ペイ・ナンテは、ロワール河下流、河口近くに位置するナント市を中心にしたワインの生産地域だ。ここでは、主にムロン・ド・ブルゴーニュ種によってつくられる辛口の白ワインが有名だ。このぶどうが熟するとマスクメロンのような香りを放つことからこの名がついた。生産地の名前にはミュスカデが用いられる。

ラングドック=ルーション地方などで用いられるぶどう、ミュスカと産地名がよく似ており、混同しやすい。

主なAOCは4つに大別される。地域全体を指すミュスカデ、セーヴル川とメーヌ川によって区切られた三角州地帯のミュスカデ・ド・セーヴル・エ・メーヌ、東のメーヌ・エ・ロワール県境周辺のミュスカデ・デ・コート・ド・ラ・ロワール、そしてナント市南部のグラン=リュー湖にほど近いミュスカデ・デ・コート・ド・グランリューだ。

土壌は白亜紀の石灰岩を多く含み、「テュフォー」と呼ばれる。
この地独特の製法として、ワインの澱を取り除かず放置し、翌年の春にその上澄みだけを瓶詰めするシュール・リーが有名。収穫年を明記すること、定められた期間まで作業工程を行うことなどが義務付けられている。

【ペイ・ナンテ地区の主な生産地】

<ミュスカデ>
特定の産地名ではなく、ムロン・ド・ブルゴーニュ種からつくられる辛口白ワイン全般を指す。特に産地が指定されていないことからもわかるとおり、ミュスカデAOCに属する地域は広域に及ぶ。お手頃価格のワインが多く、世界各国で広く親しまれている。

<ミュスカデ・ド・セーヴル・エ・メーヌ>
ロワール川の支流、セーヴル川とメーヌ川によって区切られていることに由来するAOC。ペイ・ナンテに存在する4つのAOCでは最大の面積を誇る。辛口白ワインの45%はシュール・リー製法で醸造されている。

<ミュスカデ・デ・コート・ド・ラ・ロワール>
ロワール川の北岸、ナントのあるロワール・アトランティック県と、東のメーヌ・エ・ロワール県にまたがる24の村が対象範囲となる。概して硬質なアロマがあり、醸造年によって品質に大きなばらつきがある。

<ミュスカデ・デ・コート・ド・グランリュー>
1994年に認定された新しいAOC。ナント市南部が該当地域。市の南にあるグラン=リュー湖のミクロクリマ(局所的な気候)により、つくられるワインはフローラルな芳香とミネラル感を持つ。

なおこのほかにも、最新のAOCとして2011年に認定されたグロ・プラン・デュ・ペイ・ナンテ、コトー・ダンスニ、フィエフ・ヴァンデアンがある。これらは全てAOVDQSからの昇格となる。