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ワインの新興国の中でも、特に新しい産地であるニュージーランド。栽培や醸造に先進的な技術を取り入れたワインづくりで、ワインファンからの信頼や人気を集めている。
今回はそんなニュージーランドを代表するワイナリーの中から、マウントフォード・エステート(Mountford Estate)を紹介する。
マウントフォード・エステートとは
マウントフォード・エステートは、1991年にワイパラ・バレーに設⽴されたワイナリーだ。現在は、日本人醸造家の小山竜宇(たかひろ)氏が経営を引き継いでいる。
マウントフォード・エステートの特徴
マウントフォード・エステートが設立当初にオープンした自社畑は、ワイパラ・バレーを一望できるほど、標高の高い斜面に位置している。創業者のバフィー&マイケル・イートン夫妻は、この地にワイン産地としての可能性を感じたという。
1996年にファースト・ヴィンテージをリリースし、1997年にC.P.リン氏がチーフ・ワインメーカーとしてワイナリーに加わると、イギリスなど国内外から高い評価を受けるブティックワイナリーとなった。台湾出⾝のリン氏は、盲目だが嗅覚と聴覚に優れていることで知られるワインメーカーだ。
2013年にC.P.リン氏が退社。その後、2017年に同社を買収したのが、コヤマ・ワインズ(Koyama Wines)の小山氏だ。2007~2012年に、リン氏の下でアシスタントワインメーカーを務めていた小山氏にとって、マウントフォード・エステートは古巣となる。現在は、同地域にあるクレーター・リム(The Crater Rim)でアシスタントワインメーカーをしていたマシュー・バーバー氏が中心となって、年間約4000ダースのワインを手掛けている。
また、認証は受けていないが、バイオダイナミック農法に基づいてぶどうを栽培。基本的に⼿摘みで収穫し、自然発酵をして、清澄・ろ過をできるだけ避けることで、かつて創業者のイートン夫妻がほれ込んだテロワールとヴィンテージの可能性を引き出すワインづくりを行っている。
⼩⼭⻯宇氏とは
ワイン醸造家の小山氏は、神奈川出身だが、育ったのは台湾やアメリカだ。一度日本で就職したものの、モノづくりをしたいと考え、ニュージーランドのクライストチャーチにあるリンカーン大学で、ぶどう栽培とワイン醸造を専攻した。オーストラリアやドイツ、カリフォルニアなどで醸造研修を経験した後に、マウントフォード・エステートにてアシスタントワインメーカーとなる。2009年には、同社と兼務する形で、自身のブランドであるコヤマ・ワインズを立ち上げた。
コヤマ・ワインズでは、3つの契約畑からピノ・ノワールとリースリングのぶどうを購入し、テロワールと自身のスタイルを表現するワインづくりを行っている。
現在は、ニュージーランドでマウントフォード・エステートとコヤマ・ワインズを手掛けながら、日本のワイン業界にも助力している。2022年8月には、北海道でワインの醸造技術やワイナリー立ち上げを支援するJAPAN WineGrowersの麿直之氏と、ワインブランド「KOYAMARO」を立ち上げている。
マウントフォード・エステートのヴィンヤード
ワイパラ・バレーとは
ワイパラ・バレーは、カンタベリーの中にあるGI(地理的表示)だ。南島のクライストチャーチから北に車で1時間ほどのところに位置している。カンタベリーは非常に冷涼な地域だが、ワイパラ・バレーの内陸側にはサザンアルプス山脈があり、太平洋側には低い山々(テヴィオットデール丘陵地)が連なっている。悪天候や海風から山々によって守られているため、クライストチャーチよりも温暖で、ぶどうは安定して成熟する。
1970年代からワインづくりは行われていたが、近年、特にピノ・ノワールとリースリングが注目されており、急成長をしているワイン産地だ。
ヴィンヤードの特徴
マウントフォード・エステートの畑は、「ゴールデン・マイル」と呼ばれるワイン用ぶどうの栽培に理想的な日照と温暖さ、ワインにミネラル感を与える石灰質の泥灰土壌に恵まれた場所にある。ブルゴーニュと環境が似ており、特にピノ・ノワールやシャルドネの栽培に適している。海抜93mほどの最も標高が高く、ワイパラ・バレーを一望できる場所にある自社畑が、ザ・グラディアント(The Gradient)とザ・ライズ(The Rise)だ。
近年急成長しているワイパラ・バレーでは、樹齢の若い樹が多い。しかし、設立当時に植えられた標高が高い自社畑のぶどうの樹は、樹齢が30年を超えている。樹齢が高いぶどうでつくられたワインは、複雑さがプラスされるのが特徴だ。マウントフォード・エステートは畑を2000年、2008年、2013年に拡張しており、現在は設立当初の約3倍となる9.3haのヴィンヤードを所有。以前は契約畑のぶどうも使用していたが、現在では全てのワインで自社畑のぶどうを使用している。
マウントフォード・エステートでは、公的な認定は受けていないが、ビオデナミ農法を取り入れている。栽培のモットーは、「The low impact high attention」だ。春や夏の成長期には、日差しを受けやすく、風通しが良くなるようにキャノピーを管理。また、肥料は発酵させた魚やオーガニックのものを使用し、散布を最小限に抑えるなど、ぶどうの樹の健康を守るための、最小限の介入を行っている。
現在では、一部のヴィンヤードで密植(みっしょく)を行っている。密植とは、単位面積当たりに植え付けられている株数が、一般よりも多い栽培方法のこと。収量を多くするためではなく、生育期間中にぶどうの果実を通常の畑よりも減らせるため、結果的に風通しを良くすることができる。また、密植することで養分を奪い合うため、根をより深くまで伸ばすことになり、凝縮した味わいのぶどうが収穫できる点もメリットだ。
マウントフォード・エステートのワイン
マウントフォード・エステートでは、ピノ・ノワールとシャルドネ、リースリングを手掛けている。ここでは、2つのシリーズを紹介する。
マウントフォード リエゾン・シリーズ
「リエゾン・シリーズ」は、樹齢の若いぶどうからつくられたワインとなる。
リエゾン(Liaison)とは、「融合する」「つなぐ」といった意味を持つフランス語だ。この名が付けられたシリーズでは、当初は自社畑の樹齢の若いぶどうと、契約農家のぶどうを融合してつくられていた。ぶどう畑の拡大に伴い、2012ヴィンテージからは全て自社畑のぶどうを使用している。
若い樹齢のぶどうは、比較的標高の低い畑に植えられており、密植で栽培されている。若い畑だが、密植により凝縮した味わいのぶどうとなるのが特徴だ。「エステート・シリーズ」と比べると、リーズナブルな価格で楽しめる点も魅力的。
マウントフォード エステート・シリーズ
「エステート・シリーズ」は、樹齢30年以上のぶどうからつくられるプレミアムシリーズだ。
創業当時の1991年に植えられた、標高の高い斜面のぶどうを使用しており、樹齢を重ねたぶどうの複雑な風味が楽しめる。
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