コラム

漫画『神の雫』で話題となった「エヴォディア」のつくり手、ボデガス・サン・アレハンドロ ~解説:スペインのワイナリー

世界的なワイン産地として、さまざまな有名ワインを生み出しているスペイン。そのスペインワインの中で、日本でも高い知名度を誇るのが「エヴォディア」だ。漫画『神の雫』で取り上げられたことで、日本国内での知名度が一気に上昇し、注目度が高まった。

今回は、そのつくり手であるボデガス・サン・アレハンドロ(Bodegas San Alejandro)について紹介する。

ボデガス・サン・アレハンドロとは

漫画雑誌『モーニング』で2004~2014年まで連載されていた『神の雫』は、ワインを題材にしたストーリーで多くのワインファンに愛読されている。作中では多くのワインが取り上げられているが、その1つにボデガス・サン・アレハンドロの「エヴォディア」がある。

『神の雫』に登場したことで、日本国内での知名度が高まったが、実は世界では、それ以前から多くの称賛を受けていた。

約350の組合員を有する協同組合型のワイナリー

1962年創設のボデガス・サン・アレハンドロは、スペインのワイナリーの中では比較的新しい部類に属する。協同組合型のワイナリーであり、組合員数は約350人。ワイナリー名義で、約1100haのぶどう畑を所有している。

海外での評価も高く、イギリスのトム・スティーブンソン氏による『ワインレポート(Wine Report)』では、2007年と2008年にスペインにおける「ベスト・バリュー・プロデューサー」に選出された。

ボデガス・サン・アレハンドロのワインづくりに対するモットーは、「優れたワインには優れたぶどうが不可欠であり、ぶどうの良さを最大限引き出すために醸造の最新技術も取り入れ、ワインの中に、花、アロマ、優雅さ、バランス、ぶどうの持つ味わい、そして気品を表現する」ことだ。これを実現するために、ぶどう畑の生産量や樹齢などの管理にも余念がない。

世界中から称賛を集める「エヴォディア」の魅力

ボデガス・サン・アレハンドロは協同組合型のワイナリーのため、数人のつくり手が共同で開発・生産したワインブランドが複数ある。今回はその中から、日本でも人気が高まっている「エヴォディア」について紹介する。

奇才、ジャン・マルク・ラファージュが生み出したワイン

「エヴォディア」のつくり手は、“奇才”とも称され、「レイシス1 1998」「メメント・オールドヴァイン」などの生産で有名なジャン・マルク・ラファージュ氏だ。

ラファージュ氏は、南フランスのルーション地方を代表するドメーヌ・ラファージュの当主であり、他にもチリやアルゼンチンなどでワインづくりを行っている。

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そんなラファージュ氏が、ボデガス・サン・アレハンドロの所有するぶどう畑に着目。現地のテロワールに詳しいヨランダ・ディアス氏と、アメリカのワイン商エリック・ ソロモン氏とチームを組んで開発されたのが、「エヴォディア」なのである。

ぶどうの栽培エリア

「エヴォディア」には、ボデガス・サン・アレハンドロの畑がある、スペイン・アラゴン州カラタユのガルナッチャ(グルナッシュ)を100%使用する。この品種は、暑さ・寒さに耐え、病気にも強く、痩せた土壌であっても育つため、他の品種では栽培に向かないとされるテロワールでも栽培できる。

ガルナッチャを栽培するカラタユは、前述したように過酷な環境で、一言でいえば“荒れ地”に近い。しかし、それがかえってガルナッチャにとっては、爆発的とも感じられる果実味と、どこまでも深い芳醇さを醸し出せる要因となり得ている。また、そのような環境であるが故に、除草剤や農薬などを使用する必要がなく、害虫の姿もない。これにより、無農薬で自然のままのぶどうが収穫できることは、ワインづくりにとって大きなメリットとなっている。

著名人からの称賛

「エヴォディア」は、著名人からの称賛が絶えないワインだ。その魅力を最初に世界に広めたのが、アメリカの著名なワイン評論家であるロバート・パーカー氏だ。彼は、自身が主宰する『ワイン・アドヴォケイト(Wine Advocate)』誌で、「エヴォディア」の2007年ヴィンテージに88点という高得点を付けた。さらにその後のヴィンテージでも、80点台後半、90点の大台を付けて話題となった。

パーカー氏の他にも、ワイン情報サイト「インターナショナル・ワイン・セラー(International Wine Cellar)」でも高得点を得たり、アメリカのワイン評価誌『ワイン・スペクテイター(Wine Spectator)』上で「ケース買いした」というコメントを載せた評論家がいたりと、称賛の声が相次いでいる。それほどまでに「エヴォディア」は、リリース当時から、衝撃的な味わいだったことがうかがえるだろう。

おすすめワイン5選

『神の雫』で紹介されて以降、日本で圧倒的な知名度を誇る「エヴォディア」。そのラインアップや、その他のおすすめワインも紹介する。

ボデガス・サン・アレハンドロ エヴォディア(赤)

グラスに注ぐと、驚くほど華やかな香りが広がる。色合いは赤紫で、カシスやブラックベリーなどの黒果実のアロマと、燻製されたミネラルが漂ってくる。口に含めば、極限まで深まった果実のジューシーさと甘酸っぱさが広がり、重層的なうま味に感動を覚えるだろう。

ぶどう品種:ガルナッチャ
味わい:赤・ミディアムボディ
参考小売価格:1440円(税別)

ボデガス・サン・アレハンドロ エヴォディア(白)

白い花やトロピカルフルーツの香りを持ち、フレッシュな味わいを楽しめる。アルコールのボリューム感と酸味のバランスに優れ、上品かつ滑らかな1本だ。刺身などの魚介類によく合う。

ぶどう品種:マカベオ
味わい:白・辛口
参考小売価格:1440円(税別)

ボデガス・サン・アレハンドロ エヴォディア プレステージ

深い紫色の外観で、熟した黒色の果実やスパイスの香りに加え、かすかな樽香がある。「エヴォディア」よりも果実味が凝縮されており、程よい酸とタンニンを感じられる。柔らかく、心地よい余韻を味わえる。

ぶどう品種:ガルナッチャ
味わい:赤・フルボディ
参考小売価格:2300円(税別)

ボデガス・サン・アレハンドロ バルタザール・グラシアン オールドヴァイン

樹齢60~80年のぶどうを使用し、古樹ならではの凝縮感を楽しめる。フレンチオークで10カ月間熟成させており、果実味と樽のニュアンスを特徴とする。

ぶどう品種:ガルナッチャ
味わい:赤・フルボディ
参考小売価格:2000円(税別)

ボデガス・サン・アレハンドロ ラス・ロカス ガルナッチャ

2020年の「サクラアワード(“SAKURA” Japan Women’s Wine Awards)」で金賞を受賞。鮮やかなガーネット色で、グラスに注ぐとダークチェリーやブラックベリーのアロマが広がる。果実味とオーク樽のニュアンス、丸みのあるタンニンで飲みやすい。

ぶどう品種:ガルナッチャ
味わい:赤・フルボディ
参考小売価格:3025円(税込)

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関西大学卒 専業ライターを夢見て日々執筆する複業ライター。酒と肉と旅行と昼寝が好き。