バーデンはドイツ南部にあるワイン生産地だ。南方にあるため、ドイツの中でも温暖な地域となる。EUの気候区分では、ドイツの大部分が冷涼なAゾーンに属する中、唯一温暖なBゾーンに属し、隣接するフランス・アルザス地方と同一区分となる。

ほとんどのベライヒ(生産地区分)は、ライン川沿いに南北に伸びている。ライン川はフランスとの国境となっており、アルザス地方に隣接しているベライヒも多い。
有力な醸造所としては、ブライスガウにあるベルンハルト・フーバー醸造所が挙げられる。ワイン専門誌ゴー・ミヨにおいて5房を獲得しており、これはバーデン地方では唯一となる。

つくられるワインは、シュペートブルグンダーなどによる赤、リースリングによる白が一般的。ほとんどがトロッケン(辛口)だ。
また、バーデン地方特有のロゼワインとして、バーディッシュ・ロートゴールドと呼ばれるものがある。これはグラウブルグンダーとシュペートブルグンダーをブレンドしたものだ。

【バーデン地区の生産地区分】

<タウバーフランケン>
バーデンのベライヒの中でも最北に位置する。かつては北岸のフランケン領に属していたが、分割された。ミュラー・トゥルガウ種、シルバーナー種による白がメイン。ボックスボイテルという特徴的な形の瓶ワインがある。
ワイン村では、キルヒベルクなどの畑を有するべックシュタインが有力。辛口で力強いワインを産出する。

<バーディッシェ・ベルクシュトラーセ>
ネッカー川以北。北はヘシッシェ・ベルクシュトラーセ、川を挟んだ南岸はクライヒガウとなる。
シュペートブルグンダーなどによる赤ワインの産地として有名。ハイデルベルクやライメンにあるヘレンベルクが有力な畑。ゼーガー醸造所が所有する。酸味、果実味の強いはっきりとしたワインが多い。

<クライヒガウ>
バーディッシェ・ベルクシュトラーセから1996年に分割されてできた生産地。ネッカー川以南、ライン川東岸に位置する。
こちらも、バーディッシェ・ベルクシュトラーと同じくゼーガー醸造所が有力。シュペートブルグンダー種による辛口赤の産地。

<オルテナウ>
ライン川東岸のバーデンバーデンからオッフェンブルクまで。西岸はフランス・アルザス地方となる。
バーデンには珍しく、甘口ワインの産地。リースリングによる白、シュペートブルグンダーによる赤がメイン。有力畑はバーデンバーデンの南にあるアッフェンターラー。猿をモチーフにしたボトルデザインで知られる。

<ブライスガウ>
ラールの村からフライブルクまで。「黒い森」シュヴァルツヴァルトの近くとなる。
ベルンハルト・フーバー醸造所は、バーデン地域唯一のゴー・ミヨ5房。シュペートブルグンダーによるトロッケンのほか、混合ワインのバーディッシュ・ロートゴールドがつくられる。

<カイザーシュトゥール>
シュペートブルグンダーによる赤が有名。ベルヒャー醸造所はゴー・ミヨ4房。フォイアーベルクやシュロスガルテンなどの畑を有する。イーリンゲン村のドクター・ヘーガー醸造所も有力。

<トゥーニベルク>
カイザーシュトゥール近隣。同地区とひとまとめに扱われることもある。
シュペートブルグンダー種による赤の産地。ヴァイサーブルグンダー種による白も評価が高い。カルクベデレ醸造所、ベルヒャー醸造所が特に有力。

<マルクグレーフラーラント>
フライブルクより南のライン川西岸、スイス国境近く。
固有品種グートエーデルやシャルドネ種による辛口の白が大半を占める。グートエーデル種によるものは早熟で酸味が少ないワインとなる。ブリッツィンゲン協同組合醸造所が有力。

<ボーデンゼー>
このベライヒのみ川には面しておらず、ボーデン湖北岸となる。
シュペートブルグンダー種によるロゼワイン、ヴァイスヘルプストが有名。ロゼにしては色が薄い。ミュラー・トゥルガウ種による白もある。