コラム

徹底解説! ワインと食事の相性をアップする「フードペアリングの方程式」と「ブリッジ食材」 ~CWIメガセミナー

ワインと食事が互いの魅力を引き立たせる、フードペアリング。食事とワインがぴったり当てはまると、ワインはもちろん食事も会話も弾むものだが、相性の良さを見極めるのはなかなか難しい。そんなワインと食事の相性を導き出す、「フードペアリングの方程式」があることをご存じだろうか。

誰でも簡単にフードペアリングを楽しめる方程式について、カリフォルニアワイン協会(CWI)がJ.S.A.ワインエキスパートの有資格者を対象に、2019年11月17日に開催したセミナーから紹介していきたい。

「フードペアリングの方程式」とは

フードペアリングの方程式について講義をしてくれたのは、アメリカ大使館農産物貿易事務所専任シェフ(2008年~2015年)を務めた経歴を持つ、フード&ワインスペシャリストの小枝絵麻氏だ。

フード&ワインスペシャリストの小枝絵麻氏(左)

小枝氏は、カリフォルニア料理を中心に、メニュー開発やレストランプロデュースなどを手掛ける。2013年からは、若下静氏とともに、ナパヴァレー・ヴィントナーズ (NVV)駐日代表を務めている。

セミナーの冒頭であいさつをしたカリフォルニアワイン協会国際部長のオナー・コンフォート氏も、小枝氏を「フードペアリングを語らせたら右に出る者はいない人物」と表現し、信頼の厚さがうかがえた。

フードペアリングの方程式は、その名の通り、料理に合うワインを点数で判断するもの。その方程式を解くステップがこちらだ。

ステップ1:使用する食材ごとに点数をつける

●1点食材:脂質が少ないもの
<例>野菜、甲殻類、白身魚、とり胸肉、果物 など

●2点食材:口の中に味わいが残るもの
<例>根野菜、青魚、とりもも肉、赤肉、ロース、乳製品 など

●3点食材:口の中に味わいが残り、脂質の豊かなもの
<例>脂が乗った魚、豚バラ、霜降り肉、レバー類 など

ステップ2:調理方法ごとに点数をつける

●1点調理法:何もしないもの、スチームなどで風味をつけないもの
<例>生、スチーム、湯がく など

●2点調理法:少し味が加わるもの
<例>煮る、炒める、低温調理、グリル、天ぷら、発酵調理 など

●3点調理法:香りをしっかりつけたり、味を濃縮させたりするもの
<例>炭火焼、煮込む、ディープフライ、スモーク、バーベキュー など

ステップ3:味付けごとに点数をつける

●1点味付け:最もシンプルな味付け
<例>塩、白しょうゆ、ナンプラー、チリ、爽やかなハーブ、だし など

●2点味付け:色が薄くて味わいがあるもの
<例>しょうゆ、白・黄色みそ、白ごま、マヨネーズ、サワークリーム、トマトソース、乳製品 など

●3点味付け:色も濃くて味わいがあるもの
<例>濃口・たまりしょうゆ、BBQソース、とんかつソース、ココナッツミルク、オイスターソース、熟成チーズ など

ステップ4:点数ごとに合う品種を選ぶ

●3~4点
・スパークリングワイン
・ソーヴィニヨン・ブラン
・シャルドネ

●5~7点
・シャルドネ
・ヴィオニエ
・ピノ・ノワール

●8~9点
・ジンファンデル
・メルロー
・カベルネ・ソーヴィニヨン

この方程式に当てはめれば、ある程度のペアリングができる。さらにペアリングの相性を上げたい時に加えるのが、「ブリッジ食材」だ。

「ブリッジ食材」とは

ブリッジ食材とは、料理とワインを結び付ける橋渡しをする食材のこと。ワインごとにいくつかのブリッジ食材があるので、1つだけではなく、2つ以上をプラスしてみてもいい。「ワインには複数の香りがあるので、より楽しめるようになる」と、小枝氏は解説している。

それでは、それぞれのワインごとのブリッジ食材を見ていこう。

●スパークリング
(3~4点のフードとのブリッジ食材)
アーモンド、ピーナッツ、蜂蜜、麹
(その他)
レモン、白グレープフルーツ、梅、ブリオッシュ、いちご、サワークリーム

●ソーヴィニヨン・ブラン
(3~4点のフードとのブリッジ食材)
ライム、しそ、ミント、パセリ、ディル、パクチー、レモングラス、しょうが、キウイ
(その他)
グレープフルーツ、はっさく、青りんご、フェンネル、セロリ

また、カリフォルニア産のソーヴィニヨン・ブランには、他の産地にはないトロピカルな香りのものがあるので、トロピカルフルーツやマンゴーも良いという。

●シャルドネ
(3~4点のフードとのブリッジ食材)
レモン、りんご、マカデミアナッツ、ピーナッツ、バジル、ゆず、蜂蜜、キンカン
(5~7点のフードとのブリッジ食材)
ゆず、ごまだれ、酒粕、ココナッツ、イチジク、松の実、蜂蜜、サワークリーム
(その他)
白グレープフルーツ、カシューナッツ、バター、アボカド

樽発酵のシャルドネなら、みりん、白ごま、白みそも良い。

●ヴィオニエ
(5~7点のフードとのブリッジ食材)
マンゴー、蜂蜜、クロテッドクリーム、松の実、ココナッツクリーム、オイル
(その他)
アプリコット、アーモンド、クローブ、パイナップル、オレンジ

特に、カリフォルニア産ヴィオニエは、オレンジと相性が良く、サラダのドレッシングにオレンジ果汁を加えても良い。

●ピノ・ノワール
(5~7点のフードとのブリッジ食材)
クコの実、薄口しょうゆ、ザクロ、バジル、マッシュルーム、ピンクペッパー、ベリー
(その他)
生ハム、チェリー、ビーツ、ローストガーリック、オレガノ、紫オリーブ、生しょうゆ

マッシュルームは、アーシーな香りのピノ・ノワールによく合う。獣のようなワイルドな香りがあるものには、生ハムを加えることで、フルーティな香りが際立つようになる。

●ジンファンデル
(8~9点のフードとのブリッジ食材)
オイスターソース、甜麺醤、甘辛ソース
(その他)
焼き肉のたれ(甘口)、ケチャップ、トンカツソース、こしょう、ジュニパーベリー、干しぶどう、プルーン

プルーンはジンファンデルの持つ甘い香りを抑え、そのワインの持つ他の魅力を引き立たせることができる。

●メルロー
(8~9点のフードとのブリッジ食材)
八丁味噌、黒ごま、オレガノ、チョコレート
(その他)
ナッツ全般、ローズマリー、セージ、デミグラス、甘辛たれ、ディジョンマスタード、黒オリーブ、バルサミコ、ビターチョコレート

隠れているハーバルな香りを引き出したい場合は、ローズマリーやセージがおすすめだ。タンニンを和らげたい場合には、ナッツを合わせるのがコツだ。

●カベルネ・ソーヴィニヨン
(8~9点のフードとのブリッジ食材)
木の芽、タイム、セージ、粒マスタード、マッシュルーム、くるみ、カカオ
(その他)
ビーツ、黒オリーブ、たまりしょう油、バルサミコ、こしょう、ブラウンソース、クローブ、ビターチョコレート

●全てのワイン
(8~9点のフードとのブリッジ食材)
黒にんにく、黒こしょう、八丁味噌、レーズンセージ、黒オリーブ、ベーキングスパイス

●リースリング
マンダリン、青りんご、新しょうが、すだち、キンカン、みょうが

新しょうがやすだち、みょうがを料理にトッピングすることで、リースリングの華やかな香りや隠れているハーバルな香りを楽しめるようになる。

●シラー
クミン、フェンネル、ブラックペッパー、ブルーベリージャム、ベーコン、たまりしょうゆ、バルサミコ、クローブ、プルーン

例えば、野菜の天ぷらを塩で食べるのであれば、合計4点。シャルドネを選ぶなら、定番通りにレモンの搾り汁を加えればいい。ソーヴィニヨン・ブランなら、レモンの代わりにライムの搾り汁を加えるだけで、手軽にブリッジ食材を取り入れることができる。

フードペアリングの精度がアップする、フードペアリングの方程式とブリッジ食材。次回の記事では、この方程式を利用したメニューの例を、カリフォルニアワインの旬が味わえる6本のワインとともに紹介していく。

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About the author /  鵜沢 シズカ
鵜沢 シズカ

J.S.A.ワインエキスパート。米フロリダ州で日本酒の販売に携わっている間に、浮気心で手を出したワインに魅了される。英語や販売・営業経験を活かしながら、ワインの魅力を伝えられたら幸せ