コラム

ビンタエ|8つのワイナリーを傘下に置く、大規模ワイン醸造グループ ~解説:スペインのワイナリー

数多くのワイナリーがあるスペインの中で、今や10を超えるブランドを展開する大規模なワイン醸造グループ、ビンタエ(Vintae)。過去に不動産事業で大成功し、その豊かな資金をもとにワインビジネスに進出し、複数のワイナリーを傘下に置く。

現在、ビンタエ・グループに属するワイナリーは、その豊かな資金に支えられながら、スペインワインの可能性を追求し、品質の高いワインを産出し続けている。

ビンタエとは

ビンタエは、1999年に不動産事業で成功を収めたホセ・ミゲル・アランバリ・テレーロ氏が、ワイン事業に乗り出したことに始まる。

ビンタエの歴史

彼の故郷であるリオハは、フィロキセラ(ブドウネアブラムシ)の被害を受けた過去がある。ビンタエは、こうしたフィロキセラの襲来によって失われたマスカットの亜種モスカテル・グラーノ・ネヌードを復活させ、ワインをつくるという情熱から始まった。彼の2人の息子も事業に加わっており、 2022年現在、8つのワイナリーを傘下に持つまでに成長している。

ビンタエに所属するワイナリーの総栽培面積は300ha以上で、栽培するぶどうは40品種近くになる。10以上のワインブランドで35種類以上のワインを生産しており、それらのワインは60カ国以上で楽しまれている。

ビンタエ傘下のワイナリー

ビンタエは、不動産事業の成功によって得た豊富な資金をもとに、傘下のワイナリーを支えている。ワインづくりにおいては、ワイン事業統括責任者フランセスコ・リカルド氏、醸造責任者ラウル・アチャ氏、そしてスペインで有名な醸造学者イグナシオ・デ・ミゲル氏の指揮のもと、スペインワインの可能性を追求し、高い品質のワインをつくっている。

ここでは、ビンタエ傘下のワイナリーについて紹介する。

アシエンダ・ロペス・デ・アロ

アシエンダ・ロペス・デ・アロ(Hacienda Lopez de Haro)は、DOリオハに位置し、主に樽熟成の赤ワインを醸造するワイナリー。シンプルであると同時にエレガントなワインをつくることを哲学としている。スペインの昔ながらのワインを新しい形で表現しようとしていて、ワインの醸造からボトルのデザインにいたるまで、伝統とモダンを融合させている。

ボデガス・アロア

ボデガス・アロア(Bodegas Aroa)は、スペイン北部ナバーラ州のデイエッリに位置するワイナリーで、標高600mの丘の上にある。もともとオーガニック食品の販売を手掛けていたオーナーが、1998年にワイナリーを設立した。ぶどう栽培やワイン醸造もオーガニックにこだわり、現在では、ナバーラを代表する自然派ワイナリーとなっている。

アトランティス

「世界的な白ワイン産地にも劣らない、高いポテンシャルを秘めたぶどうの栽培地域を探し、白ワインを醸造する」という、ビンタエのプロジェクトから生まれたのが、アトランティス(Atlantis)だ。

スペイン北部には、小さくてあまり知られていないが、高いポテンシャルを秘めた栽培地があるといわれている。そこで、ビンタエはこうした栽培地を調査した。その結果、大西洋気候の影響を受けるリアス・バイシャス、ヴァルデオラス、リベイロ、チャコリといった地域に高いポテンシャルを見出し、そこのぶどうを使用して、白ワインを生産している。

ビニェードス・エル・パクト

ビニェードス・エル・パクト(Vinedos El Pacto)は、リオハにあるワイナリー。自然に立ち返り、自然のサイクルを大切にして、できる限り人の手によってぶどうを栽培している。そのため生産できる量が限られている。リオハで重要な土地とされるソンシエラ地区やアルト・ナヘリージャ地区の畑のぶどうを使用している。

マツ

ワイナリー名のマツ(MATSU)は、日本語の「待つ」が語源となっている。DO(Denominacion de Origen、原産地呼称)トロに位置するワイナリーで、除草剤や殺虫剤などを使用せず、自然のサイクルを大切にした自然派ワインを産している。樹齢100年を超える、プレ・フィロキセラの古樹のぶどうも使用されている。

プロジェクト・ガルナッチャス

プロジェクト・ガルナッチャス(Proyecto Garnachas de España)は、スペイン各地でガルナッチャの価値を見直し、その本質を表現したワインをつくるというプロジェクトによって生まれたワイナリー。ガルナッチャはスペインを代表するぶどう品種で、スペインのアラゴンが原産と言われている。ガルナッチャの価値は近年見直されてきていて、ビンタエもその価値を改めて認識するため、このプロジェクトを立ち上げた。

バルドス

バルドス(Bardos)は、リベラ・デル・デュエロで最も過酷なエリア、パラモ・デ・コルコスにある。標高940mを超え、夏は40℃、冬は-15℃になる。この厳しい環境を耐え抜いたぶどうを使って、ワインをつくっている。

マエティエラ

マエティエラ(Maetierra)は、リオハのバジェス・デ・サダシア地区に位置する。1999年に、ビンタエが最初に傘下に置いたワイナリーでもある。ビンタエの設立者の夢であった「モスカテル・グラーノ・ネヌード」の復活に成功し、それを使用したワインをつくっている。モスカテル・デ・グラノ・ネヌードは最も香り高い品種で、香りのよいワインができる。

おすすめワイン3選

傘下のワイナリーから、35種類以上ものワインを展開しているビンタエ。その中から、日本でも入手しやすいおすすめのワインを紹介する。

ビエンベビード・プルポ(タコ)

「ビエンベビード」は、ビンタエと日本のワイン輸入販売会社オーケストラが共同開発したワイン。「ビエンベビード」とは、「よく飲む」という意味。ワインラベルを見るだけで、相性の良い料理が分かり、初めてでも手軽に手を伸ばしやすい。

「プルポ」は、タコの描かれたラベルの通り、タコをはじめとした魚介類との相性を考え、アルバリーニョを使用してつくられている。フルーツの香りを持ち、程よい酸味とフレッシュな後味を楽しめる。この他に、鶏が描かれた「ポジョ」は鶏肉や油が少なめの肉との相性を、チーズが描かれた「ケソ」はチーズとの相性を、ハムが描かれた「ハモン」はハムとの相性を考えてつくられている。

ぶどう品種:アルバリーニョ
味わい:白・辛口
参考小売価格:1650円(税込)

マツ・エル・レシオ

ビンタエ傘下のワイナリー、MATSUが生産する自然派ワイン。ワイン名の「エル・レシオ」は、ラベルに印刷された中年の男性からも分かる通り、「中年」の意味を持つ。他に「マツ」からは、青年を意味する「エル・ピカロ」、老人を意味する「エル・ビエホ」と名付けられたワインをリリースしている。

「エル・レシオ」は、樹齢60~100年のぶどうを使用し、フレンチオーク樽で14カ月熟成させている。黒い果実の香りの他にチョコレートやバニラを感じさせる。ティンタ・デ・トロ100%でつくった滑らかなワイン。

ぶどう品種:ティンタ・デ・トロ
味わい:赤・フルボディ
参考小売価格:3520円(税込)

ラ・ガルナッチャ・オルビダーダ・デ・アラゴン

ビンタエ傘下のワイナリー、プロジェクト・ガルナッチャスが生産するガルナッチャ100%のワイン。フレンチオーク樽で10カ月熟成している。このワインは、アラゴンの古い畑のぶどうを使用している。そのため、熟成したタンニンを楽しめるワインに仕上がっている。「アラゴン」の他に、「モンカヨ」「プリオラート」などがある。

ぶどう品種:ガルナッチャ
味わい:赤・フルボディ
参考小売価格:2750円(税込)

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