アメリカはその面積にしてはワインの生産量が限られているが、カリフォルニアを筆頭に多くの州でワインが醸造されている。中でもワシントン州やオレゴン州のワインは近年脚光を浴びてきており、地形がもたらすミクロクリマを生かした繊細なワインづくりが行われる。

ワシントン州の中でも気候はさまざまだが、産地の多くはカスケード山脈の東側に位置する。乾燥したエリアがほとんどで、日照量は十分だ。近年脚光をあびるワルーク・スロープやホース・ヘブン・ヒルズ、レッド・マウンテン、ヤキマ・バレーなどの生産地がある。

このワシントン州では、日当たりの良いエリアをメインにカベルネ・ソーヴィニヨン、メルローなどのボルドー品種のほか、ジンファンデルやシラーが栽培される。

白ぶどうについてはシャルドネの生産量が多いが、一部アルザスやドイツ系のぶどうも作られている。

赤白ともに、果実味の詰まったエレガントなワインが世界中で評判を呼びつつある。

【ワシントンの主な生産地】

<ピュージェット・サウンド>
ピュージェット・サウンドはシアトルを中心としたピュージェット湾岸にある。カスケード山脈の西側に位置し、寒流や偏西風の影響を受ける場所だ。ワシントン州のAVAとしては、唯一カスケード山脈の西側に位置する。
マドレーヌ・アンジュヴィーヌというロワール原産のぶどうやミュラー・トゥルガウなどの白ぶどうが栽培されている。

<ヤキマ・バレー>
ヤキマ・バレーはワシントン州南東にある生産地で、西にカスケード山脈を望む。地区内に3つのサブリージョンを持つ。山脈の東側は大陸性気候、西側は海洋性気候に属する。
シャルドネを使った白ワイン、カベルネ・ソーヴィニヨンやメルローなどボルドー品種を使った赤ワインなどがある。豊富な日照量と寒暖差により、凝縮感のあるぶどうが育つ。

<レッド・マウンテン>
レッド・マウンテンはヤキマ・バレーのサブリージョンであり、ヤキマ・バレーの最東端に位置する。付近を流れるヤキマ川の影響で、穏やかな気候だ。砂漠気候に属し、降雨量が非常に少ない。
この地では、カベルネ・ソーヴィニヨンやメルローを使ったボルドースタイルのワインがつくられ、クイルセダ・クリークやアンドリュー・ウィルなど有名な作り手がいる。

<ホース・ヘヴン・ヒルズ>
ホース・ヘヴン・ヒルズはワシントン州南部にあり、コロンビア川沿いにぶどう畑が展開する。川面を渡る風の影響で、夏は暑すぎず冬は寒すぎない理想的な気温だ。
カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、シラー、シャルドネ、ソーヴィニヨン・ブランなどが栽培される。ボルドー品種を混醸した赤ワインが有名。シャトー・サン・ミッシェルが代表的な作り手だ。

<ワルーク・スロープ>
ワルーク・スロープはコロンビア・バレー内のAVA。砂漠気候に属し、暑く乾燥した地帯だ。コロンビア川沿いの日当たりの良い斜面に畑が広がる。
カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、シラーを使った赤ワインが多い。チャールズ・スミス・ワインズが非常に有名で、同社はいくつかのブランドを展開している。

<ラトルスネイク・ヒルズ>
ラトルスネイク・ヒルズはヤキマ・バレーにある生産地。カスケード山脈の東側に位置し、降雨量が少なく乾燥した地域だ。ぶどうは丘陵地で栽培され、高度の高いところもある。
主にカベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、シラーなどによる赤ワイン、リースリングによる白ワインが作られ、乾燥地帯特有の凝縮感がある味わいだ。

<コロンビア・バレー>
コロンビア・バレーはワシントン州とオレゴン州にまたがるAVAだ。ワシントン州の8つのAVAがサブリージョンとして含まれ、ワシントン州のほとんどのワインが、コロンビア・バレーで作られている。降雨量はほとんどなく、豊富な日照量に恵まれる。
リースリングやシャルドネ、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルローなどが主に栽培され、エレガントな味わいのワインが生産される。有名なワイナリーがいくつかあるが、クイルセダ・クリークはパーカーポイント100点を出すなど評価が高い。

<ワラ・ワラ・バレー>
ワラ・ワラ・バレーはワシントン州の南東に位置し、オレゴン州にもまたがる。コロンビア・バレーのサブリージョンだ。
日差しが十分で乾燥した気候のため、ボルドー品種であるカベルネ・ソーヴィニヨンやメルロー、またシラーなども栽培される。周りの生産地より若干涼しい場所のため、凝縮感のあるぶどうが育つ。シャルドネやゲヴェルツトラミネールも栽培される。

<コロンビア・ゴージュ>
コロンビア・ゴージュはコロンビア・バレー内のサブリージョンの一つ。全般的に温暖で乾燥した気候だが、地域の東側は乾燥しており、西側のほうは湿度が高い。周囲の地形が様々なミクロクリマをもたらす。