ボルドーとともに、フランスを代表する醸造地を多数有するブルゴーニュ。その中でも、コート・ドールと呼ばれる地域には有力な醸造地が密集している。

コート・ドールはボーヌの町周辺を境として南北に分けられる。北はコート・ド・ニュイ、そして南に位置するのがコート・ド・ボーヌだ。

この地域には、グラン・クリュ(特級畑)やプルミエ・クリュ(1級畑)を持つAOCも多数存在する。中でも、赤白2つのグラン・クリュを有するアロース・コルトンや、多数の白ワインのグラン・クリュを有するピュリニ・モンラッシェ、シャサーニュ・モンラッシェが有名だ。

赤ワインはピノ・ノワール種、白ワインはシャルドネ種を主原料とする。生産量で見ると赤ワインが多く、コート・ド・ボーヌ全体の80%を占める。しかし、ムルソーやコルトン・シャルルマーニュ、モンラッシェといった優秀な白ワインを産出するAOCも多い。

【コート・ド・ボーヌ地区の主な生産地】

<ペルナン・ヴェルジュレス>
ドール県ボーヌ郡にある村名AOC。ピノ・ノワール種による赤、シャルドネ種による白がメイン。土壌にはリン酸が多く含まれる。

<アロース・コルトン>
この地域で唯一、赤白両方のグラン・クリュを持つ。カール大帝が愛飲したといわれる白ワイン「コルトン・シャルルマーニュ」で有名。

<ショレイ・レ・ボーヌ>
丘陵の砂質土壌が特徴だが、プルミエ・クリュやグラン・クリュを持たずあまり流通量は多くない。代表的な生産者としてはトロ・ボーがいる。

<サヴィニ・レ・ボーヌ>
コート・ド・ボーヌの北に位置し、半円状の扇状地と南北に広がる斜面からなる。オー・ヴェルジュレス、レ・マルコネ、ル・ヴィラージュなどの畑が有名。赤ワインの生産が9割を占める。10年以上の長熟タイプが主流。

<ボーヌ>
ブルゴーニュ地方の中心都市。1/3がプルミエ・クリュとなる。畑の標高ごとに土壌の性質が異なり、丘陵の頂上近くは砂質、中腹部から下は泥炭度や石灰質土壌となる。
赤ワインの生産量が多い。北部は力強く、南部はまろやかな飲み口となるのが特徴。

<ポマール>
デューヌ川南北の丘陵に広がる。レ・ゼプノ、リュジアンなどのプルミエ・クリュが有名。赤ワインはアメリカなど海外でも人気を誇り、かつてはブルゴーニュワインの代名詞でもあった。北岸と南岸の土壌の違いはワインの味に現れ、北側ではしなやかなバランスの良いもの、南側では香りの強いものとなる。
アンリ4世が愛飲したことでも知られる。真紅のワインという意味のヴァン・ヴェルメイユが有名。

<ヴォルネイ>
シャニョの小さな山を背にした、高地の急斜面にぶどう畑がある。石灰質の優良な土壌を有する。プルミエ・クリュでは赤ワインのみが生産され、口当りはいくぶん繊細で柔らか。

<モンテリ>
コート・ド・ボーヌの中心に位置する。土壌は石灰岩に粘土と泥灰土が重なったもの。
赤ワインはヴォルネイよりもさらに穏やかで、女性的な味わいが特徴。

<ムルソー>
ボーヌから南西へ8kmのところにある。シャルドネによる白ワインはブルゴーニュの3大白ワインにも数えられ、優秀なプルミエ・クリュを多数有する。
中でもレ・グッド・ドールのワインは「金のひと雫」と称えられ、アメリカ大統領トマス・ジェファーソンが愛飲したことでも知られる。

<オーセイ・デュレス>
コート・ド・ボーヌからオート・コートへ続く谷に位置する。気候は温暖だが日較差が大きい。高評価なプルミエ・クリュを9つ有する。ピノ・ノワール種による赤が生産量の2/3を占める。口当たりはほどよく、あまりタンニンも強くない。

<サン・ロマン>
モンテリの西奥に位置する。小川に沿った泥灰土土壌の丘陵にぶどう畑が広がる。気候は他地域に比べ冷涼。この地域は白ワインの生産量のほうが多い。また、ワイン樽の製造業者が多いことでも知られる。

<ピュリニ・モンラッシェ>
ボーヌから南へ10kmの位置にある。モンラッシェをはじめ多数のグラン・クリュ、プルミエ・クリュを有する。
世界最高峰の辛口白ワインが生み出される地として名高い。シャサーニュ・モンラッシェのものよりも、少し酸味が強い。三銃士の作者アレクサンドル・デュマが絶賛したことでも知られる。

<サン・トーバン>
ピュリニ・モンラッシェの少し西の高地に位置する。20のプルミエ・クリュを有し、これは全区画の2/3にあたる。褐色土壌ではピノ・ノワール種が、白土ではシャルドネ種が栽培され、それぞれ赤・白ワインの原料として用いられる。
集落の一つ「ガメ」は、ボージョレーの原料として用いられるぶどう、ガメ種の名前の由来といわれている。

<シャサーニュ・モンラッシェ>
辛口白ワインで世界的に有名なAOC。グラン・クリュであるモンラッシェを、同じく白ワインで有名なピュリニ・モンラッシェと共有している。ワインは緑がかったラメ入りの黄金色となるのが特徴。
赤は評価も知名度も隠れがちだが、かつては赤の生産のほうがメインで、現在もその長い歴史で培われた技術が用いられている。

<サントネー>
コート・ド・ボーヌの南、標高300mから500mの高地に位置する。土壌は石灰岩質。
ワインの生産は赤がほとんどで、濃密で余韻が長いものとなる。

<ラドワ・セリニ>
ボーヌ市の東側に位置する村。「コート・ドールの26村」の一角を占める。
カール大帝の所有していたグラン・クリュ、コルトン・シャルルマーニュが有名。英国王室御用達の白ワインが生産される。

<マランジェ>
1988年に近隣3村が統合されてできたAOC。コート・ドールとソーヌ・エ・ロワールの境界に位置する。
知名度は低いがほぼ半分がプルミエ・クリュ。優秀な作り手によって品質が向上し、コストパフォーマンスの高さで注目を集めつつある。