コラム

ボージョレ・ヌーボー、2020年の出来映えは!? ボジョレーワイン委員会の評価をチェック

2020年11月19日、今年もボージョレ・ヌーボーが解禁された。今年は家でボージョレ・ヌーボーを楽しむという人も多いのではないだろうか。

フランスのボージョレ地区でつくられた今年のぶどうの出来を楽しむボージョレ・ヌーボー。心待ちにしている人にとっては、その出来栄えが気になるところだろう。ボジョレーワイン委員会のプレスリリースやつくり手の声をもとに、今年のボージョレ・ヌーボーの特徴を紹介していこう。

早い成熟と乾燥した夏の「究極のヴィンテージ」

2020年の特徴は、成熟と極めて乾燥した夏。1992年以来、2003年に次いで最も早い成熟を記録し、収穫開始日は例年よりも早い8月20日となった。

暑くて乾燥した夏だったが、ボージョレ・ヌーボーに使用されているガメイ種は、気候変動に高い順応性を見せたという。

早い成熟と乾燥した夏について、ボージョレワイン委員会は「究極のミレジム(ヴィンテージ)と言えるかもしれません」と表現。質についても「非常にバランスが取れた爽やかさのある仕上がり」と、自信を見せている。

区画ごとにばらつき

2020年ヴィンテージの収穫は、「ばらつき」が特徴的とのこと。これは同じボージョレ地区であっても、多彩なテロワールが存在し、全体的に乾燥している中で雨がぱらついた区画があったこと、区画ごとに乾燥への耐性が異なっていることが原因だという。

畑の標高や日照量、ぶどうの樹の樹齢によって成熟スピードが異なるため、つくり手は各々が収穫の時期を判断した。

収穫量は少なめ

早い成熟となった2020年だが、収穫量は最近の平均より少なめ。10月13日に開催された、メルシャンとアルベール・ビショーによるプレゼンテーションでは、「収穫前に凝縮し過ぎて水分が外に出てしまった。さらに、日焼けによって収穫量が2割ほど落ちた」と、説明している。

<関連記事>2020年ボージョレ・ヌーボーの出来は? アルベール・ビショー×メルシャンによるプレゼンテーション

時期ごとの天候

2020年ヴィンテージは、穏やかな冬から始まった。萌芽は平均より早い3月末に始まり、気温が高く乾燥し、4月、5月と日照量の多い日が続いた。5月20日前後から非常に早い開花が見られ、6月の前半は寒気と雨があったものの、その後は乾燥して日照量が多くなった。実の色づきは7月18日前後から始まったが、この頃から今年の特徴である「ばらつき」が見られるようになった。

7月の最後の10日間は比較的暑くて乾燥し、1964年以来、3番目に乾燥した7月となった。雨も少なく、降ったとしても場所にばらつきが見られた。8月に入ると猛暑に見舞われ、28日以降は涼しくなった。畑によって降雨量にばらつきがあり、例年の平均よりも大きく下回ったという。

収穫は8月20日からスタートし、比較的良い条件のもとで行われた。

コロナ禍でのワインづくり

2020年ヴィンテージを特別なものにしているのは、天候だけではない。新型コロナウイルスの影響もあり、例年とは違う環境下でのワインづくりとなった。

フランスが1回目のロックダウンに見舞われた春は、ぶどう栽培にとって大切な時期だ。ボージョレのワイン生産者たちは、作業や休憩時にお互いの距離を取るなど、感染防止を図りながら、畑の維持に努めた。

ボージョレ地区では、多くの生産者が手積みで収穫している。そのため収穫作業には2万5000人もの人手が必要となる。人集めから感染対策まで、各々のつくり手が努力して最良の収穫環境を整えたという。

2020年のボージョレ・ヌーボーを選ぶポイント

2020年のように乾燥した気候が特徴のヴィンテージに注目したいのが、地中深くに根を張って水分や栄養を吸収できる古樹だ。9月22日付のボージョレワイン委員会のプレスリリースでも、今年のヴィンテージについて「樹齢の高いブドウ樹と深さのある土壌が良い結果を生んでくれました」と書かれている。

また、成熟度が高いことも今年の特徴だ。同プレスリリースには、「収穫したブドウはどれもフェノール熟成がきちんと進んでいましたので、タンクの中のガメイ種はバランスが取れ、しっかりと色づきし、どちらかと言えば黒いフルーツを感じさせるエレガントなアロマのあるワインとなっています」と書かれている。通常ならアロマが薄くなってしまいがちな酸化防止剤無添加のものも、高い成熟度により、例年とは異なる華やかさを見せてくれそうだ。

今年は例年のように大勢が集まって、ボージョレ・ヌーボーの解禁を祝うことは難しい。けれど本来のボージョレ・ヌーボーは、今年のぶどうの出来をいち早く楽しみ、ぶどうの出来を祝うもの。今年は少人数やおうちで、ワインを作ってくれた生産者をねぎらいながら、ボージョレ・ヌーボーの飲み比べを楽しんでみてはいかがだろうか。

<関連リンク>
ボジョレー地方のドメーヌやメゾン ロックダウン下で2020年ヴィンテージのブドウ栽培(PDF)
ぶどうの成熟レポート 2020 年 8 月 4 日号|ボジョレーの早熟エリアが成熟を終える(PDF)
2020年ミレジム速報 -2020年9月22日|爽やかに成熟したボジョレーワインがお待ちしています(PDF)

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About the author /  鵜沢 シズカ
鵜沢 シズカ

J.S.A.ワインエキスパート。米フロリダ州で日本酒の販売に携わっている間に、浮気心で手を出したワインに魅了される。英語や販売・営業経験を活かしながら、ワインの魅力を伝えられたら幸せ