コラム

シャトー・メルシャンのSDGsを体感! 椀子ワイナリーの新ツアーとは?

持続可能なワインづくりに取り組むシャトー・メルシャンが、長野県上田市のシャトー・メルシャン 椀子(まりこ)ワイナリーで、SDGsをテーマにした新ツアー「シャトー・メルシャン 椀子ワイナリー SDGsツアー」を開始する。

土地が味わいに影響を与えるワインにとって、その土地で長くワインづくりを続けるためには、環境保全や地域共生、人材の育成は欠かすことのできないテーマだ。

2023年7月7日に開催された「シャトー・メルシャン サステナビリティ戦略説明会2023」の内容から、椀子ワイナリーでSDGsツアーを開催する理由や、ツアーの詳細を見ていこう。

椀子ワイナリーでSDGsツアーをする理由

シャトー・メルシャンには、椀子ワイナリーの他にも、勝沼ワイナリー(山梨県甲州市)、桔梗ヶ原ワイナリー(長野県塩尻市)がある。3つあるワイナリーの中で、なぜ、SDGsツアーを椀子ワイナリーで開催するのだろうか。

椀子ワイナリーとは

椀子ワイナリーは、2003年開場の椀子ヴィンヤードに併設されたワイナリーだ。

2019年のオープン以来、ヴィンヤードに囲まれたワイナリーとして、多くの来場者を受け入れてきた。ワインツーリズムへの取り組みは世界でも認められており、2023年7月12日にスペインのリオハで発表された「ワールド・ベスト・ヴィンヤード(World’s Best Vineyards) 2023」では、世界38位およびThe best vineyard in ASIA(ザ・ベスト・ヴィンヤード・イン・アジア)に選出。日本のワイナリーで唯一、4年連続の選出となった。

椀子ワイナリーが選ばれた理由

観光客にとって魅力的なワイナリー。これは、「地域との共生」をコンセプトとしている椀子ワイナリーが目指している姿でもある。椀子ワイナリーは上田市と協力して、地域ぐるみでワインツーリズムを促進してきた。

椀子ワイナリーでは、観光資源となる景観を保持しながら、ヴィンヤードでネイチャー・ポジティブ(生物多様性が損われるのを止めて、回復傾向へと向かわせること)に貢献する「自然との共生」、子どもの食育の場や学生の学びの場として活用し、人材育成に貢献する「未来との共生」の3つの共生を掲げている。SDGsツアーの開催地としてふさわしい取り組みを、以前から続けているワイナリーだ。

ヴィンヤードが生態系を豊かに

椀子ヴィンヤードがある場所は、かつて遊休荒廃地だった場所だ。ヴィンヤードへの転換に伴い、丁寧な農作業を行うことで、豊かな自然環境へと回復したという。

椀子ワイナリーができる前の様子

椀子ヴィンヤードでは、遊休荒廃地をヴィンヤードにすることで、「自然」にどのような影響を与えているのかを把握するため、2014年から生態系調査や自然回復などの取り組みを続けている。

農研機構との共同研究では、椀子ヴィンヤード内に希少種を含む昆虫168種、植物289種が見つかった。

これは欧米式の垣根栽培や、畑に生える草を生かした栽培方法である草生栽培を取り入れることで、ヴィンヤードが草原化し、生態系が豊かになった結果と考えられる。

環境省が進めている30by30(サーティ・バイ・サーティ:2030年までに陸と海の30%以上を健全な生態系として効果的に保全しようとする取り組み)では、「民間の取組等によって生物多様性の保全が図られている区域」を国が“自然共生サイト”として認定している。椀子ヴィンヤードは「認定相当」に選定されており、事業として農業生産をしている畑では、唯一の選定となる。2023年8月には、正式に認定予定だ。

【関連記事】
シャトー・メルシャン 椀子ヴィンヤードが環境省の自然共生サイト認定相当に選定

新ツアーで体感できるSDGsとは

それでは、新ツアーの詳細を見ていこう。

SDGsツアー概要

「シャトー・メルシャン 椀子ワイナリー SDGsツアー」は、ワインメーカーの案内で、椀子ワイナリーが取り組むSDGsについて体感できる特別なツアーだ。120分ほどをかけて自分の足で歩きながら、ヴィンヤードやワイナリーの取り組みを学び、その生産物を味わうことができる。平均3000歩のツアーとなるので、歩きやすい服装や靴での参加がおすすめとのこと。

2023年は、9月2日(土)と11月11日(土)の開催が決定している。参加には以下のサイトから予約が必要で、各回の定員は10~20人ほどだ。参加費用は1人1万円(税込)となっている。

◆「シャトー・メルシャン椀子ワイナリー SDGsツアー」予約ページ

SDGsツアーの内容

SDGsツアーは、大きく3つのパートに分けることができる。

●ヴィンヤード

椀子ヴィンヤードの景観を楽しみながら、仕込みの際に出るぶどうの搾りかすを堆肥化して再活用する循環型農業や生物多様性への取り組み、近隣の小学校の学びの場となっている様子などを見学する。絶滅危惧種であるオオルリシジミに出会えるかもしれない。

●ワイナリー

ワイナリーでは、土地の高低差による重力を利用して、果実やワインを移動させるグラビティ・フローを採用し、電気の使用量を抑えている。実際にどのようにぶどうが運搬されているのかなどを見ることができる。

●ワインのテイスティング

ツアーの最後には、椀子の気候風土を表現した、ワイナリー限定品を含む計6種のワインをテイスティングできる。

<テイスティングワイン例>
・「シャトー・メルシャン 椀子オムニス」(赤)
・「シャトー・メルシャン 椀子メルロー」(赤)
・「シャトー・メルシャン 椀子シャルドネ」(白)
・「シャトー・メルシャン 椀子ソーヴィニヨン・ブラン」(白)

世界中でサステナブルなワインが注目されているが、実際に足を運び、その取り組みを体感できるのは椀子ワイナリーならではだ。2023年は2回の開催だが、今後も季節ごとに年間5回程度実施される予定とのこと。スケジュールが合う方は、ぜひ足を運んでみてはいかがだろうか。

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About the author /  鵜沢 シズカ
鵜沢 シズカ

J.S.A.ワインエキスパート。米フロリダ州で日本酒の販売に携わっている間に、浮気心で手を出したワインに魅了される。英語や販売・営業経験を活かしながら、ワインの魅力を伝えられたら幸せ