ボルドー地方のワイン産地で、ドルドーニュ川の右岸に広がるリブルネ地域に位置する村名AOC。1937年に赤ワインでAOC認定を受けた。
フロンサックは、18世紀初頭から19世紀にかけてリブルネ地域の中で最も評判の高いワインで、その当時はサン・テミリオンのワインよりも高値がつけられるほどであった。しかし、19世紀末にヨーロッパ全土を襲った害虫フィロキセラの被害によってフロンサックのブドウの木は全滅してしまった。その後長きにわたってAOCサン・テミリオンやAOCポムロールの発展の陰になっていたが、1970年代から復興が始まり、1990年代にようやく復活を果たした。
ボルドーで最も高価なワインを産するシャトー・ペトリュスを有するAOCポムロールの西側に位置し、AOC名の由来となっているフロンサック村を含む7つの村で構成されている。ポムロールから15キロほど離れたところにあるフロンサック地区は、ドルドーニュ川とイール川の合流点の小さな谷が続く丘陵地にはブドウ畑が広がっている。起伏に富んだ複雑な地形で、リブルネ地域の他の地区に比べると比較的勾配のある丘や傾斜地にブドウ畑がある。土壌は石灰質と軟質砂岩で、ブドウ耕作面積は830ヘクタール程。
使用品種は主にメルロー種で、一般的に「右岸地区」と呼ばれるボルドー地方ドルドーニュ川右岸のワイン産地の名かでも最もメルロー種の比率が高い。メルロー種80%で造られるワインは近年では濃密で柔らかな味わいのものとなっている。AOCポムロールのワインに似ているが、比較するとやや軽いものが多い。フロンサックのワインの色調はルビー色、香りは赤い果実香を中心とし繊細さと快活さを併せ持ち、時折スパイスやトリュフが香る。豊かさと優雅さを兼ね備えた力強い味わいでタンニンは強めで、長期熟成に向く。品質の高いものが多い割に価格は比較的低く、コストパフォーマンスの高いワインである。