コラム

メゾン・ジョゼフ・ドルーアン|“ブルゴーニュの誇り”とも称される家族経営のメゾン ~知っておきたいブルゴーニュのつくり手

フランスワインの銘醸地であるブルゴーニュには、歴史あるつくり手が数多く存在する。その中で、140年以上の歴史を持つのが、メゾン・ジョゼフ・ドルーアン(Maison Joseph Drouhin)だ。

家族経営のワイン生産者としてはブルゴーニュ地方で最大規模を誇り、ナチュラルな農法で、ブルゴーニュ独自のテロワールやニュアンスを伝え続けている。その功績から、“ブルゴーニュの誇り”とも称される、メゾン・ジョゼフ・ドルーアンを紹介する。

メゾン・ジョゼフ・ドルーアンとは

メゾン・ジョゼフ・ドルーアンは、創業以来、4世代にわたって家族経営を続けるメゾンだ。グラン・クリュ(特級畑)とプルミエ・クリュ(一級畑)を含む数多くの畑を所有するほか、アメリカにも進出するなど、ブルゴーニュを代表するつくり手として知られている。

メゾン・ジョゼフ・ドルーアンの歴史

メゾン・ジョゼフ・ドルーアンは当初、自身で畑を持たず、栽培家やドメーヌからぶどう・ワインを購入し、醸造・熟成・ブレンド・瓶詰めなどを行って販売する、ネゴシアンとして設立された。シャブリ出身の初代ジョゼフ・ドルーアン氏が、1880年にブルゴーニュの優れたワインの製造と販売を目的に創業したのが始まりとなる。

1918年には、2代目のモーリス・ドルーアン氏がメゾンを継承し、その3年後の1921年には、現在もメゾン・ジョゼフ・ドルーアンの畑として有名な、ボーヌのプルミエ・クリュであるクロ・デ・ムーシュを入手した。

1957年以降は、3代目のロベール・ドルーアン氏が、コート・ド・ニュイに優良なぶどう畑を購入するなど事業を拡大し、ジョゼフ・ドルーアンの地位をさらに押し上げた。

また、1987年には、アメリカ・オレゴン州のウィラメットバレーに、ドメーヌ・ドルーアン・オレゴン(Domaine Drouhin Oregon)を設立。アメリカ進出を果たしている。

創業から一貫して家族経営を行っており、現在は初代ジョゼフ氏の曾孫に当たる4人の兄弟が、メゾンを運営している。

ブルゴーニュワインへの貢献

メゾン・ジョゼフ・ドルーアンは、ブルゴーニュワインの普及にも貢献している。

1950年代から高級レストランにボージョレ・ヌーボーを卸すなど、ボージョレ地区のワイン産業に深く関わってきた。メゾン・ジョゼフ・ドルーアンでもボージョレ・ヌーボーを産しており、滑らかな果実味とラズベリーやスミレのような豊かなアロマ、テロワールの魅力的な表現から、世界中で高い評価を得ている。

また、高級ワインの「ロマネ・コンティ」とも縁が深い。2代目のモーリス氏は、ドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティのワインづくりに感銘を受け、その取り扱いを開始。フィロキセラで打撃を受けた際には、「ロマネ・コンティ」の60%を買い取り、経営を支えたという。

自社のワインづくりだけでなく、地域のワイン産業を支えてきたメゾン・ジョゼフ・ドルーアンは、ワインの歴史においても重要なメゾンといえるだろう。

メゾン・ジョゼフ・ドルーアンのワインづくり

メゾン・ジョゼフ・ドルーアンの自社畑は、ブルゴーニュ地方で最大級の規模を誇る。シャブリに32ha、コート・ド・ニュイとコート・ド・ボーヌに32ha、コート・シャロネーズに3haなど、ブルゴーニュ各地に計73haの畑を所有している。こうした自社畑には、ブルゴーニュ地方で著名な区画クロ・デ・ムーシュや、1393年から続くラギッシュ男爵家所有のモンラッシュ、ミュジニー、クロ・ド・ヴージョ、コルトン・シャルルマーニュなどが含まれている。

ビオディナミ農法を採用

“自然の問題は自然の中に回答を求めよ”という信条の下、ぶどう栽培に取り組み、1976年に無農薬栽培、1988年に有機農法、1997年にビオディナミ農法と段階的に転換。2007年には自社畑の全てをビオディナミ農法とし、ブルゴーニュ地方の2大ぶどう品種ともいわれる、ピノ・ノワールとシャルドネを栽培している。

自然に寄り添ったワインづくりに注力しており、畑は馬を使った鋤入れによって耕され、肥料として天然のコンポスト(堆肥)を使用する。また、ぶどうの樹の病害や害虫への対策として、天敵であるバクテリアや捕食動物を利用し、合成農薬の代わりに煎じた薬草を使用している。

また、テロワールの特徴を最大限に表現するための取り組みにも余念がない。ぶどうの樹が養分を求めて地中深くに根を張るように、1haあたり約1万2500本という高密度で植樹を行い、あえて樹の間に雑草を生やしたままにしている。ぶどうの収穫は手摘みで行われ、水切り穴を付けた小さなケースでワイナリーに搬入される。

さらに、メゾンの財産を後世に残すため、自社の苗木施設でぶどうの樹を接木するなど、徹底した品質管理を行っている。

醸造のこだわり

ワインの醸造は、シャブリにある18世紀の古い水車小屋「ムーラン・ド・ヴォードン」などで行われる。歴史的にも価値のあるこの水車小屋は、メゾン・ジョゼフ・ドルーアンを象徴する建物でもある。

ワインづくりの特徴としては、新樽比率が20~30%と低いことが挙げられる。テロワールを反映させたエレガントな味わいを生み出すため、新しい樽材は3年間雨ざらしにし、樽材のタンニンを落とした上で樽をつくる。

さらに、メゾンにそぐわない品質だと判断されれば販売しないなど、徹底した管理のもとで醸造が行われている。

オレゴンでのワインづくりにも着手

メゾン・ジョゼフ・ドルーアンのワインづくりは、フランス国内だけにとどまらない。1987年には、アメリカ・オレゴン州のウィラメットバレーにワイナリーを設立した。オレゴンの大地が持つポテンシャルに注目し、いち早くアメリカ進出を果たしたのだ。

アメリカのドメーヌ・ドルーアン・オレゴンでは、重力を利用して果実やワインを移動させるグラヴィティー・フロー方式を採用している。

醸造所は8階層になっており、最上階層でぶどうを入れ、下層部で発酵を行う。重力で果汁を移動させるため、ポンプによる移動に比べて衝撃が少なく、ぶどうへのストレスを最小限に抑えることができる。そのため、ぶどうの繊細な味わいを損なうことなく、テロワールの特徴を生かしたワインづくりを可能にしている。

おすすめワイン5選

メゾン・ジョゼフ・ドルーアンのワインの特徴は、エレガントさとバランスの良さだ。料理とのペアリングも意識されており、フランス国内のミシュラン星付きレストランをはじめ、世界中の高級レストランやホテルなどで提供されている。ここでは、メゾン・ジョゼフ・ドルーアンのおすすめワインを厳選して紹介する。

メゾン・ジョゼフ・ドルーアン マコン・ヴィラージュ

『ワイン・スペクテイター(Wine Spectator)』のTOP100ベストバリューにも選出された1本。2021年、2018年の「サクラアワード(“SAKURA” Japan Women’s Wine Awards)」ではゴールドを受賞している。すっきりとした飲み口で、キリッとした味わいが特徴的だ。

ぶどう品種:シャルドネ
味わい:辛口・白・ミディアムボディ
参考小売価格:2980円(税別)

メゾン・ジョゼフ・ドルーアン モンラッシェ グラン・クリュ マルキ・ド・ラギッシュ

白ワインの最高峰ともいわれる、モンラッシェのワイン。ラギッシュ家が所有する畑で栽培されたぶどうを使用しており、フレンチオーク樽で長期熟成させることで、深みと風格のある味わいが生まれている。

ぶどう品種:シャルドネ
味わい:白・辛口・フルボディ
参考小売価格:11万円(税別)

メゾン・ジョゼフ・ドルーアン コート・ド・ボーヌ・ヴィラージュ

コート・ド・ボーヌの16の村から、厳選した村のぶどうをブレンドしている。手頃な価格でブルゴーニュワインを堪能できる、人気の1本だ。

ぶどう品種:ピノ・ノワール
味わい:赤・ミディアムボディ
参考小売価格:4800円(税別)

メゾン・ジョゼフ・ドルーアン ヴォーヌ・ロマネ

ブルゴーニュを代表するワイン「ロマネ・コンティ」を生み出す、ヴォーヌ・ロマネ村のぶどうを使用している。偉大なテロワールを感じるエレガントなワインだ。

ぶどう品種:ピノ・ノワール
味わい:赤・辛口・フルボディ
参考小売価格:1万4000円(税別)

メゾン・ジョゼフ・ドルーアン ボジョレー・ヴィラージュ・ヌーヴォー

ボージョレワインの先駆者でもある、メゾン・ジョゼフ・ドルーアンのボージョレ・ヌーボー。果実味の余韻も素晴らしく、テロワールのニュアンスをうまく引き出した1本だ。

ぶどう品種:ガメイ
味わい:赤・ライトボディ
参考小売価格:2400円(税別)

【知っておきたいブルゴーニュのつくり手】
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フィリップ・ルクレール|エネルギッシュな長期熟成ワインで世界を魅了
オリヴィエ・ジュアン|最短3年でエコセール認証を取得! 新世代がつくるビオワイン
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About the author /  KYOKO
KYOKO

出版社勤務を経てフリーランス編集ライターに。旅、グルメ、美容を中心に執筆や編集を行っている。大酒飲みで、旅先でご当地酒を飲むのが好き。最近はビオワインにハマリ中。