イタリアといえばフランス・ドイツとともにヨーロッパの重要なワイン産地である。その細長い国土のあちこちに、その土地でしか収穫されないぶどうを使ったワインが数多く存在し、魅力的なイタリアの食事をさらに味わい深いものに演出している。

そんなイタリアの北部東端にあるフリウリ=ヴェネツィア・ジューリア州は、北から吹き下ろすアルプスの涼風と暖かいアドリア海からの南風が混じり、独特の気候を有している。ラマンドロやピコリット、コッリョ、フリウリ・アクイレイア、フリウリ・グラーヴェといった生産地を擁する指折りの白ワイン名産地だ。

フリウリ=ヴェネツィア・ジューリアのワインは、地方品種から優良品種まで幅広く使われた個性豊かなワインが多い。小規模ながらも意欲的な生産者が多く、今後の展開から目が離せない産地である。

【フリウリ=ヴェネツィア・ジューリアの主な生産地】

<カルソ>
カルソはアドリア海沿岸の生産地で、平野部と丘陵地帯の両方にぶどう畑が広がる。土壌にミネラルが豊富に含まれ、個性的な味のぶどうが収穫される。
メインに栽培されるのはマルヴァージアという白ぶどうとテッラーノという黒ぶどうだが、最近はヴィトヴスカという白ぶどうも注目されている。

<コッリ・オリエンターリ・デル・フリウリ>
コッリ・オリエンターリ・デル・フリウリはスロヴェニアと国境を接する場所に位置し、大陸性気候のため夏と冬の寒暖差が大きい。
ミネラルを豊富に含む土壌を利用し、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、ピノネッロ、シャルドネ、ピノ・グリなどが栽培されている。優しい口当たりの白ワインと深みのある赤ワインに仕上がり、どちらも高品質で評判が良い。

<コッリョ>
スロヴェニアとの国境に程近く、小高い丘が重なる地形のコッリョでは、この丘陵地帯を利用したぶどう栽培が行われる。
ワインは赤白ともに造られるが、この地域の白ワインはイタリア国内でも評価が高い。美しい黄金色、キレとフルーティーさを兼ね備えた上質のワインだ。

<フリウリ・ラティサーナ>
地域の一部がアドリア海に面し、海風の影響を受け湿度が高いフリウリ・ラティサーナでは、ピノ・グリージョやシャルドネを使った白ワインや、カベルネ・ソーヴィニヨンやメルローを使った赤ワインが醸造されている。
中でも白ワインは、イタリアの5大白ワイン産地に数えられるほど高品質だ。

<フリウリ・アクイレイア>
フリウリ・アクイレイアはアドリア海に近い産地。温暖な海洋性気候で、日照量もあり、季節による温度差があまりない。
赤ワインはカベルネ・ソーヴィニヨンなどを使った上品な味わい。白ワインは地ぶどうを使った辛口で、魚料理やチーズと相性がよい。

<フリウリ・アンニア>
フリウリ・アンニアはアドリア海に近く、ぶどうの栽培はミネラル豊富な土壌で行われる。海洋性気候で気温差が少なく、夏は海風が暑さを和らげ、冬も湿度がある。
白ワインはトカイ・フリウラーノなどの地ぶどうを使い、フルーティーとしっかりした酸が特徴。赤ワインはカベルネ・ソーヴィニヨンやメルローが使われる。

<フリウリ・イゾンツォ>
フリウリ・イゾンツォでは、イゾンツォ川のほとりにぶどう畑が広がる。夏は暑く、冬もそんなに冷え込まない温暖な気候だ。
この地域は古くから、メルローとカベルネ・ソーヴィニヨンの優れた産地として知られる。また近年、シャルドネやソーヴィニヨン・ブランの評判も上がってきている。

<ラマンドロ>
ラマンドロでは標高380mほどの丘陵地帯でぶどうの栽培が行われている。冷涼な気候の地域だが、小高い丘によりアルプス山脈から吹き下ろす冷風が遮られ、また効率よく太陽を浴びられるため質の良いぶどうが採れる。
栽培されているのは地ぶどうで、辛口ワインと甘口デザートワインの両方が造られる。