コラム

シャトー ラグランジュ|30年の歳月をかけて復活した名門シャトー ~知っておきたいボルドーのつくり手

フランスワインの銘醸地ボルドーで、中世の時代から歴史を重ねるシャトー ラグランジュ(Chateau Lagrange)。メドック格付け3級の名門シャトーだが、世界大恐慌や世界大戦による経営難で一時低迷。そんなシャトーを復活に導いたのが、日本企業のサントリーだ。

かつての名声を取り戻すため、畑から醸造施設、シャトーの建物に至るまで整備し直し、徹底した管理と丁寧な栽培・醸造に取り組み、格付けにふさわしい高品質のワインを生産できるようになった。そして現在、世界に認められるシャトーへと復活を遂げている。

シャトー ラグランジュとは

シャトー ラグランジュは、ボルドー地方のメドック地区に位置する。長い歴史を誇り、1631年にはその存在が記録されている。

メドック格付け第3級シャトー

シャトー ラグランジュのワイン生産体制が大きく前進したのは、19世紀のことだ。シャトーの所有者だったデュシャテル伯爵は、当時、ボルドーで最大規模の醸造設備を整備し、ワインの生産能力を格段に向上させた。そして1855年に開催されたパリ万博では、メドック格付けで第3級に認定された。

低迷から再び名声を手に

しかし、フィロキセラ(ブドウアブラムシ)禍や世界大恐慌、世界大戦などにより、当時の所有者の経済状況が悪化。その結果、シャトーが荒廃し、ワインの品質も低下してしまう。

低迷していたシャトー ラグランジュに転機が訪れたのは、1983年のことだ。日本のサントリーが、当時の所有者であったセンドーヤ家からシャトーを買収。シャトーを復活させるための改革が始まった。

荒廃した畑を整備するため、ぶどうの樹を植え直し、醸造設備を刷新した。また、ワインの品質向上だけでなく、城館や庭園を修復し、シャトーにかつての威厳を取り戻していく。

こうした30年以上の歳月を費やした改革により、シャトー ラグランジュは再び名声を手にすることとなった。

シャトー ラグランジュのワインづくり

シャトー ラグランジュのワインづくりの哲学は、「一切の妥協を許さず、常に優秀なワインを追求する」ことだ。テロワールと自然環境に配慮しながら、長期的なビジョンに基づいた革新的かつ精緻な生産アプローチを実践しているという。

“ボルドーの神髄”AOCサン・ジュリアン

ボルドーにはおよそ60のAOC(Appellation d’Origine Controlee、原産地呼称)があり、シャトー ラグランジュの118haの畑は、AOCサン・ジュリアンに位置している。サン・ジュリアンは、クラシックなボルドースタイルのワインを生み出す安定感のある名醸地で、“ボルドーの神髄”とも呼ばれている。シャトー ラグランジュは同地で、ぶどう栽培から醸造・出荷まで、徹底した管理のもと丁寧なワインづくりに取り組んでいる。

自然との共生を目指したワインづくり

シャトー ラグランジュは、118haという広大な畑を100以上の区画に分けて管理しており、収穫も仕込みも区画ごとに行う。テロワールに最適な品種を栽培し、収穫は全て手摘みだ。選果は手作業だけでなく光センサーを導入し、茎などを徹底的に除去する。醸造は、それぞれの区画に適したタンクを使用している。

栽培するぶどう品種の比率は、カベルネ・ソーヴィニヨンが67%、メルローが28%、プティ・ヴェルドが5%。赤ワインだけでなく白ワインも産しており、白ワイン用のぶどう畑を11ha所有している。その畑では、ソーヴィニヨン・ブランを80%、ソーヴィニヨン・グリを10%、セミヨンを10%の割合で栽培している。

また、環境に配慮し、自然との共生を目指したワインづくりを行っている。農薬や化学肥料の使用を抑えたぶどう栽培、ソーラーパネルの設置、リサイクル素材の利用、輸送時のCO2排出量を減らすための包装の軽量化など、さまざまな取り組みを実施している。

こうした取り組みの結果、国際標準化機構による環境マネジメントシステム規格「ISO14001」に加え、フランス農業・食糧省による環境価値重視認定「HVE(Haute Valeur Environnementale)」の最高レベル3を取得している。

おすすめワイン5選

テロワールの力を最大限に引き出し、高品質なワインを生み出すシャトー ラグランジュ。偉大なヴィンテージをはじめとする、おすすめのワインを紹介する。
※ぶどう品種の割合、参考小売価格はヴィンテージにより異なる。

シャトー ラグランジュ 2016

“歴史に残る偉大なヴィンテージ”と称賛される1本。ブラックベリーなど黒色果実の香りの中に、スパイスやバニラなどを感じる。豊かな果実味と適度な酸、タンニンがとてもよく調和しているエレガントなワイン。

ぶどう品種:カベルネ・ソーヴィニヨン70%、メルロー24%、プティ・ヴェルド5%
味わい:赤・フルボディ
参考小売価格:1万400円(税別)
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シャトー ラグランジュ 2018

サン・ジュリアンのテロワールがよく反映されたヴィンテージ。偉大なヴィンテージと称賛される、2016年に次ぐとも評される。豊かな果実味とタンニンがよく調和しており、長い余韻を楽しめる。

ぶどう品種:カベルネ・ソーヴィニヨン67%、メルロー28%、プティ・ヴェルド5%
味わい:赤・フルボディ
参考小売価格:9300円(税別)
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レ フィエフ ド ラグランジュ

「シャトー ラグランジュ」のセカンドワイン。平均樹齢35年のぶどうを使用。熟成はオーク樽で13カ月間。ブラックカラントやスパイス、チョコレートの香りを持ち、余韻が長い。

ぶどう品種:カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、プティ・ヴェルド
味わい:赤・フルボディ
参考小売価格:5400円(税別)
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レ ザルム ド ラグランジュ

シャトー ラグランジュが産する白ワイン。かんきつ類やハーブの香りを持ち、しっかりとした酸と果実味を楽しめる。

ぶどう品種:ソーヴィニヨン・ブラン、セミヨン、ミュスカデル
味わい:白・辛口
参考小売価格:5300円(税別)
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ル オーメドック ド ラグランジュ

「シャトー ラグランジュ」を手掛ける醸造チームによる、新しいブランド。オー・メドック地区の畑のぶどうを使用。果実味が豊かな若飲みスタイルのワイン。

ぶどう品種:カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー
味わい:赤・ミディアムボディ
参考小売価格:3000円(税別)
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【知っておきたいボルドーのつくり手】
シャトー・カントメルル|メドック格付け第3級クラスの実力を持つ、隠れた名シャトー
シャトー・ボーモン|サステナブルを実践する、クリュ・ブルジョワのシャトー
レオヴィル3兄弟|サン・ジュリアンを代表する、3つの格付け第2級シャトー
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