スペインは、フランス、イタリアに次ぐヨーロッパのワイン生産国だ。国際的にはテンプラニーリョ種を使った赤ワインやヴェルデホ種を使った白ワインが有名だが、それ以外にもさまざまな地域で地ぶどうなどを使ったワインが数多く生産されている。スティルワインの他に、へレスで生産される酒精強化ワインのシェリー、カタルーニャ地方の発泡ワインであるカヴァも有名だ。

バレンシア地方はスペイン東海岸沿いに位置し、オレンジとパエリアで有名な地域だ。都市としてのバレンシアは、スペイン第3位の人口を擁する。温暖で雨が少なく、観光客も内外から多く訪れる。生産地はバレンシア、アリカンテ、ウティエル・レケーナ、カステジョンがある。

この地域は以前バルクワインの産地としてあまり評価は高くなかったが、近年になり近代設備の導入などが行われ、お手頃な値段の飲みやすいワインが生産されている。赤ワイン用に、地ぶどうからテンプラニーリョなどへの植え替えが奨励されているが、白ワインには地元品種のメルセゲラが多く使用される。

【バレンシアの主な生産地】

<バレンシア>
バレンシア州のDOバレンシアは、お手頃な価格の赤ワインや白ワインを生産していることで知られる。
赤はモナストレルやグルナッシュ、白はメルセゲラやマルヴァジアを主体に作られる。全体としては辛口の白ワインが多いが、軽やかな甘口ワインも醸造される。赤ワインは軽快なものからカベルネ・ソーヴィニヨンなどをブレンドしたしっかりタイプまで幅広い。

<アリカンテ>
アリカンテはバレンシア州の最も南に位置する生産地だ。土壌は石灰質で地中海性気候の影響を受けるが、内陸に進むと大陸性気候の影響が強まる。
アリカンテではモナストレルを使用した赤ワインが多く、その中にはソレラ・システムの樽で8年以上熟成した甘口ワイン「フォンディリョン」もある。

<ウティエル・レケーナ>
ウティエル・レケーナはバレンシア東部に位置し、州内で最大のぶどう栽培面積を持つ。標高700m前後の高い場所に畑があるが、日中の気温は高く日照量もある。
栽培されるほとんどが黒ぶどうで、土着品種のボバル種が多く、高品質な赤ワインおよびロゼワインが作られる。

<カステジョン>
カステジョンはDOでなくVT(ヴィノ・デ・ティエラ)。バレンシア州の北東に位置する。
カステジョンでは赤、白、ロゼが作られており、赤ワインはボバル、カベルネ・ソーヴィニヨン、グルナッシュ、テンプラニーリョなどが使用される。カステジョンでのワイン作りの歴史は古い。