フランスのワイン産地として知られるプロヴァンスは、コート・デュ・ローヌの南側に位置し、地中海の沿岸コート・ダジュールから少し内陸に入った地域に広がる。フランスにおいて最もワインづくりの歴史が古い地方だ。

プロヴァンスの気候は温暖な地中海性気候であり、ロゼを中心に赤や白のワインもつくられている。

プロヴァンスでつくられるワインに使われるぶどう品種は、赤ワインならグルナッシュ種、シラー種、サンソー種、ムールヴェードル種など、白ワインならクレレット種、ユニ・ブラン種などが使われ、ローヌ南部と似た構成のワインが多い。

代表的なAOCとしては、コート・ド・プロヴァンス、コトー・ヴァロア・アン・プロヴァンス、バンドール、カシスなどがある。

【プロヴァンスの主なAOC】

<ベレ>
ニース西側の丘陵地帯に広がる産地だが、現在ぶどう畑が存在するのは50ヘクタールほどと驚くほど小さく、生産本数も限られている。急傾斜の斜面のため手作業で手入れされ、高品質で個性的なワインが作られている。

<コート・ド・プロヴァンス>
エクス・アン・プロヴァンスとニースの間に広がる広大なぶどう産地で、十分に太陽を浴びたぶどうの健康的な味わいが特徴。生産量の80%はロゼワインで、サンソー種、グルナッシュ種、ムールヴェードル種などを使用したフルーティーな若飲みロゼワインが多い。

<コトー・ヴァロワ・アン・プロヴァンス>
プロヴァンス伯爵の避暑地であったブリニョル周辺に位置し、沿岸部よりもわずかに涼しい気候の地域だ。生産量の9割をロゼワインが占め、さわやかながらも飲みごたえのあるワインを生み出している。

<バンドール>
ムールヴェードル種を50%以上使用した、個性的なインパクトを持つ赤ワインが代表的な地区。港に近いため19世紀より海外にも輸出されていたこの地区のワインは、プロヴァンス地方でも最良のもの1一つとされている。

<カシス>
プロヴァンス地方で最初にAOC認定されたマルセイユ東方の小さな港町。港に向き合う谷の急斜面に、石灰岩系土壌の畑がある。生産ワインは圧倒的に白ワインが多く、フルーティーでマイルドな辛口な味わいは、ブイヤベースとの相性が良いことで知られている。

<パレット>
プロヴァンス地方の中で最も小さなAOCであり、ルネ1世がこの地でワイン作りを始めたと言われている。それゆえ伝統的な製法が継承されており、他では見られない古いぶどう品種も残っている。赤ワインはグルナッシュ種とムールヴェードル種、白ワインはクレレット種を主体とする。

<コトー・ド・ピエールヴェール>
プロヴァンス地方で最も北に位置するAOC。アルプス山脈によってミストラルから守られ、ぶどうが熟しやすい環境にある。グルナッシュ種が主に栽培され、果実味が豊かなロゼワインと赤ワインが生産量の9割を占める。

<コトー・デクス・アン・プロヴァンス>
風光明媚な街、エクス・アン・プロヴァンスを中心とする生産地であり、デュランス川を挟んでローヌ地方南部の「リュベロン」のAOCと接している。生産ワインの8割はロゼワインであり、15%が赤ワイン。白ワインはほとんど作られていない。

<レ・ボー・ド・プロヴァンス>
プロヴァンス地方の最西端に位置し、アンピール山脈の西側に畑が広がっている。土壌は小石が多く、水はけが良い。赤ワインの生産シェアが6割を占め、長期熟成の可能なしっかりとした味わいが特徴的だ。