のワインが紹介された。オーガニックワインの認証が付いていないものもあるが、いずれも環境に配慮してつくられたものだという。

いずれもボルドーの印象が変わる、親しみやすい味わいのワイン。肩肘張らないマリアージュを楽しめそうだ

●ドゥルト ボルドー ブラン(2018)

爽やかな白ワイン


AOC:ボルドー
価格:1156円(税込)

●シャトー ド ボールガール デュコート アントルデュメール(2017)

さわやかな白ワイン


AOC:アントルデュメール
価格:2160円(税込)

●シャトー・ラ・カデリー・エスプリ・ビオ(2015)

さわやかな白ワイン


AOC:ボルドー
価格:2268円(税込)

●バルトン&ゲスティエ グラーヴ(2017)

コクのある白ワイン


AOC:グラーヴ
価格:1820円(税込)

●ブルス・ド・リゼンヌ クレマン・ド・ボルドー

クレマン


AOC:クレマン・ド・ボルドー
価格:3240円(税込)

●ボルドー・クレレ(2018)

ロゼ&クレレ


AOC:ボルドー・クレレ
価格:2376円(税込)

●シャトー・ボネ ルージュ バレル・エイジド(2015)

ミディアムボディの赤


AOC:ボルドー
価格:3024円(税込)

●ロック・デュ・マノワール レ・ヴィエイユ・ヴィーニュ(2014)

ミディアムボディの赤


AOC:カスティヨン・コート・ド・ボルドー
価格:3240円(税込)

●シャトー・ローラン・ド・ビィ(2012)

重厚な赤


AOC:メドック
価格:3980円(税込)

●カステルノー・ド・スデュイロー(2005)

甘めの赤


AOC:ソーテルヌ
価格:3240円(税込)

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About the author /  鵜沢 シズカ
鵜沢 シズカ

J.S.A.ワインエキスパート。米フロリダ州で日本酒の販売に携わっている間に、浮気心で手を出したワインに魅了される。英語や販売・営業経験を活かしながら、ワインの魅力を伝えられたら幸せ