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アメリカワインの特徴とは ~おすすめワイン、ぶどう品種、当たり年ヴィンテージなど、基本の基礎知識~

   

アメリカワインの特徴とは

アメリカは近年の世界のワイン産業で重要な位置を占めている。ヨーロッパのワイン醸造と異なり、ブドウ栽培とワイン醸造の分業が成立していることが多いのが特徴で、この協力体制が栽培法や新技術の研究や導入を推し進めている。

アメリカワインの圧倒的な生産地はカリフォルニアで、国内生産の9割を占めている。北部カリフォルニアには高級赤ワインで名高いナパ・ヴァレーや、白ワインで有名なソノマがある。しかしこれら高級ワインはカリフォルニア・ワイン全体のごくわずかである。ロサンゼルスやサンディゴの南部太平洋沿岸地域では中級クラスのワインが、内陸部の広大なセントラル・ヴァレー地域では消費の主体となるテーブルワインが多く作られる。

近年ではカリフォルニア以外のオレゴン、ワシントン、ニューヨークの各州で生産されるワインが非常に注目を集めている。大手ワイナリーが多いカリフォルニアとは対照的に、小規模の生産者が健闘しているのが特徴だ。

この3州のワインは国際的な競争力を持つクラスの高品質なものが多く、今後も生産の拡大が見込まれる。その他の州でもアメリカ全土でワインはつくられているが、日常的に地元で消費されるクラスのものがほとんどである。

Napa Valley

ワインの生産量ランキングでは、アメリカはイタリアフランススペインの三強に次ぐ4位につけている。2015年の予想生産量は約2200万 hl(ヘクトリットル)であり、イタリアやフランスの概ね半分程度だ。

ワイン消費量では2014年データでアメリカは世界最大の消費国となり、年間3億3960万ケースが消費され、それまで首位の常連であったフランスを抜いた。1人当たりのワイン消費量については、まだまだヨーロッパ勢には大きく劣り、トップ10に入っていない。

アメリカはワインの輸入量も多く、ドイツ・イギリスに次いで3位につけている。日本の全輸入ワインにおけるアメリカのシェアは、第5位である。

カリフォルニアでは、南北の緯度の高低というよりも、太平洋からの冷気の流入の差によって気温差が生じている。 この冷気の濃淡や日照の過多が、州内のある場所ではボルドー品種、あるいはブルゴーニュ品種、あるいは北のドイツ品種から南のイタリア品種といった様々な品種の栽培を可能にし、非常に多種多様なワインを生み出している。

オレゴン州もカリフォルニア州と同様の気候条件を持つ。ワシントン州を含む太平洋岸の産地では、ぶどうの生育期間の雨が非常に少なく、灌漑設備が必要な場所が多い。大西洋岸のニューヨーク州では、五大湖の恩恵を得て夏場の気候は温暖となり、その気候を生かしてぶどうが栽培されている。

Katakolon Winery - EXPLORED

おすすめのアメリカワイン

アメリカワインで押さえておきたいおすすめワイン/ワインジャンルは次のとおりだ。

ノース・コースト
ナパ・ヴァレーやソノマ・カウンティを擁するカリフォルニアで最も重要なワイン産地。カベルネ・ソーヴィニヨンを中心とした赤ワイン、シャルドネを中心とした白ワインが生産される。
セントラル・ヴァレーなどと比べると中規模~小規模のワイナリーが多いが、最も高級なワインを生み出す銘醸地だ。

セントラル・コースト
ノース・コーストの南に位置する。沿岸部の冷涼な気候を生かし、シャルドネやピノ・ノワールが栽培されている。内陸部の乾燥した地帯ではボルドー系品種やローヌ系品種などさまざまなぶどうが栽培されている。

・ワシントン州
沿岸部シアトル周辺と、オレゴン州境からアイダホ州境スポーケーンまでの地帯に産地が集まる。リースリングとシャルドネ、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルローを多く栽培しており、小さなブティックワイナリーのつくった良質なワインで注目を集める。

・ニューヨーク州
現在ワイン生産量は国内3位。ニューヨーク州産のワインは、急速に市場に広まりつつある。
大西洋岸のロングアイランド、ハドソン川中流域を中心とした地域、州中心部の五大湖周辺に産地が分かれる。リースリングやシャルドネを使った白ワイン、カベルネ・フランやメルロー、プティ・ヴェルドを使った赤ワインが多い。

Seattle, 2008:  Day 1, Chateau St. Michelle Winery

注目のワイナリー

オーパス・ワン
あまりにも有名なナパ・ヴァレーを代表するワイナリー。一時期、カリフォルニア・ワインを代表する高級ワインとも言われたほどで、現在も価格は高騰している。セカンド・ワインであれば、特別な贈り物等として手の届かない値段ではない。

・シルバー・オーク
ナパのカベルネといえばシルバー・オークと言われるほどの評価を受ける。日本でも人気のあるつくり手だ。
熟成も可能だが、リリースしたてでも楽しめるということをコンセプトにつくられたワインだ。リリース直後でも、実に複雑な味わいの完成度が高い。

・スタッグス・リープ
ファースト・ヴィンテージでボルドーの5大シャトーを打ち負かし、1位に輝いたという伝説的事件で一躍有名になったつくり手。2007年からイタリアの名門アンティノリも経営に加わり、さらに磨きのかかったワインを生み出し続けている。

・シミ
130年を超える老舗でありながら、手頃な値段で味も良いと人気のワイナリー。ソノマ・カウンティの個性をバランス良く味わいに反映させる。手掛けるぶどうはカベルネ・ソーヴィニヨン、シャルドネ等。

・ザ・チャールズ・スミス・ワインズ
新進ワイナリーながら、ここ数年でワシントン州を代表するワイン生産者に上り詰めたチャールズ・スミス氏のワイナリー。専門誌で上々の評価を得ている彼のワインは、ポップなラベルからは想像のつかないエレガントな味わいだ。

・ヘッジズ・ファミリー・エステート
「ワイン・スペクテーター」誌により、世界の最も優れた25のワイナリーに選出されたヘッジズ・ファミリー・エステートは、2017年で創業30年を迎えた。ワシントン州のワインづくりを牽引してきたワイナリーだ。現在レッド・マウンテンAVA初となるビオディナミ栽培を導入し、新たな挑戦をしている。

California May 2014 - 110.jpg

主なぶどう品種

カリフォルニアの主要栽培品種は、アメリカやオーストラリア等新世界に共通する「国際品種」と呼ばれる品種である。ほとんどどのカリフォルニア・ワインはこの「国際品種」で造られている。カリフォルニアで広く栽培され、長い間カリフォルニア原産と考えられていた品種にジンファンデルがあるが、90年代にイタリアの黒ぶどうであるプリミティーヴォと同種であることが判明した。

アメリカ全土の栽培データがないため、アメリカ産ワインの9割を占めるカリフォルニア州のデータである。

・シャルドネ(白ワイン用/約4万ha)
・カベルネ・ソーヴィニヨン(赤ワイン用/約3.5万ha)
・ジンファンデル(赤ワイン用/約2万ha)
・メルロー(赤ワイン用/約2万ha)
・ピノ・ノワール(赤ワイン用/約2万ha)
・フレンチ・コロンバード(白ワイン用/約1万ha)

Young chardonnay

当たり年/ヴィンテージ

ロバート・パーカーのヴィンテージ・チャート によると、96点以上(まれに見る出来栄え)を獲得した当たり年のヴィンテージは次のとおり。
カリフォルニア・ノースコースト > シャルドネ 2015年
カリフォルニア・ノースコースト > カベルネ・ソーヴィニヨン 2001年、2007年、2012年、2013年、2015年

(総評)
90年代後半より2015年までのヴィンテージ・チャートによると、カリフォルニアのジンファンデルは70点台から80点台半ばという酷評を受けている年が多い。

対照的にカベルネ・ソーヴィニヨン、ピノ・ノワール、シャルドネの3種については、概ね80点台後半から90点台と、安定した評価を得ている。

パーカーは個々の優れたジンファンデルには高い評価を与えているため、ジンファンデルの出来全般というよりつくり手の腕次第というところだろう。

Cuvaison Napa Valley

格付け

アメリカでは政府承認ブドウ栽培地域(AVA)で原産地を保護と保障している。これは品種や醸造法ではなく産地のみを規制するもので、これによりカリフォルニア、オレゴン、ワシントン、ニューヨークの各州のワイン産地が指定されている。また、同一のAVAが複数の州や地域にまたがっている場合も多くある。

ワイナリーとぶどう畑が同一栽培エリアに位置しており、そのワイナリーで醸造・瓶詰めされた場合「エステイト・ボトルド」の表示が可能。単一品種を75%以上使用し品種名と産地をラベルに表示したものが「ヴァラエタル」、日常消費用で品種制限のないブレンドワイン「ジェネリック」などと呼ばれる。

その他、州それぞれにルールを設けており、カリフォルニア州産を名乗るためには州産ぶどうを100%使用せねばならず、オレゴン州については州産ぶどう使用が95%以上と定められている。

6 years of Merlot

ワインの歴史

アメリカワインの歴史はヨーロッパの入植とともにあると言える。17世紀にヨーロッパブドウ(ヴィニフェラ種)を導入する試みが繰り返された。カリフォルニアでは18世紀にスペイン人宣教師によって最初のブドウ畑とワイン醸造所が造られた。19世紀の後半にソノマでフィロキセラが発見され、その後多くの畑が壊滅状態となったが、ラブルスカ系ぶどうを台木とし接木苗を作る方法が開発された。

19世紀の中ごろより、酒場での風紀の乱れを問題視するような流れが始まり、大きな流れとなった。1920~1933年まで国家禁酒法が施行、これにより酒類製造および販売等が禁止され、ワイン産業も大きく衰退した。しかし、各家庭で年間約750Lまで自家用のワインを製造することが許可され、ぶどうの運搬や販売を手掛ける事業が活発となった。

禁酒法が廃止され、ふたたびワインづくりが始まったカリフォルニア州では、初めて大学にワインの専門学科が設けられるなど、熱の入ったワイン研究が進み、現在の技術の基礎を築き上げるに至った。

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