アルゼンチンは2012年時点でワイン用ぶどう作付面積が22.1万ha(世界第9位)、ワイン生産量は2013年には約1500万hlだ。これはヨーロッパ三大国、アメリカに次いで世界第5位だった。しかし、2016年には35%という大幅な減産となった。エルニーニョ現象などが影響したと考えられる。
アルゼンチンのワイン産地で最も有名なのはメンドーサ州。同州では国全体の全生産量の3分の2を算出し、独特の強い香りを持つ力強い赤ワインが多く造られる。ヨーロッパでブレンドに用いられるマルベックという品種が主に使われ、アルゼンチンのものが最も味が良いとされている。
主なぶどう品種は、赤ワイン用としてマルベック、カベルネ・ソーヴィニヨンなど、白ワイン用としてはシャルドネ、シュナン・ブラン、トロンテス・リオハーノなどが挙げられる。一般に、赤は美しいルビー色で果実味が豊かで力強いのが特徴。白ワインは凝縮感のある調和のとれたものが多い。
北から南へ約3200kmにわたって広がるアルゼンチンにおいて、ブドウ栽培地域はアンデス山脈東麓の南北に広がり、北西部、中央西部、南部に分けられる。このうち全栽培面積の91%を占めるのがメンドーサ州を有する中央西部である。力強く品質の高い赤ワインが造られているが、かつては国内消費率が高く、あまり海外に知られていなかった。近年では世界的なニーズの高い高品質なワイン造りにも取り組んでおり、メンドーサ州にはトラピチェやジャン・ブスケなど有名なワイナリーが集中している。
これらの土地は海抜800~1200mという高い土地にあり、ぶどう栽培に適した土壌を有し、気候は大陸性気候の影響を受けて温暖である。夏季に最高気温が40度にも達し、昼夜の気温差があることにより良質なブドウが生み出されている。アンデスから吹き下ろす風の影響で年間を通じて乾燥しており、ブドウの病害の発生が少ないのはこの乾燥した気候のためとも言われる。
その一方でぶどうの栽培には降雨量の少なすぎる土地ではあるが、アンデスの雪から生まれる美しく豊富な水に恵まれ、ブドウ畑に施された世界有数の灌漑設備を支えている。
おすすめのアルゼンチンワイン
アルゼンチンワインで押さえておきたいおすすめワイン/ワインジャンルは次のとおりだ。
・メンドーサ
力強い風合いの赤ワインで大変有名な土地。使われるぶどうはマルベックやカベルネ・ソーヴィニヨンがメインだ。メンドーサの中に、ルハン・デ・クージョ、サン・ラファエルという2つのDO(原産地呼称:Denominacion de Origen)があり、さらに2カ所(マイプ、ヴァレ・ド・トゥプンガト)がDO申請中だ。
・サン・ファン
メンドーサと同様に乾燥した土地で、灌漑設備が広く敷かれている。もともとバルクワイン用のセレーサ種やクリオージャ種が多く栽培されていたが、現在ではヨーロッパ品種を使用した高品質なワインが多くつくられている。
・ラ・リオハ
トロンテスを使った良質の白ワインを多く生み出すワイン産地。国内外の評判が上がっている。ラ・リオハにはバジェス・デ・ファマティナというDOがある。
注目のワイナリー
・ボデガ・ノートン
創業120年。現在はクリスタルで有名なスワロフスキーが所有する。メンドーサに最新設備を駆使したワイナリーを構え、ハイ・クオリティでありながら日常に寄り添う親しみあるワインを数多く生産している。アルゼンチンワインの中で、日本への輸出量はナンバー・ワンだ。
・トラピチェ
まだアルゼンチンのワインがあまり世界に知られていなかったころから、圧倒的なクオリティとコスト・パフォーマンスにて市場をあっと言わせてきた名ワイナリー。いち早く欧州の最新設備を導入し、まさにアルゼンチンのワインづくりをリードしてきた。
・ボデガ・チャクラ
イタリアのサッシカイアを所有するファミリーが、ワインに愛された土地・アルゼンチンでつくる究極のワイン。彼らが選んだ土地はチリとアルゼンチンにまたがるパタゴニア山脈。無農薬でも病気を寄せ付けないこの土地で、限りなくナチュラルなワインをつくり上げる。
・クロス・デ・ロス・シエテ
著名ワインコンサルタントであるミシェル・ロランがアルゼンチンワインの可能性を信じて設立したワイナリー。マルベックを中心に栽培したぶどうはすべて手摘みで収穫し、ロラン自身が醸造を手掛ける。
・パスカル・トソ エステート
19世紀末、イタリア・ピエモンテ州出身のパスカル・トソがアルゼンチンに移住し設立したワイナリー。現在マイプ地区に醸造所を構え、クオリティの高い赤・白、そしてスパークリングを醸造している。
・アルトス・ラス・オルミガス
メンドーサのマルベックが持つ高いポテンシャルに感銘を受け、トスカーナの醸造家が設立したワイナリー。日常価格のものからプレミアムクラスまで醸造しており、「ワイン・アドヴォケイト」や「ワイン・スペクテイター」といった専門誌から高い評価を受けている。
主なぶどう品種
・マルベック(赤ワイン用/約3.4万ha)
・ボナルダ(赤ワイン用/1.8万ha)
・カベルネ・ソーヴィニヨン(赤ワイン用/1.6万ha)
・シラー(赤ワイン用/1.3万ha)
・ペドロ・ジメネス(白ワイン用/1.2万ha)*ペドロ・ヒメネスとは別種。テーブルワイン用
・トロンテス・リオハーノ(白ワイン用/7800ha)
・シャルドネ(白ワイン用/6500ha)
当たり年/ヴィンテージ
ロバート・パーカーのヴィンテージチャート によると、96点以上(まれに見る出来栄え)を獲得した当たり年のヴィンテージは特にはないが、評価の公表されている2004年から2014年まで全ての年において90点台前半という評価。概ねワインのクオリティが安定しているといえる。
格付け
アルゼンチンワインは、原産地呼称制度(DO)により管理・規定されているが、ヨーロッパのワイン法に比べると緩やかである。現在認定されているのは3地区のみだが、他に申請中の地区もある。
認定地区は、メンドーサ州ルハン・デ・クージョ地区、メンドーサ州サン・ラファエル地区、ラ・リオハ州パジェンス・デ・ファマティナ地区である。
ワインの歴史
16世紀の半ばごろ、スペイン人宣教師によりペルーにワイン用ぶどうが持ち込まれた。ここからチリを経由し、アルゼンチンにぶどう栽培とワインづくりが伝えられた。
1570年ごろにはすでに、メンドーサとサン・ファンでぶどう栽培が始まっていたという。
19世紀にはイタリアやフランスなどヨーロッパからの移民により有名なぶどう品種や栽培技術、醸造技術が伝えられ、アルゼンチンのワイン産業は大きく発展。1853年には国家の立憲体制が成立するとともに、国内初となる農学校が設立された。1900年にはメンドーサに最初の醸造学校が誕生し、今日までアルゼンチン国内のワイン醸造においてリーダーシップ的な存在となっている。
1990年代に入ると、多くの外国資本が流入したことから近代的な醸造設備が導入され、現在では本格的な高級ワインの生産も取り組まれている。