コラム

ボデガス・カスターニョ|無名産地を一躍有名にしたフラグシップワイン「ヘクラ」 ~解説:スペインのワイナリー

世界的なワイン産地として知られるスペイン国内でも、ワインやぶどうの生産地としては無名とされる地域が少なからず存在する。その中の1つに、スペイン南東部のイエクラがある。

ワイン産地としてはあまり知られていなかったイエクラで、土着品種モナストレルの可能性を信じて設立されたのが、ボデガス・カスターニョ(Bodegas Castano)だ。彼らの審美眼と努力が、今日のモナストレルとイエクラの地位を引き上げたといっても過言ではない。

今回は、そんなボデガス・カスターニョと、世界に知れ渡るきっかけとなったフラッグシップワイン「ヘクラ」について紹介する。

ボデガス・カスターニョとは

ボデガス・カスターニョは、一族で生産から経営まで行っているワイナリーだ。その歴史は、1918年に創設者のフランシスカ・サンタ氏の父親であるペリコ・アントニオ氏が、イエクラでぶどう畑を登記したことに始まる。

ワイナリーの歴史

当時のイエクラは、バルク売りされるぶどうを栽培する地域だった。その後、モナストレルのポテンシャルに気づいたラモンとフランシスカ夫妻が、1950年に末っ子のラモン・カスターニョ・サンタ氏にボデガス・カスターニョの経営を譲渡した。

ここから紆余曲折を経て、1978年にラモン・カスターニョ・サンタ氏とその長男のラモン氏が、初めてモナストレルを用いた自社製ワインを瓶詰めすることに成功。これを皮切りに、ぶどう畑の拡張、購入も推し進め、1985年には輸出も開始した。

1998年には、ラモン・カスターニョ・サンタ氏の末っ子であるダニエル氏も経営に参画。この後生産した「ヘクラ1999」が、2001年にアメリカの著名なワイン評論家であるロバート・パーカー氏の絶賛を受け、一躍ボデガス・カスターニョとイエクラの名を世界に知らしめることになったのである。

ワイナリーの特徴

モナストレルの可能性に託した結果、高い評価を受ける「ヘクラ」を生産するまでに至ったボデガス・カスターニョ。彼らはイエクラのパイオニアとして、原産地としてのイエクラの地位向上にも余念がない。現在ではモナストレルのみならず、国際品種とのブレンドワインの生産にも力を入れている。

そんなボデガス・カスターニョのワインづくりにおける哲学は、“故郷となる地元に根付いているモナストレルへの情熱を抱きながら、先祖からの伝統を受け継ぎ、モナストレルの素晴らしさを広めていく”というものだ。ボデガス・カスターニョならびにカスターニョ一族がモナストレルとイエクラにかける熱い思いが、そのままワインへと昇華されていることがその哲学からもうかがえる。

ぶどう畑の特徴

ボデガス・カスターニョのワイナリーとぶどう畑は、スペイン南東部のムルシア州最北端に位置するイエクラにある。イエクラでは、約2000年以上前からぶどう栽培およびワイン生産が行われており、実はその歴史は長い。1975年には、スペインの原産地呼称制度であるDO(Denominacion de Origen、原産地呼称)に認定された。

ぶどう畑は平均海抜700mの地帯に広がっており、石灰質の土壌で水はけがよい。地中海性気候と大陸性気候の影響を受け、夏は40℃以上まで気温が上昇し、冬は-7℃程度まで下がる。また、年間日照時間は3000時間と長く、年間降水量は300mmと少ない。

イエクラでは、モナストレル以外にも次のようなぶどう品種が栽培されている。

◆黒ぶどう
モナストレル、ガルナッチャ・ティンタ、ガルナッチャ・ティントレーラ、テンプラニーリョ、メルロー、カベルネ・ソーヴィニョン、シラー

◆白ぶどう
アイレン、メルセゲーラ、マカベオ、マルヴァジーア、シャルドネ

おすすめワイン6選

現在、ボデガス・カスターニョでは、モナストレル以外のぶどうを用いたワインも生産しており、そのラインアップは多岐にわたる。

ボデガス・カスターニョ ヘクラ

イエクラの地位向上に一役買った、ボデガス・カスターニョのフラッグシップワイン。モナストレルを100%使用する。美しいチェリーレッドで、グラスに注ぐと完熟した赤いフルーツと甘いスパイスの心地よいアロマが花開く。エレガントかつフレッシュなタンニンと程よい酸味を特徴とし、しっかりとしたコク、長い余韻を味わえる。

ぶどう品種:モナストレル
味わい:赤・フルボディ
アルコール度数:14.5%
参考小売価格:1500円(税別)
おすすめのペアリング:ビーフシチュー、牛すき焼き、バーベキュー、ポークソテー

ボデガス・カスターニョ ヘクラ・オーガニック

オーガニックとあるように、有機栽培を取り入れている。カスターニョ一族の“愛する故郷の土地や環境を守り、持続可能なぶどう栽培を実現していく”ことの意思表示としてリリースされた。EU基準とスペインの認証基準を満たすオーガニック農法で栽培したモナストレルのみを用いており、全工程で動物性の物質を一切使用していないため、ヴィーガンにも対応する。

濃厚なチェリーレッドの外観で、完熟したフルーツとスパイスがエレガントに混ざり合ったアロマを感じる。タンニンはソフトで、酸味も程よい。バランスの良さを随所に感じつつ、滑らかで繊細な余韻が楽しめる。

ぶどう品種:モナストレル
味わい:赤・ミディアム~フルボディ
アルコール度数:14.5%
参考小売価格:1600円(税別)
おすすめのペアリング:どんな料理にも合わせやすい。肉料理、チーズ、スパイシーなメキシコ料理など

ボデガス・カスターニョ カスターニョ・カーサ・カルメラ・カベルネ・ソーヴィニヨン

収穫量を抑え、厳選したぶどうを使用。滑らかなタンニンでエレガントな舌触り、しっかりとした構成を持つ濃厚な赤ワイン。レッドカラントやプラムのフルーティーで複雑な香りを楽しめる。

ぶどう品種:カベルネ・ソーヴィニヨン
味わい:赤・フルボディ
参考小売価格:1300円(税別)
おすすめのペアリング:ハムやソーセージ、白身肉や赤身肉のグリル

ボデガス・カスターニョ カスターニョ モナストレル オーガニック

平均樹齢23年以上のモナストレルを使用。紫がかったチェリーレッドで、プラムのスパイシーな香り、果物のシロップ漬けのような甘い風味を持つ。しっかりとしたコクがありながらシルクのように滑らかで、豊かな果実味を楽しめる。「サクラアワード(“SAKURA” Japan Women’s Wine Awards)」で金賞を受賞。

ぶどう品種:モナストレル
味わい:赤・ミディアムボディ
参考小売価格:1300円(税別)
おすすめのペアリング:肉のグリルやソテー、バーベキュー

ボデガス・カスターニョ カスターニョ・ドゥルセ

アメリカンオークの古樽で6カ月熟成させた、極甘口のワイン。フレッシュなアロマの後、プラムジャムや乾燥イチジク、カカオの奥深い風味が広がる。鮮やかな酸味と濃厚な甘みのバランスが絶妙で、心地よい余韻が長く続く。

ぶどう品種:モナストレル
味わい:赤・フルボディ
参考小売価格:2700円(税別)
おすすめのペアリング:フォアグラやブルーチーズ、カカオ70%以上のダークチョコレート

ボデガス・カスターニョ ドミニオ・エスピナル・モナストレル

「ドミニオ・ エスピナル」は、デイリーに楽しめるカジュアルブランド。フレッシュな若飲みタイプのワインで、ソフトで飲みやすく、初心者も気軽に楽しめる。ジューシーな果実味で、バランスのとれた心地よい味わい。

ぶどう品種:モナストレル85%、シラー15%
味わい:赤・ミディアムボディ
参考小売価格:1100円(税別)
おすすめのペアリング:ハムやソーセージ、ソテーやグリルなどの肉料理

【解説:スペインのワイナリー】
サッカー界のスター、アンドレス・イニエスタが所有するボデガ・イニエスタ
世界一の熟成を誇るスペイン産ワイン「ウニコ」のつくり手、ベガ・シシリア
2つの名門ワイナリーがタッグを組んだ、ボデガス・ベンジャミン・ド・ロスチャイルド&ベガ・シシリア
クネ|王室御用達! スペインワインの歴史を変えたリオハのワイナリー
まさに“キング・オブ・スペイン”! その名を世界にとどろかせるトーレスの魅力に迫る
ボデガス・サン・ヴァレロ|カリニェナを代表する、高コスパワインのつくり手
ボデガ・ビニャ・ノラ|リアス・バイシャスで最も優れたアルバリーニョを産するワイナリー
ボデガス・サン・ロマン|「ウニコ」を手掛けた名醸造家マリアノ・ガルシアのワイナリー
ボデガス・ロダ|「ZARA」オーナーの富豪も選んだ、名醸地リオハのワイナリー
ハメケン・セラーズ|コスパ抜群の「エル・パソ」を送り出す、新進気鋭のワイナリー
漫画『神の雫』で話題となった「エヴォディア」のつくり手、ボデガス・サン・アレハンドロ
ボデガス・フェルナンド・カストロ|6世代続く家族経営の老舗ワイナリー
ボデガス・エル・ニド|「ウニコ」「ピングス」に並ぶ注目のスペインワイン「エル・ニド」のつくり手
ドミニオ・デ・プンクトゥン|ビオワインに情熱を注ぐ、フェルナンデス兄妹のワイナリー
セリェル・マスロッチ|赤い大地が広がるモンサンで100年以上続くワイナリー
ヴィセンテ・ガンディア|ワンコインワインも! 高品質で手頃なワインを生み出す老舗
ボデガス・アタラヤ|ガルナッチャ・ティントレラが生み出す濃厚な味わいと驚異のコスパで注目!
ボデガス・デル・ロサリオ|サクラアワード金賞ワインも! DOブーリャスを代表する協同組合型ワイナリー

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

Twitter で
About the author /  was the writer
was the writer

関西大学卒 専業ライターを夢見て日々執筆する複業ライター。酒と肉と旅行と昼寝が好き。