フランケン地方は、ドイツ中南部にあるバイエルン州北部の一部が該当する。フランクフルトの東、「黒い森」シュヴァルツヴァルトの北に位置する。かつてフランク王国が存在したためこう呼ばれる。

ケッペンの気候区分では大陸性気候に分類され、寒暖差が激しい。ドイツは南部を除き概ね冷涼だが、北緯50度に位置するフランケンも例外ではない。このため、ぶどう栽培にとって霜害が脅威となる。

土壌は三畳紀に形成された彩色砂岩や貝殻石灰岩、コイパー統となる。こうした厳しい気象条件と独特の土壌が、フランケンのぶどうに凝縮した果実味とミネラルをもたらす。

ベライヒ(生産地区分)は地域を西へと流れるマイン川流域に沿って展開し、東西で3つに大別される。下流域、西部に位置するマインフィアエック(マインの四角)は、マイン川がカタカナの「コ」の字を北に向けたように流れ、四角に区切られることから名付けられた。

また中央のヴァルツブルグ周辺は、川がアルファベットの「V」を描くように流れているため、マインドライエック(マインの三角)と呼ばれる。上流・東部地域は東岸の内陸部、イプホーフェンやカステルの町を含むシュタイガーヴァルトとなる。

有力畑には、ヴュルツブルガー・シュタインが挙げられる。特にその一角であるハルフェの評価が高い。畑を所有するユリウスシュピタール醸造所は、ワイン専門誌「ゴー・ミヨ」において3房を獲得している。

つくられるワインは、ジルヴァーナーやミュラー・トゥルガウ、リースリングによる辛口(トロッケン)の白がほとんどだ。ドイツワインにしては強い味わいとなるため、男性的なワイン、あるいは石のワイン(シュタイン)と形容される。
ボックスボイテルと呼ばれる、丸い形の瓶が特徴的。かつてフランケンを名乗る粗悪なワインが横行し、差別化を図るために用いられた。
なお、ボックスボイテルは、タウバーフランケンなど、フランケンに近いバーデンの一部ベライヒでも使用される。

【フランケン地区の生産地区分】

<シュタイガーヴァルト>
フランケン東部のベライヒ。冷涼な気候により、ぶどうは凝縮された果実味とスパイスを持つ。
ミュラー・トゥルガウやジルヴァーナーによる白がメイン。その辛味と豊富なミネラルから、「石のワイン」とも称される。

<マインドライエック>
フランケン中央、マイン川沿いのヴュルツブルクを含む地域。フランケン地方の中で最もワインの評価が高く、有名畑や醸造所も集中している。
ミネラルが豊富でスパイスの効いた、辛口ながらも飲みやすいワインとなる。かつて、ドイツを代表する作家、ゲーテが愛飲したと伝えられる。

<マインフィアエック>
フランケン西側。厳しい気候と三畳紀由来の土壌は、ジルヴァーナーの栽培に向く。控えめなアロマと、果実味のアタック、独特のスパイスが印象的なワインとなる。