近年、チリはワイン業界において旋風を巻き起こしている。この細長い国土は、アンデス山脈と太平洋の両方から恩恵を受け、果実味豊かな赤ワインと溌剌としたフレッシュな白ワインの両方を産出する。19世紀より、多くのヨーロッパの醸造家がこの地に理想のぶどうを求め渡ってきた。

サウス地方はチリのワイン中心地であるセントラル・ヴァレーの南のことを指す。重要な産地として、イタタ・ヴァレー、ビオビオ・ヴァレー、マジェコ・ヴァレーがある。チリの中では降雨量が多く、灌漑を必要としない唯一の地方だ。

このサウス地方では長らくパイスやマスカット・オブ・アレキサンドリアなどが作られ、大衆ワインの生産が多かった。近年のチリワインへの注目に伴い、ヨーロッパの優良品種への植え替えが続々と進められている。今後、有名な生産者の進出が続くと予想される地方だ。

【サウス地方の主なDO】

<イタタ・ヴァレー>
1550年ごろよりぶどうの栽培が開始され、パイスなどが栽培されてきたが、近年カベルネ・ソーヴィニヨンやピノ・ノワールなどに植え替えが進んできている。
十分な日照量を確保できる土地のため、果実味が豊かなワインに仕上がる。冬の降雨が十分にあり、灌漑が不必要だ。

<ビオビオ・ヴァレー>
ボルドーのメドック地区と似たような気候条件を持つビオビオ・ヴァレー。冬から夏にかけての気候の変化が、白ぶどうの味をより複雑にする。
ドイツやアルザスで使われるリースリングやゲヴェルツ・トラミネール、また赤ワインはカベルネ・ソーヴィニヨンやメルローの栽培面積が多い。

<マリェコ(マジェコ)・ヴァレー>
チリ内では最も南の生産地。太平洋沿岸は開けており、海風を遮るものがないために、フンボルト海流による寒風の影響を直接に受ける。
この地でぶどう栽培が始まったのはごく数年前のことだが、フレッシュな酸を持つシャルドネや繊細なピノ・ノワールが注目を集め始めている。