コラム

透明感ある「ブルゴーニュ・パストゥーグラン」のつくり手、ドメーヌ・カスタニエ ~知っておきたいブルゴーニュのつくり手

世界的に名高いフランスのワイン産地ブルゴーニュでは、さまざまなタイプのワインが生み出されている。その中で、近年注目を集めているのが、ピノ・ノワールとガメイをブレンドしてつくる「パストゥーグラン」だ。

その「パストゥーグラン」のつくり手の1つとして、ドメーヌ・カスタニエ(Domaine Castagnier)が挙げられる。ブルゴーニュ地方に多くのグラン・クリュ(特級畑)を抱える家族経営のドメーヌで、高品質なワインを多く手掛けている。ワインづくりは可能な限り化学物質の使用を抑えて行われ、生産されるワインは透明感のある果実味を持つ。5代目当主であるジェローム・カスタニエ氏が指揮を執る現在でも、ドメーヌ・カスタニエのワインは人々を魅了し続けている。

今回は、そんなドメーヌ・カスタニエの畑と5代目当主、ワインづくりについて解説する。

ドメーヌ・カスタニエとは

ドメーヌ・カスタニエは、1970年にブルゴーニュ地方のモレ・サン・ドニに、ヴァデ(Vadey)という名前で設立された家族経営のドメーヌだ。

元・音楽家の5代目当主がつくるワイン

現在は、5代目に当たるジェローム氏が当主を務める。同氏は名門コンセルヴァトワール音楽院で音楽を学んだ後、大統領府の音楽隊などでプロのトランペット奏者として活躍した異色の経歴の持ち主だ。その後、代々伝わるワインづくりを受け継ぐ決心をし、2004年にボーヌのワイン学校に入学すると、2005年に父親からドメーヌを受け継いだ。

ジェローム氏は、自社畑のぶどうを使用してつくったワインをドメーヌ・カスタニエとしてリリースするほか、ネゴシアンとしてのビジネスにも乗り出している。ネゴシアンとは、自社畑以外からぶどうやワインを購入し、醸造・熟成・ブレンド・瓶詰めをして販売するワイン商のことだ。ジェローム氏がネゴシアンとして生産したワインは、自身の名を冠したジェローム・カスタニエとしてリリースしている。

こうした異色の経歴や生産される透明感のあるワイン、そして新たにネゴシアンとしてビジネスを拡大させていく姿が注目を集めている。

ドメーヌ・カスタニエの畑

ドメーヌ・カスタニエは現在、モレ・サン・ドニ、シャンボール・ミュジニー、ジュヴレ・シャンベルタンなどに、合わせて5.5haの畑を所有している。

グラン・クリュが多く含まれており、モレ・サン・ドニのクロ・ド・ラ・ロッシュやクロ・サン・ドニ、シャンボール・ミュジニーのボンヌマール、ジュヴレ・シャンベルタンのクロ・ド・ヴージョなどから高品質なワインを生み出している。

ドメーヌ・カスタニエのワインづくり

ワインづくりでは、可能な限り化学物質を使用しない、リュット・アンテグレ(Lutte Intégrée)を採用している。リュット・アンテグレとは、害虫の天敵となる虫の使用や被覆資材での隔離など、生物防除と物理的防除を組み合わせて害虫対策を行う総合防除農法だ。その運用には、畑の状態や土壌、虫に関しての幅広い知識が必要となる。

こうした農法に加え、ぶどうの収穫量を抑えており、特級畑での収穫量は最大で1haあたり4500Lとなっている。さらに、「自分が食べたいと思わない果粒は全て除くように」というジェローム氏の指示の下、収穫を手摘みで行い、非常に厳しくぶどうを選別している。また、瓶詰めの際には、ワインの中の濁り成分を取り除く清澄とろ過を行わない、ノンコラージュ&ノンフィルターを採用している。

このように、ぶどうの農法から瓶詰めまで、こだわり抜かれたドメーヌ・カスタニエのワインは、その透明感とエレガントさによってフランス国内で高く評価されている。

おすすめワイン4選

優れた品質のワインを提供する、ドメーヌ・カスタニエ。しかし、生産量のうち約7割がフランス国内で消費されてしまい、国際市場に出回る数が圧倒的に少ない。日本でもなかなか手に入らないため、見かけたら購入を検討してみてほしい。

ブルゴーニュ・パストゥーグラン

AOC(Appellation d’Origine Controlee、原産地管理呼称)パストゥーグランの赤ワイン。同じ区画で栽培されたピノ・ノワールを3分の1以上、ガメイを3分の2以下の割合で使用してつくる。ピノ・ノワールだけでつくられたワインに比べ、複雑味が増すという特徴がある。

ドメーヌ・カスタニエが手掛ける「ブルゴーニュ・パストゥーグラン」は、樹齢40年以上のガメイとピノ・ノワールを使用。古樹特有の濃縮した果実味を持ち、非常にエレガントなワインに仕上がっている。

ぶどう品種:ピノ・ノワール、ガメイ
味わい:赤・ライトボディ
参考小売価格:3300円(税込)

クロ・ド・ラ・ロッシュ・グラン・クリュ

グラン・クリュのクロ・ド・ラ・ロッシュで栽培したピノ・ノワールを使用した赤ワイン。力強い果実味とタンニンの中に、ミネラルや酸味も感じる。長い余韻を持ち、長期熟成しても楽しめる。

ぶどう品種:ピノ・ノワール100%
味わい:赤
参考小売価格:2万6400円(税込)

クロ・サン・ドニ・グラン・クリュ

グラン・クリュのクロ・サン・ドニで栽培したピノ・ノワールを使用。ワイン雑誌などで高く評価されている。ダークチェリーやカシスの果実の中に、シナモンなどのスパイス香が徐々に現れ、複雑になってゆく。豊かな果実味とタンニン、程よい酸味を持ち、個性的でエレガントなワイン。

ぶどう品種:ピノ・ノワール100%
味わい:赤
参考小売価格:2万6400円(税込)

エシェゾー・グラン・クリュ(ジェローム・カスタニエ)

ジェローム氏がネゴシアンとして手掛ける、ジェローム・カスタニエのワイン。ブラックベリーなどの果実香のほか、アニスやバニラのような香りを楽しめる。果実味と滑らかなタンニンが特徴的なワインで、長期熟成でも楽しめる。

ぶどう品種:ピノ・ノワール100%
味わい:赤
参考小売価格:3万800円(税込)

【知っておきたいブルゴーニュのつくり手】
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