コラム

「シリウス」を手掛けるボルドーの大ネゴシアン、メゾン・シシェル ~知っておきたいボルドーのつくり手

フランスワインの2大産地の1つであるボルドーにおいて、“大ネゴシアン”とも呼ばれる、メゾン・シシェル(Maison Sichel)。1883年にボルドーのシャルトロン地区で設立された、老舗ネゴシアン(ワインの流通に携わる業者)だ。

一流シャトーを複数所有し、提供する数々のブランドワインが世界中で高く評価されている。中でも自社醸造のフラッグシップワイン「シリウス」は特に有名で、メゾン・シシェルが培ってきたワインづくりのノウハウが存分に生かされている。

今回は、ボルドーのネゴシアンとして知られる、メゾン・シシェルをご紹介する。

メゾン・シシェルとは

メゾン・シシェルは、ボルドーワインの取引において“大ネゴシアン”と呼ばれるほどの地位を築いており、シャトー・パルメ(Chateau Palme)はじめとした一流シャトーを複数所有している。現在は、家族経営ながら世界50カ国でワインの取引を行い、国内外の70カ所以上の地域で営業販売ネットワークを持つなど、ボルドーワインの取引において確固たる地位を築いている。

メゾン・シシェルの歴史

メゾン・シシェルは、1883年にシシェル家によって、ボルドーワイン取引の中心地、シャルトロン地区に設立された。ちなみに、シャルトロン地区は現在も、シシェル家の活動拠点となっている。

1938年には、シシェル家イギリス分家のアラン・シシェル氏が、3ファミリー共同でシャトー・パルメの所有権を購入。その後65年に及ぶ大規模な投資によって、メドックを代表するワイナリーヘと発展させた。

自社でのワインづくりにも取り組んでおり、1967年にはボルドーで初めての自社醸造庫を建設。それ以降、自社でのワインの醸造や生産全工程の管理を行っている。1985年には、メゾン・シシェルのフラッグシップブランド「シリウス」が誕生。メゾン・シシェルが培ってきたノウハウを生かした「シリウス」は、現在も世界中で高い評価を受け続けている。

メゾン・シシェルが掲げるワインづくりにおける信念は、「ワインは常にテロワールを表現する。しかしその品質は醸造と熟成にかけた情熱が左右する」というものだ。この言葉どおり、現在は厳選された50軒ものぶどう栽培家からぶどうを購入している。高い生産技術で品質を保証し、自社ワイン醸造庫で、顧客のリクエストに合わせてワインづくりに取り組んでいる。

シャトー・パルメなどの一流シャトーを所有

メゾン・シシェルでは、創業から現在に至るまで、複数の一流シャトーの所有権を取得。現在では、シャトー・パルメを筆頭に5つのシャトーを所有している。こうした一流シャトーの存在により、ブランドワインの製造技術の確かさが世界中で高く評価されている。

シャトー・パルメ(Château Palmer)
1938年にシシェル家が購入した、メドック格付け第3級の名門シャトー。マルゴー村、アルサック村、カントナック村、ラバルド村、スーサン村からなるAOC(Appellation d’Origine Controlee、原産地呼称)マルゴーのぶどう畑は、土壌とぶどう品種の相性がよい。そのため、格付け3級ながら、それ以上の実力を持つともいわれている。個性あふれるテロワールを尊重しつつ最新技術を融合させたワインは、世界中のワイン愛好家から高い評価を得ており、最高級のボルドーワインの1つともいわれている。

シャトー・アングリュテ(Château Angludet)
12世紀に創業し、メドック最古級の歴史を誇る。1961年からシシェル家の住居としても使用されている。1758年以来、ぶどう畑のほとんどが改編されることなく受け継がれており、現在も所有畑の93%が250年以上もぶどう畑として利用されている。

シャトー・アルガダンス(Château Argadens)
メゾン・シシェルが2002年に購入した、ボルドーの南にあるサンタンドレ・デュ・ボワ村のワイナリー。購入後、大規模なぶどう畑の再生事業を進め、醸造庫を近代化して育成庫を建設した。このような努力を惜しまないワインづくりを続けた結果、初ヴィンテージワインが「マコン・ウィンコンクール(The Concours des Grands Vins de France in Mâcon)」でメダルを受賞するなど高い評価を得た。

シャトー・ダヴィオー(Château Daviaud)
2020年にメソン・シシェルが所有権を取得したシャトー。メルロー45%、カベルネ・フラン21%、カベルネ・ソーヴィニヨン19%、マルベック15%で構成されるぶどう畑は、一昔前のボルドーを思わせる栽培比率だ。2019年ヴィンテージ以降は、メゾン・シシェルのエノロジスト(醸造家)チームが醸造を担当している。

シャトー・トリヨル(Château Trillol)
1990年に取得したシャトー・トリヨルは、アレクサンダー・シシェル氏が運営を指揮している。現在は、ドメーヌ・ピーター・シシェル(Domaine Peter Sichel)として、環境に配慮した生産に取り組み始めている。

世界で評価されるフラッグシップワイン「シリウス」

1883年の創業以来、ボルドーを代表するネゴシアンとして確固たる地位を築いている、メゾン・シシェル。そのフラッグシップワインが、1985年に誕生した「シリウス」だ。

「バリューボルドーTOP100」に選出

毎年500本以上のボルドーワインから、ブラインドテイスティングによる審査で100本のワインが選ばれる、「バリューボルドー(Value Bordeaux) TOP100」。メゾン・シシェルの「シリウス」は、2011年のバリューボルドーに選出されている。

JALビジネスクラスやサクララウンジでも採用

「シリウス」は、日本でも知名度が高い。中でも「シリウス ボルドー ルージュ」は、JALビジネスクラスに搭載されたほか、JALビジネスクラスのサクララウンジでも採用されている。また、白ワインの「シリウス ボルドー ブラン」も、同じくサクララウンジで採用。ワンランク上のおもてなしに色を添えている。

おすすめのワイン5選

メゾン・シシェルといえば「シリウス」が有名だが、他にもさまざまなワインを展開している。ここでは、おすすめワインを厳選して紹介する。

シリウス ボルドー ルージュ

ブラックカラントやレッドカラント、スミレを思わせる華やかな香り、スパイスの香りが感じられる。芳醇な果実味にタンニンがバランスよく感じられ、口当たりも滑らかなAOCボルドーの赤ワイン。

ぶどう品種:メルロー、カベルネ・ソーヴィニヨン
味わい:赤・フルボディ
参考小売価格:2266円(税込)
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シリウス ボルドー ブラン

グレープフルーツやトーストのような香ばしいアロマ、ソーヴィニヨン・ブラン特有の華やかな香りを特徴とする。爽やかで芳醇な味わいを持つ、バランスのよいAOCボルドーの白ワイン。

ぶどう品種:ソーヴィニヨン・ブラン、セミヨン
味わい:白・辛口・‎ミディアムフルボディ
参考小売価格:2266円(税込)
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シシェル・ソーテルヌ

ボルドーの左岸に位置する、バルサック村、ボム村、ファルグ村、プレニャック村、ソーテルヌ村からなるAOCソーテルヌの白ワイン。アプリコットやマーマレード、蜂蜜、ヘーゼルナッツなどを思わせる甘く華やかな香り。濃厚な果実味に酸味が溶け込み、力強い口当たり。

ぶどう品種:セミヨン95%、ソーヴィニヨン・ブラン5%
味わい:白・甘口
参考小売価格:2849円(税込、375ml)
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シシェル・マルゴー

深く美しいガーネット色のAOCマルゴーの赤ワイン。カシスやブラックチェリー、甘草やナツメグ、シダなどを思わせる香り。豊かな果実味と酸味のバランスがよく、シルキーな渋みも楽しめる。柔らかさの中に優美さがある、エレガントな1本。

ぶどう品種:カベルネ・ソーヴィニヨン50%、メルロー45%、プティ・ヴェルド5%
味わい:赤・ミディアムボディ・辛口
参考小売価格:4378円(税込)
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シシェル・サンジュリアン

AOCサン・ジュリアンの赤ワイン。カシスやプラム、ブラックチェリーの香りと、スミレやカカオ、グローブなどを思わせる複雑なアロマ。芳醇な口当たりで、濃縮された果実味に酸味が溶け込み、渋みの余韻が続くエレガントな味わい。

ぶどう品種:メルロー50%、カベルネ・ソーヴィニヨン50%
味わい:赤・フルボディ
参考小売価格:5610円(税込)
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About the author /  KYOKO
KYOKO

出版社勤務を経てフリーランス編集ライターに。旅、グルメ、美容を中心に執筆や編集を行っている。大酒飲みで、旅先でご当地酒を飲むのが好き。最近はビオワインにハマリ中。