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バニュルスは、フランスの最南端、スペインとの国境に程近いルーション(ラングドック・ルーション)地方に位置するAOCだ。また、そこでつくられる甘口ワインもバニュルスと呼ばれる。
バニュルスの赤ワインは種類が豊富。遅摘みでほとんど干しぶどう化した果実を用いて、ボンボンヌと呼ばれるガラス瓶や木樽で熟成させる。30Lほどの大きなガラス瓶に入れて外に置かれたワインは、太陽の日差しをたっぷり受けることで甘さと力強さを併せ持ち、ルーション地方の天然甘口ワインの中でも濃厚な味わい・香りとなる。
味わいの特徴―フランス産の中でも別格の天然の甘口
バニュルスワインは天然甘口ワイン(Vin Doux Naturel:VDN=ヴァン・ドゥー・ナチュレル)で、赤・白・ロゼがある。主要品種は、グルナッシュ・ノワール、グルナッシュ・ブラン、グルナッシュ・グリ、ミュスカ・ア・プティ・グラン、ミュスカ・ダレキサンドリー、マカブー、トゥルバで、グルナッシュを50%以上(グラン・クリュは75%以上)使用することが規定されている。補助品種としては、カリニャン、サンソー、シラーが用いられる。
バニュルスワインは酒精強化ワイン(フォーティーファイド・ワイン)の1種で、ぶどう果汁を発酵させる途中でブランデーなどのアルコールを加えて、発酵を停止させる。
途中で発酵が止まるため、アルコール度数が高まると共に天然の糖分がワインに多く残留することになり、結果として甘口でコクのある濃厚な味わいのワインが出来上がる。
一度は試してみたいおすすめ3本
マス・ブラン バニュルス・オール・ダージュ・ソストレラ NV(ハーフボトル)
バニュルス・コリウールの名門と評されるドメーヌ、マス・ブランが手がける上質なワイン。使った分をつぎ足して熟成させる、ソレラシステムを用いて醸造している。1日の終わりにデザートワインとして楽しむのにぴったりな、ハーフボトルサイズ。
タイプ・味わい:フォーティファイド・甘口
生産者:マス・ブラン
産地:ラングドック・ルーション
ぶどう品種:グルナッシュ95%、ムールヴェードル5%
参考小売価格:7150円(税込、375ml)
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ドメーヌ・ピック・ジョアン バニュルス・リマージュ 2015
おしゃれなディナーのお供におすすめのバニュルスワイン。グルナッシュ・ノワールを100%使用した、ぜいたくな味わいが魅力だ。フレッシュな果実の味を感じられる。少しくせのある青カビのチーズやメロンを使った前菜に合わせたり、イチジクやバニラアイスクリームと合わせるのもおすすめ。16~20℃くらいの温度で楽しんでみよう。
タイプ・味わい:フォーティファイド・甘口
生産者:ドメーヌ・ピック・ジョアン
産地:ラングドック・ルーション
ぶどう品種:グルナッシュ・ノワール100%
参考小売価格:3300円(税別)
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マス・デ・ヴァン 1965
記念日や大切な人への贈り物を探している人におすすめなのは、ヴィンテージのバニュルスワイン。バニュルスワインならではの伝統的な方法で醸造した後、長い熟成期間を経て出来上がった至極の1本だ。ドライフルーツのような甘い香りやナッツのような香ばしさ、芳醇かつ濃厚な甘い口当たりなど、複雑かつ華やかな味を楽しめる。
タイプ・味わい:フォーティファイド・甘口
生産者:マス・デ・ヴァン
産地:ラングドック・ルーション
ぶどう品種:グルナッシュ・ノワール100%
参考小売価格:2万6500円(税込)
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天然甘口ワインを生む気候・風土
バニュルスは、南フランスのワイン産地ルーション地方の南部に位置する。ピレネー山脈東端にある、バニュルス・シュル・メールとセルヴェール、コリウール、ポール・ヴァンドルの4つの村が産地に当たる。この地方一帯は、傾斜40度以上もの急斜面や、狭い段丘にぶどう畑が広がる。その厳しい環境から機械が入ることができず、耕作にはロバを使い、収穫は手作業で行われてきた。
土壌はシスト質で、ぶどうの根が地中に深く伸びてミネラルを豊富に吸収する。夏は暑く乾燥し、冬は穏やかな天気の日が多く、雨がほとんど降らない典型的な地中海性気候だ。年間300日以上もの日照を受けるため、糖度が高く良質なぶどうが栽培される。
また、トラモンタンと呼ばれる乾いた冷風が吹くことから病害のリスクが少なく、ぶどうの栽培に適した条件が備わっている。
バニュルスワインの人気の秘密―チョコレートとの相性抜群!
バニュルスワインは、渋味が少なく、天然の甘みを特徴とする。フランス産甘口ワインの中でも別格とも言えるその濃厚な甘みは、チョコレートとの相性が抜群だ。
一般的なワインに甘いチョコレートを合わせると、ワインの渋味と酸味が際立ってしまう。一方でバニュルスワインは、酸味が少なく甘みが強いため、お互いの風味を引き立て合い、おいしく味わえる。
甘口が好きな人は、仕事や家事などで疲れた1日の終わりに、濃厚で甘いワインを片手にチョコレートを頬張れば、リラックスした時間を楽しめるだろう。
おいしいワインの選び方は? リマージュなど醸造の違いやM.シャプティエなど有名ワイナリー、当たり年を押さえておこう!
バニュルスワインは、大きく分けて「バニュルス・リマージュ」「バニュルス・トラディショネル」「バニュルス・アンブレ」「バニュルス・ブラン」「バニュルス・ロゼ」の5つのタイプがある。
バニュルス・リマージュ
果汁を圧搾する前に酒精強化し、新鮮な果実味を保つために短期間で瓶詰めされる。
バニュルス・トラディショナル
主にグルナッシュとグルナッシュ・グリを使用し、3年以上、酸化熟成させる。
バニュルス・アンブレ
主要品種は、グルナッシュ・ブラン、グルナッシュ・グリ、トゥルバ、マカブー。発酵前に果皮と果汁を分けて醸造し、3年以上、熟成させる。
バニュルス・ブラン
「バニュルス・アンブレ」と同じ品種をメインに使用。酸素をなるべく排除し、還元的に熟成させる。
バニュルス・ロゼ
使用品種は「バニュルス・アンブレ」「バニュルス・ブラン」と同様だが、色付けのためグルナッシュ・ノワールを使用する。
1952年、1957年、1961年、1962年、1966年、1969年、1970年、1972年、1978年、1979年は出来が良く、高い価格・値段で取引されるものが多い。
バニュルスワインの生産者のうち、特に高い評価を得ているつくり手として挙げられるのは、カーヴ・ド・ラベ・ルー(La Cave de l’Abbe Rous)、M.シャプティエ(M. Chapoutier)、マス・ブラン(Mas Blanc)、ピエトリ・ジェロー(Pietri Geraud)、エ・テロワール・デュ・シュッド(Domaines et Terroirs du Sud)、トラジネール(Domaine du Traginer)だ。
中でも1808年に創業したM.シャプティエは、ローヌ地方を代表するワイナリーで、テロワールを尊重したワインづくりに取り組んでいる。世界のワイン専門家たちから高い評価を得ており、M.シャプティエがつくるワインは、一種の芸術作品と評されている。
最高品質の「バニュルス・グラン・クリュ」
バニュルスは、ルーション地方でも早い時期に当たる、1936年にAOC(Appellation d’Origine Controlee、原産地管理呼称)として認定された。また1962年には、より厳しい規規定の「バニュルス・グラン・クリュ」がAOC認定されている。
ぶどう品種はグルナッシュ75%以上、濃厚で力強い香り
赤のVDNにのみ認められているバニュルス・グラン・クリュは、グルナッシュを75%以上使用してつくられ、オーク樽で最低30カ月間熟成させて完成する。そうしてつくられた赤ワインは、濃厚で力強いアロマが感じられ、タンニンのほろ苦さがチョコレートとの相性をより高めてくれる。
覚えておきたい代表的なワイン一覧
ビラ オー バニュルス リマージュ/M.シャプティエ
バニュルス キュヴェ・デュ・ドクトル・アンドレ・パルセ/マス・ブラン
バニュルス サンカン・ダージュ/ドメーヌ・ド・バヨリィ
バニュルス・グラン・クリュ /ドメーヌ・エ・テロワール・デュ・シュッド