アメリカは、指折りのプレミアムワインの宝庫・カリフォルニア州以外にも、オレゴン州、ワシントン州やニューヨーク州などで醸造されるワインが注目を集めている。

ニューヨーク州は歴史的に、アメリカ国内でワイン用ぶどうの栽培が最初に始まった場所であり、ハドソン川沿いには歴史の古いワイナリーも多い。現在州内でワイン作りが最も盛んなフィンガー・レイクスAVAや、ロングアイランドAVAなど、川、湖といった水資源を有効に利用したワイン作りが行われている。

フィンガー・レイクスは湖が気温を調節してくれるために冷涼な地域が多く、リースリングやピノ・ノワール、シャルドネを使ったワインがメインで、特に白ワインの評判が高い。

一方、ロングアイランドは海洋性気候でフランスのボルドーと似た条件を持ち、メルロー、カベルネ・ソーヴィニヨンなどを使ったワインに注力している。

【ニューヨークの主な生産地】

<ナイアガラ・エスカープメント>
ナイアガラ・エスカープメントはナイアガラの滝の近くにある生産地。ニューヨーク州で最も温暖な地域の1つだ。
石灰質の土壌は水はけがよく、ピノ・ノワールを中心にメルローやカベルネ・ソーヴィニヨン、シャルドネ、リースリングなどが栽培される。ぶどう以外にもフルーツ栽培が盛んな土地で、いろいろなフルーツワインも醸造される。

<ザ・ハンプトンズ・オブ・ロングアイランド>
ザ・ハンプトンズ・オブ・ロングアイランドは、ニューヨーク州ロングアイランドの南側に位置する生産地。ボルドーに似た海洋性気候だ。砂質や砂利質の水はけ良好な土壌を持つ。
小さなAVAのためワイナリーは4つ。カベルネ・ソーヴィニヨンやメルロー、シャルドネが栽培され、シャルドネからつくられた白ワインはロングアイランド名産の牡蠣と相性抜群だ。

<ロングアイランド>
ロングアイランドAVAは、ノース・フォーク・オブ・ロングアイランドとザ・ハンプトンズ・オブ・ロングアイランドを含む広域AVAだ。ボルドーと似た海洋性気候を有し、「ニューヨークのボルドー」と呼ばれる。
メルローやカベルネ・ソーヴィニヨン、シャルドネなどが栽培され、特にメルローに力を入れている。海に囲まれているからか、ミネラル感のある上品なワインを作っている。どの地域も土地代が高くワイナリーは小規模にならざるを得ないが、良質の高級ワインを作っているところが多い。

<ノース・フォーク・オブ・ロング・アイランド>
ノース・フォーク・オブ・ロングアイランドは、ニューヨーク州ロングアイランド北部の生産地だ。
海風の影響で温暖なロングアイランドの気候を生かし、メルローやカベルネ・ソーヴィニヨンなどのボルドー品種が多く作られる。中には大統領晩餐会のワインとしてセレクトされたものもある。

<レイク・エリー>
レイク・エリーは五大湖の1つであるエリー湖の付近に位置し、全米一の大ぶどう生産地として知られる。湖の恵みを受け、栄養分の豊かなぶどうが栽培できる。
主にメルロー、カベルネ・フラン、シャルドネ、リースリング、ゲヴェルツトラミネールなどが作られ、全体的にまろやかで芳醇な香りを伴う優しいワインだ。

<ハドソン・リヴァー・リージョン>
ハドソン・リヴァー・リージョンは、ニューヨーク北部のハドソン川沿いに広がる生産地。川沿いにぶどう畑が点在する。気温は低いが日照量は豊富で、石灰質の水はけのよい土壌も良質のぶどう収穫につながる。
カベルネ・フラン、メルロー、カベルネ・ソーヴィニヨン、シャルドネ、リースリングなどが栽培され、上品な味わいのワインを生み出す。

<セネカ・レイク>
セネカ・レイクはニューヨーク北西部にあるAVA。フィンガー・レイクスAVAのサブリージョンであり、セネカ湖のまわりに産地が広がる。湖の調節効果で周りの気温は安定し、良質のぶどうが収穫できる。
リースリング、ピノ・グリ、カベルネ・ソーヴィニヨンの栽培がされており、ワインはリーズナブルな値段のためデイリーワインとして楽しまれることが多いが、白ワインは時に優良な評価が付く。

<カユガ・レイク>
カユガ・レイクはフィンガー・レイクスAVAのサブリージョンであり、ニューヨーク北西部に位置する。ぶどう畑の多くは湖の西側の急斜面に展開し、湖の調節効果がもたらす穏やかな空気の中、生育する。
ミネラル分の豊富なリースリングの白と、カベルネ・フランやピノ・ノワールを使用した赤が代表的だ。ニューヨーク州の中でトップクラスの生産量を誇る。

<フィンガー・レイクス>
フィンガー・レイクスはニューヨーク北西部の広域AVAで、五大湖の近くだ。およそ120のワイナリーがあり、ぶどうの研究なども盛んに行われている。湖からの風により気温の上昇が抑えられ、夏も穏やかだ。
冷涼な気候を生かし、リースリングやピノ・ノワール、シャルドネが多く生産され、特に白ワインは国際的にも評価が高い。