ロンバルディア州はイタリア北部に位置する。州の北部にはアルプス山脈がそびえ立ち、それを越えた先はスイスとなる。アルプスとポー川に挟まれた自然豊かな土地では、個性的なワインが産み出される。州の東端にあるガルダ湖は、イタリア最大の淡水湖として知られる。

ワインの生産地は北部のヴァルテッリーナ渓谷やガルダ湖の南岸、イゼア湖周辺に集中している。ぶどう畑が急斜面にあるため、機械による作業が困難な地域もあり、そうした地域では農作業は人の手で行われる。

栽培されるぶどうはネッビオーロ種が多い。ロンバルディアでは「キアヴェンナスカ」というシノニム(別名)で呼ばれる。バローロやバルバレスコなど、重厚なワインの原料にもなるネッビオーロだが、この地域のワインはいくぶん柔らかな味わいとなる。

【ロンバルディア地区の生産地区分】

<オルトレポ・パヴェーゼ(オルトレポ・パヴェーゼ・メトード・クラシッコ)>
パヴィア県南部のオルトレポ・パヴェーゼのうち、リグーリア州との州境にあたる地域。ピノ・ネーロ種を主な原料とした白とロゼの辛口スプマンテ(発泡ワイン)がメイン。瓶内二次発酵でつくられ、強い果実味とコクを持つ。含まれるピノ・ネーロの割合で名称が変化する。

<ヴァルテッリーナ・スペリオーレ>
スイス国境付近、ヴァルテッリーナ渓谷に沿って東西に細長く展開する。5つのソットゾーナ(ラベルに表示可能な特定地域)を持つ。キアヴェンナスカ主体の辛口赤ワイン。スペリオーレを名乗るには最低24カ月の熟成を要する。

<スフォルツァート・ディ・ヴァルテッリーナ>
同地域で生産される辛口の赤。原料も同じキアヴェンナスカだが、こちらはパッシート(陰干し)によって糖度を高めたものが使用される。

<スカンツォロシャーテ(モスカート・ディ・スカンツォ)>
州中央部のベルガモ県北東部、スカンツォロシャーテ市近郊の丘陵地帯。
モスカートの亜種で、固有品種のモスカート・ディ・スカンツォ100%でつくられる甘口の赤。パッシートにより糖度が高められる。熟成期間も2年を要する。

<フランチャコルタ>
ロンバルディア東部、イゼオ湖周辺の生産地。発泡ワインで有名な産地。
瓶内二次発酵方式による発泡ワインとして、イタリア初のD.O.C.G.認定を受けた。

<サッセッラ>
ヴァルテッリーナ渓谷のソットゾーナのひとつ。ミラノの北東、州最北に位置する都市ソンドリオにある。スイスとの国境に近い。キアヴェンナスカによる赤がメイン。斜面が急なため、畑仕事は手作業で行われる。

<グルメッロ>
ヴァルテッリーナ渓谷周辺ソットゾーナのひとつ。キアヴェンナスカによる赤ワインがメイン。ここも急斜面にぶどう畑があるため、収穫は全て手作業で行われる。

<インフェルノ>
ヴァルテッリーナ渓谷のソットゾーナのひとつ。奥地の急斜面にあり、その険しい地形から「地獄」を意味する地名がつけられた。キアヴェンナスカによる赤がメイン。

<マロッジャ>
ヴァルテッリーナ渓谷のソットゾーナのひとつ。キアヴェンナスカによる赤。より上質なスペリオーレ、リゼルヴァもつくられる。リゼルヴァの熟成期間は30ヶ月。

<ガルダ>
ガルダ湖畔の生産地。固有品種グロッペッロによる赤ワイン(ガルダ・ブレッシアーノ)がつくられる。
近隣のマントヴァ市との間は独立したD.O.C.(コッリ・ガルダ・マントヴァーニ)となる。メルロー種やカベルネ・ソーヴィニヨン種による赤やロゼ、シャルドネ種やトレッビアーノ種による辛口の白がつくられる。いずれも早飲みタイプ。

<ルガーナ>
ガルダ湖の南側からヴェネト州にかけての地域。
トレッビアーノ種の独自改良品種トレッビアーノ・ディ・ルガーナを原料とした白ワインがつくられる。ほどよいアロマと、高いアルコール度が特徴。スペリオーレやスプマンテ(発泡ワイン)もつくられている。