コラム

将来有望な若手ソムリエが参加した、カリフォルニアワイン協会「カリフォルニアワイン産地 バーチャルツアー」とは

カリフォルニアワイン協会(CWI)は、カリフォルニアワインについての知識を深めることを目的として、影響力のある若手ソムリエに現地のワイナリーを“バーチャル”で体験してもらう「カリフォルニアワイン産地 バーチャルツアー」を開催した。

2020年11月19日・20日と同年12月3日・4日の2回に分けて実施されたバーチャルツアーには、日本ソムリエ協会が選抜した若手ソムリエ11人が参加。コンラッド東京(東京都港区)に設けられた会場と現地ワイナリーをつなぎ、さまざまなワイナリーを訪問した。

「カリフォルニアワイン産地 バーチャルツアー」とは

1グループにつき2日間にわたって開催されたバーチャルツアーでは、日本の若手ソムリエたちが、Zoomを通して1日に5軒のワイナリーを“訪問”。現地のワイナリーが提供するセミナーやワインのテイスティング、質疑応答を通して、ワイナリーについての理解を深めながら双方向のやりとりを行った。ランチタイムには、コンラッド東京で再現された現地シェフのレシピを味わいながら、ワイナリーの担当者との会話を楽しんだ。

今回の企画は、ウェビナーではなく、バーチャルツアーであることを意識した内容だ。各回の最後には、「いつか直接会える日を楽しみにしている」と、参加者とワイナリーの担当者が手を振り合う光景が見られた。

また、移動によるタイムロスがなく、現地を実際に訪れるよりも効率よくワイナリーを回れるというのも大きなメリットだ。時差もないため、参加者から「身体的な負担がなくて助かった」との声もあった。

いずれのグループも、初日はカリフォルニアのノース・コーストにあるワイナリーからスタートし、2日目はセントラルコーストを南下しながらワイナリーを巡った。その日程を見てみよう。

日程:グループ1

●1日目
9:00  ロング・メドウ・ランチ(アンダーソン・バレー)
10:00 センシーズ(ソノマ・カウンティ)
11:00 ジャクソン・ファミリー・ワインズ:ハートフォード・ファミリー・ワイナリー/フリーマーク・アビー(ソノマ・カウンティ/ナパ・バレー)
12:00 ランチ with トーマス・プライス氏(ジャクソン・ファミリー・ワインズのナショナル・ディレクター/マスター・ソムリエ)
13:00 オリン・スウィフト・セラーズ(ナパ・バレー)
14:00 ハンドレッド・エーカー(ナパ・バレー)

●2日目
9:00  ウェンテ・ファミリー・エステート(リヴァモア・バレー)
10:00 メルヴィル・ワイナリー(サンタ・リタ・ヒルズ)
11:00 ビエン・ナシード&ソロモン ヒルズ エステート(サンタ・マリア・バレー)
12:00 ランチ with ウィル・コステロ氏(ビエン・ナシードのブランドマネージャー/マスター・ソムリエ)
13:00 ダオ・ヴィンヤーズ(パソ・ロブレス)
14:00 スターレーン・ヴィンヤード(ハッピー・キャニオン・オブ・サンタ・バーバラ)

日程:グループ2

●1日目
9:00  フランシス・フォード・コッポラ・ワイナリー(ソノマ・カウンティ)
10:00 ブエナ・ヴィスタ・ワイナリー(ソノマ・カウンティ)
11:00 シルヴァー・オーク ・セラーズ(アレクサンダー・バレー)
12:00 ランチ with ドミニク・オルシーニ氏 (シルヴァー・オーク・セラーズのシェフ)
13:00 フロッグス・リープ(ナパ・バレー)
14:00 ロバート・モンダヴィ ト・カロン・ヴィンヤード(ナパ・バレー)

●2日目
9:00  ランゲ・ツインズ(ローダイ)
10:00 J.ロアー・ヴィンヤーズ&ワインズ(パソ・ロブレス)
11:00 ハーン・ファミリー・ワインズ(モントレー・カウンティ)
12:00 ランチ with エヴァン・ゴールドスタイン氏(サンフランシスコ・ワイン・スクールのマスター・ソムリエ)
13:00 タブラス・クリーク・ヴィンヤード(パソ・ロブレス)
14:00 オー・ボン・クリマ(サンタ・マリア・バレー)

各日程とも1日の最後には、カリフォルニワインのエキスパートである山本香奈氏による、日本語での振り返りと追加の解説の時間が設けられた。全て英語で行われたバーチャルツアーの中で、勘違いや取りこぼしなく1日を振り返ることができたと、参加者には好評だった。

サプライズも!

有名ワイナリーとZoomでつながり、やりとりができる貴重な機会となった今回のバーチャルツアーでは、若手ソムリエたちが積極的に発言する姿が印象的だった。

グループ2の2日目、最後を飾ったオー・ボン・クリマでは、参加者たちにうれしいサプライズがあった。オーナー兼ワインメーカーであるジム・クレンデネン氏が、会場に姿を現したのだ。

実は、年末年始を日本の大学に通う息子と過ごすために来日していたのだという。ちょうどこの日は、来日後の外出自粛期間が終わる当日だったこともあり、うれしいサプライズが実現した。

バーチャルツアー後に行われた懇親会にも息子のノックス氏と共に参加し、若手ソムリエたちとリラックスした時間を過ごした。

参加した若手ソムリエたち

今回のバーチャルツアーに参加したのは、日本ソムリエ協会が選抜した若手ソムリエ11人だ。

●グループ1
岩田渉氏(THE THOUSAND KYOTO)
井黒卓氏(ロオジエ)
近藤佑哉氏(銀座レカン)
吉田雄太氏(フォーシーズンズホテル東京大手町)
山田琢馬氏(パレスホテル東京)
大葭原風子氏(ベージュ アラン・デュカス 東京)

●グループ2
森本美雪氏(コンラッド東京)
長谷川大地氏(マンダリン オリエンタル 東京)
佐々木健太氏(L’AS)
井出智也氏(エノテカ)
河りょう氏(エノテカ)

バーチャルツアーを終えて ~参加者のコメント

若手ソムリエたちにとって、今回のバーチャルツアーにはどのような意味があったのか、一部の参加者に話を伺った。手にしているワインは、思い入れのあるカリフォルニアワインだ。

●森本美雪氏(コンラッド東京)

ワインは、「ハートフォード・コート ロシアン・リヴァー ピノ・ノワール 2016」

私の勤めるホテルでは、現在400種類以上のワインを扱っていますが、ワインリストに2ページ以上にわたって掲載されているのは、フランスやイタリア以外ではアメリカ(カリフォルニア)だけです。日本食レストランで選ばれることが多いこともあり、注力すべき産地だと感じていました。ですが、最初に配属されたのがフレンチレストランで、勉強をしたのがオーストラリアとニュージーランドのワインということもあり、カリフォルニアワインに携わる機会はありませんでした。

今まで持っていたリッチなイメージとは違うジンファンデルなど、今回のバーチャルツアーを通して、カリフォルニアワインへの印象は大きく変わりました。産地の特徴を説明するなど、今までカリフォルニアワインを飲んだことがない方にも選んでもらえるようにしたいと感じられました。現在のワインリストには、リッチな味わいのジンファンデルしかありません。新しい流れをつくるなど、今回の経験を今後の業務に生かしたいです。

●長谷川大地氏(マンダリン オリエンタル 東京)

ワインは、「オー・ボン・クリマ ピノ・ノワール イザベル 2016」

ノース・コーストにあるケンゾー エステート ワイナリーで働いていたこともあり、カリフォルニアワインには親しみがありましたが、それ以外の地域には、ノース・コーストの洗練されたワインとは少し違ったイメージを持っていました。そのイメージは、今回のバーチャルツアーで覆されました。

バラエティ豊かなカリフォルニアワインは、価格面で見ても、ノース・コーストのプレミアムなカテゴリーのものから、高品質でありながら価格が抑えられているものまであります。今回のツアーでの経験を生かして、お客さまにカリフォルニアワインの平均的なレベルの高さを伝えることができると思います。

●井出智也氏(エノテカ)

ワインは、「クレンデネン・ファミリー ピノ・ノワール サンタ・バーバラ 2016」

カリフォルニアワインについては、ファン以外の人に手に取ってもらう難しさを感じていました。今回のバーチャルツアーを通して、テロワールの違いは自分が想像している以上に明確にあり、お客さまに伝えなくてはいけない部分なのだと実感しました。

品種や味わいなどのバラエティの豊かさが、カリフォルニアワインにはあります。今回のバーチャルツアーを通して、テロワール好きなブルゴーニュファンの方にも受け入れられやすいワインだと感じられました。産地やつくり手のストーリーをしっかりと語ることで、さまざまな人にカリフォルニアワインの魅力が届くようにしていきたいです。

●河りょう氏(エノテカ)

ワインは、「ケンダル・ジャクソン ジャクソン・エステート キャメロット・ハイランズ・シャルドネ 2018」

私が勤めているエノテカ六本木ヒルズ店では、ブルゴーニュやボルドーを上回るほど、カリフォルニアワインは人気です。そのため、詳しいお客さまが多いです。カリフォルニアワインについて、私自身が勉強できていないところも多く、今回はとても良い機会となりました。今後も今まで掘り下げられていなかったAVAやサブリージョンについて理解を深め、しっかりとお客さまにカリフォルニアワインを提案したいです。

「チャレンジも含めての疑似現地訪問」に

今回のバーチャルツアーでは、参加者と主催者の両方が確かな手応えを感じたようだ。カリフォルニアワイン協会日本事務所の共同代表である扇谷まどか氏と手島孝大氏は、次のようなコメントを出している。

現地訪問のリアルな臨場感は欠けますが、ホストワイナリーはフライオーバーマップやこの企画のために制作したビデオを活用したり、ライブでワイナリーツアーやエンターテインメントを用意してくれ、画面越しに現地を訪問したような錯覚を覚えることさえありました。また、移動時間がかからないため、2日間という限られた時間で比較的数多くのワイナリーを「訪問」することができ、その分カリフォルニアワインの多様性や産地間の違いなどを感じていただけたのも良かったと思います。

今回はあえて全編英語で行い、通訳がない分、情報量が2倍となった毎日のプログラムの終わりに、山本香奈氏による日本語でのまとめと復習タイムを設けました。しかしながら、現地訪問で対面コミュニケーションできる場合とは異なり、ワイナリー側のホストによっては早口になったり、画面越しで聞き取りにくい点があったりと、英語の部分で苦労された参加者はいたかと思います。また質問したくても、そのタイミングを見計らうのは全編英語のプログラムでは日本人にとって容易ではありませんが、そのようなチャレンジも含めての疑似現地訪問であったかと思います。

今回参加いただいたソムリエの皆さまからは、もっとカリフォルニアワインを知りたい、いつかはカリフォルニアワインのスペシャリストになりたい、との声が聞かれました。より広く、深くカリフォルニアワインを知り、その世界を共有してもらえるように、今後もご一緒させていただきたいと考えています。

ワインバザールでは、バーチャルツアーでの各ワイナリーのプレゼンテーション内容も順次紹介していく。ワイナリーが若手ソムリエに伝えたかったことを通して、今後のカリフォルニアワイン選びの参考になれば幸いだ。

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About the author /  鵜沢 シズカ
鵜沢 シズカ

J.S.A.ワインエキスパート。米フロリダ州で日本酒の販売に携わっている間に、浮気心で手を出したワインに魅了される。英語や販売・営業経験を活かしながら、ワインの魅力を伝えられたら幸せ